セッション4 -第1回ミーティング-
( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!
11月上旬、無事スノーボードクラブの正式発足が認められ、専用の部室もあてがわれた。気が付けばスノーボードクラブという名称は、皆からスノ部と略されていた。
スノ部の部室は旧校舎3階の、かつて教室だった部屋に設置された。木崎高校は普段の学校生活を送る築5年の新校舎である本校舎と、かつての本校舎が、現在クラブ活動や同好会の部室として主に使用されている築30年の旧校舎、部室棟が存在する。
本校舎は様々な設備が整い、機能的にも視覚的にも快適で過ごしやすいデザインになっている。それに比べたら旧校舎は、やや貧弱な設備と無機質な鉄筋コンクリートの固まりに写る校舎内だが、たびたびリフォームしている事もあり、決して汚いとかボロいとかいう印象は無い。
部室は黒板が掛けている西側にはミーティング用のテーブルを設置。ノートパソコン1台を置いている。教室東側はやけに広くスペースを取っている。これはボードのワックスをかけるためのスペースだ。そのため、部室の後ろは、雅や智香が持ち込んだワックスやボードのケア用品などがぎっしりとロッカーに入れてある。
今日は設立後初のミーティングだ。6人がテーブルの席に付く。雅はスノ部の部長に就任。窓側の議長席。またの名をお誕生日席に堂々と居座っている。俺は雅から見て右隣の席に座っている。手元にはノートパソコン。俺の向かい、雅から見て左側は、黒板に背を向ける形で智香が。智香の隣、俺の右斜前には歩夢が。俺の右隣、歩夢の正面には由香がいる。そして由香の斜右、歩夢から見て左隣に、我らが顧問立山先生だ。
雅がミーティングの号令を掛けた。
「それじゃぁ記念すべきスノーボードクラブ、略してスノ部のミーティングをはっじめまーす!!イエーーーイ!!」
いつになくハイテンションな雅だが、メンバーは誰も返事しない。静まり返った空気。外でカラスがあざ笑うかのように鳴いていた。
「お願いだから誰かリアクションしてよ〜!」
いやね、リアクションに困るんだって。そんな変なテンションで始められると。
「いえ〜い。」
見かねたのか、立山先生が微妙に気合いの入っていないゆったりしたトーンで応じてくれた。
「先生感謝するよ〜、こんなのり悪い人達に変わって盛り上げてクレテ〜。」
雅は芝居がかった口調と嘘くさい涙目で大げさな感謝を述べる。
「あ、1年の皆は初めてかな?紹介するね、私と、ともちゃんの担任でもあり、スノ部の顧問になってくれた立山幸先生だよ。私はさっちゃんて呼んでるんだ。んじゃ、さっちゃん、ちょっと自己紹介してくれるかな〜?」
「は〜い、今雅ちゃんから〜、紹介に預かりました〜、さっちゃんこと、立山幸で〜す。んとね〜、一応私は〜、先生と言う立場の問題もあってね〜、授業とか〜、集会のときは〜、先生て言って、出来るだけ敬語でしゃべって欲しいんだけどね〜、そうして貰わないと〜、教頭先生がうるさくて〜。あ、でもこの部で活動する時は、雅ちゃんの掟?かな〜、というのもあるし〜、先生としても別に構わないから〜、言葉遣いも特に気にしないし〜、気軽にさっちゃんて呼んでね〜。」
立山幸先生。160cm弱の背丈におっとりと、ふんわりした雰囲気が漂う。ウェーブのかかったショートボブの黒髪。優しく澄んだやや大きめの丸い茶色の瞳、若々しさと大人っぽさの両方を併せ持ったかのような顔立ちだ。
ゆるふわで口調で、少したるくなるような自己紹介だが、接しやすさは伝わって来る。こんな雰囲気と性格の先生だから、気軽にガンガン人と話すのが好きな雅とも結構相性が良いのかもしれない。ところで、俺は先生の呼び方はどうしようか。先生に対して、さっちゃんというのもなんか変な感じだ。まぁ先生で良いか。失礼が無くかつ、呼びやすい言い方だから。
「先生?!先生は、確かインストラクターの資格があると聞きましたが?」
「え?さっちゃんじゃ無いの〜?それにタメ語でも良いのよ〜?」
え?さっちゃんて呼ばなきゃいけないの?
下手な上下関係で、下の人から気を使われてしまう事を、好まない人がいると言う事は、雅や智香の言動から既に証明されているが、先生もかよ?だけど、仮にも先生だ。雅や智香と訳が違う。
「先生、すいません。俺の喋りやすいようにさせて下さい。」
俺は内心焦りながら、取りあえず落ち着こうと言い聞かせて、提言した。
「あれれ、ユーキ〜?掟を破るの?どうなるか分かってるよね〜?」
雅が茶々入れて来た。
「知らねぇよ?!掟破ったら、何かあるて今ここで初めて聞いたぞ!」
俺は雅にまるで恫喝のような突っ込みを入れてしまった。1ヶ月前に学校で初めて会ってから、今日に至るまで、雅からのしつこいくらいのコミュニケーションを色々と取っているうちに、彼女の性格のひとつであるいじり属性にすっかり慣れてしまったのか、端から見れば先輩に対してとは思えない態度を露骨に表すようになってしまっていた。
掟破ると、何されるか分からないし、本当は何も無いのかもしれないが、話題が横道に逸れるのも嫌なので、改めて先生に質問する。
「先生は、インストラクター兼顧問として、この部のカリキュラムとか指導方針など、どのようにお考えですか?」
「だから、さっちゃんじゃ無いの〜?」
「ユーキ〜?掟破るの〜?」
「もうええわ!!おめーはちっと黙ってろ!雅!!」
無限ループしそうなので思わず関西で活動している芸人のような激しい突っ込みで終わらてしまおうとした。
「へぇ〜?ユーキ、良いのかな、そんな態度で。最近生意気になってな〜い?」
あれ、雅の目がなんか恐いぞ?まるでヤンデレヒロインのような光を失ったかのようなレ◯プ目で、俺の目を睨み付ける。前屈みになりながら顔をぐっと接近させている。口元はどこかの悪役にいそうなニタリと唇の両端が上がっている。
「私、タメ語で話そうて掟作ったけど、罵倒までして良いて言ったかな〜?」
前屈みになっていた雅は体を起こし、今度は1歩2歩と全身を俺に接近させた。俺の目の前にはブレザー越しでも分かるくらいの大きく膨らんだ胸が徐々に接近して来ている。同時に俺の頭を包み込むように、じわりと雅の両手が俺の側頭部に近づいて来る。
ナニかされる。そう思った瞬間、体が無意識に拒否反応を示し、自分の両手が勢い良く雅の体に向かって突き出てしまった。
「あっん!」
雅から妙に喘いだような高い声が一瞬聞こえた。
気が付いたら俺の両掌は、雅の豊かな胸部を包み込むようにして、雅を押して返した。だがそれは押し返したというより…、もっと分かりやすく言おう。おっぱいをもろ鷲掴みにしていた。
ブレザーのそこそこ厚みのある生地と中のシャツ。更にその下には、ヒートテックと思われるインナーシャツと下着等、様々な衣類の感触を通して、雅の胸その物の、大きく柔らかな感触が掌からダイレクトに伝わってくる。
周りの視線が痛い。多分みんな呆れているか嫌悪しているだろうか。だが、今の俺はそれを気にしている余裕は無かった。やっちまった。公然の場でのセクハラ行為。いや、これは事故だ、わざとじゃない。だげど、次の展開はいくつか想像がつく。
その1、雅が大きな悲鳴を上げて後ろにのけぞり、胸を押さえて「何するの変態!」と俺を罵倒する。
その2、雅が大きな悲鳴を上げて俺をはり倒す、あるいはビンタして「何するの変態!」と罵倒する。
その3、雅が大きな悲鳴を上げて、泣きはじめ、智香あたりが「何してるの変態!」と俺を蔑む。
「今のはごめん、わざとじゃない、すまなかった。」
どうなるか分からないが、だいたいの予想をしつつもひとまず謝罪する。俺は両手をスッと引っ込める。
「ん?別に良いよ?」
あれ、許してくれた?いや内心は結構怒っているかもしれない。
「いや、でも本当悪かった…。」
「まぁまぁ、もともと私が仕掛けた事だし〜気にしないでよ〜♥」
雅の優しく甘い声が俺の耳と心にじわりと流れ込んで来る。雅はそこまで短絡的に怒ったり、悲鳴上げたりするような人ではないらしい。ありがとう、雅。貴女の懐の深さに感謝します。おっぱいの大きさからも懐の深さを感じました。
だけど、甘く優しい言い方だけど、何か含みのある意味深な雰囲気がした。そう思った瞬間、再び雅の両腕が俺の側頭部を通り過ぎ、目の前にあるおっぱいが急接近して来た。
「そんなに私のおっぱいが好きなら、もっと味合わせてあげるよ〜♥」
雅の邪悪に満ちた甘い声が脳裏に焼き付く。
あまりの素早さと、うっかり胸を触るという過ちを犯さないようにするためだったのか、全く反応出来なかった。急接近した雅の胸は俺の顔面いっぱいを、おっぱいの海に沈める。と同時に側頭部から後頭部にかけては雅の両腕にがっちりと押さえられていた。
こ、これは!いつかインターネットで見た事ある、「男子が女子にされたいプロレス技ランキング第1位」ヘッドロックだ!
本来は頸部に激痛を与える技だ。がしかし、雅がかけてる技は少し違う。両腕で抱きしめるように、側頭部をロック。顔面からこめかみにかけて、おっぱいが俺の顔を挟み込むように押し付けて来る。胸の谷間に沈んだ俺の鼻孔と口は完全に塞がれた。息が出来ない、助けて〜!
「友基良いな〜。可愛い女の子にそんな技かけられちゃって〜。」
歩夢がなんか、茶化しているけど、そんな良いもんじゃないぞ、お願いだから助けて!
「もう〜♡あゆむんたら、可愛いて本当の事言っちゃって〜。」
おだてられた雅は、ロックしたその腕のホールドを更に強くする。俺はたまらず、雅の腕を掴み引きはがそうとするが、びくともしない。力が出ないというのもあるが、雅の力は予想以上に強かった。
「あ、あの…雅ちゃん、そんな事して大丈夫なの?友基君なんだか苦しそうだけど?」
由香が心配している。お願い由香、本当に苦しいんだ。たのむから止めさせてくれ。
「あ〜、ゆかち大丈夫だよ。男の子はむしろこういう事されるのが好きなんだから、ね〜ユーキ〜♥」
ゆかちと言うのは、雅が由香につけたあだ名だ。由香ちゃんという呼び方からから、いつの間にかそうなっていた。いや、今はそんな事どうでも良い。
雅が男の子はこういう事されるのが好き、と言っていたが、確かに雅の胸は大きいし、柔らかいし、暖かいし、なんだか良い臭いがする。おまけに顔も声だって可愛い。そんな人物にこんな技を食らうわけだから、「男子が女子にされたいプロレス技ランキング第1位」になる理由も頷ける。快楽と苦痛が同時進行で脳内に凄い勢いで伝達され、ショートそうな感覚だ。
だけど、俺はおっぱいに顔を埋める事を良しとしても、おっぱいに殺されて死ぬのはまっぴらご免だ。こんな死に方は嫌だ!とにかく、なんとか引きはがさないと。
「あ、そう言えばユーキ、なんかさっちゃんに質問してたよね?さっちゃ〜ん。えっと、なんだっけ?」
雅は俺が苦しむのをよそに、代理で質問しようとしていた。
「あ、そうだ。さっちゃんは顧問としてどんな事するの?」
「あ、そうそう、それだったね〜。」
先生は今、この場で起きている殺戮を完全無視して、話の続きを始めた。俺の事助けてくれないの〜?
「えっと〜。基本は皆に任せようと思って〜。先生は顧問だし〜、インストラクターだから〜、勿論みんなが教わりたいって言えば〜、ちゃんと教えるけどね〜。でもせっかく雅ちゃん達が作った部活だから〜、先生が下手に口を出すよりも〜、みんなのやりたい事に〜、先生が協力するて形にしようと思うの〜。」
耳から先生の言葉は頭に入るが、口と鼻から息は入らない。
「あ、でも〜ゲレンデのルールとか〜、マナーとかは、ちゃんと指導させてね〜。特に由香ちゃんは〜、ボード未経験でしょ?」
先生の話はまだ続く。俺が食らっているおっぱい地獄もまだ続く。
「は、はい〜。スノボーした事ありません…。」
由香は俺の事を気にかけてくれているのだろうか、少し落ち着かない様子で先生に返事をしている。
「うん、じゃぁその辺は〜、ちゃんと教えるから〜、由香ちゃんもしっかり聞いてね〜。」
「わ、分かりました。」
「ユーキ、だって〜。ユーキの質問これで良い?」
これで、良いから離してくれ。意識が限界に近い。持って逝かれる…。
俺は全身の力が完全に抜けて、抵抗する気力を完全に失ってしまった。
「あ、結構苦しかった〜?」
雅はホールドを少し緩めた。なんとか息が出来るだけの、隙間が確保出来た。
俺の口と鼻孔は解放され、荒い息を雅の胸の中で吐き出す。雅のおっぱいはその熱で充満した。
「あぁん!そんなに息吹きかけないでよ〜。」
雅が思わず後ろに下がってロックも解けた。ようやくすべてが解放された。俺は妙な汗を大量に流しながら、荒い息でぜーはーぜーはと深呼吸している。
「あの〜、友基君大丈夫?凄く苦しそうだったけど。」
由香は心配そうにこちらを見つめている。
「死ぬかと思った。」
荒い息のなかで何とか言葉を絞り出す。
「友基良かったね。雅ちゃんの胸の中、天国だった?」
歩夢はまた茶化しに来た。
「いや、良く無いよ!あれは地獄だ。歩夢も味わってみろ。女性のおっぱいの見方変わるぞ。」
「僕は遠慮しとくよ〜。フフフ。」
歩夢は笑いながら断った。
「いや〜、ユーキごめんごめん。ちょっとやり過ぎちゃったね。でも…」
そう言って、雅は自分の唇を俺の耳元に近づけて囁いた。
「また生意気な態度ったら、何度でも同じ事するからね♥」
軽くトラウマが焼き付いた。俺がこの世で最も恐れる物のひとつ。それは雅のおっぱいだ。
「ふふふ〜。友基君と雅ちゃん〜、仲良いのね〜。先生〜面白くてずっと見てちゃった〜。」
俺がおっぱい地獄を味わっている最中、スルー決め込んでいた先生だったが、歩夢と同じく楽しんで眺めていたのかよ。質悪いよ先生。
「全く、呆れながら見ていてたけど、友基、うっかり胸触ってしまったの雅で良かったね。私だったら、思わず右ストレート飛ばして病院送りにしてたよ。」
終止何も言葉を発しなかった智香だが、最後に軽く恐い事言って来た。まぁ普通なら智香の反応の方が正常なんだろうな。右ストレート食らいたく無いけど。
ただ、雅がヘッドロック食らわせたのは、俺が雅の胸を触ったからではなく、「黙ってろ」と罵倒を上げたからだ。だからこそ、最初俺に腕を伸ばし、それに俺が危険を感じて、うっかり胸を触ってしまっただけの事だ。雅はそのとき既にヘッドロックを食らわすつもりはあったのは間違いない。ところが、想定外の俺の乳揉みイベントが発生してしまったので、それと合わせて仕返ししたのだろう。
しかし、雅がここまで大胆な性格だとは思わなかった。雅はこれまでの会話で、確かに性に関する話題、例えば男って胸とお尻どっちが好きな人多いの?とか、胸の大きさはどのくらいが好きなの?みたいな変な話を吹っかけて来た事は実はたびたびあった。が、まさか自らのおっぱいで、こんなとんでもない攻撃を仕掛けて来るとは思わなかったぜ。
話題が横道にそれてしまったが、ひとまずシーズンインまでの活動内容を話し合う事にした。
まずここ、木崎高校がある白馬近圏のスキー場オープンは、早い所で、11月の下旬あたりにオープンする。山の麓はまだまだ不十分な積雪っではあるが、山頂は大雪になっている事が多いのだ。白馬五竜、八方尾根、栂池高原、この3つのスキー場がゴンドラで山頂までアクセスし、そのエリアに設置してあるリフトを稼働させ、一部オープンさせている。ちなみに大町市内最大のスキー場である鹿島槍は例年12月の第二土曜日あたりがシーズンインだ。今シーズンにもその日がオープン予定と公式HPにアナウンスされていた。
「えっと、取りあえずどのスキー場をホームにする?シーズン券買っておきたいし。」
雅が最初の議題を持ち出した。
「シーズン券?」
由香が訪ねて、智香が答えた。
「そのシーズン、つまり今年のオープンから、来年のクローズの春まで滑りたい放題できるリフト券よ。リフト券、1日券だけでも相当お金かかるしね。」
「あ、なるほど〜。たくさん行くとなると、大変だもんね。」
「私はさのさかでよく滑るんだけど、みんなはどうかしら?」
智香はホームゲレンデの候補に白馬さのさかスキー場を提案して来た。青木湖を望む総面積40haの小中規模のスキー場だ。各コース、それぞれどのような目的で作られたかが、明確なコース設計になっていて、競技関係者やプロライダーが練習の場所としてもよく使用されている。
「確か〜、智香ちゃん、テクニカルの練習で〜、よくカービングゲレンデを滑るのよね?先生もカービングボードで練習する時、よく行ってるの。それで偶然出会ったのよね〜。」
なるほど、それで智香と先生がお互いスノーボーダーだと言う事を知っていた訳か。ちなみにカービングゲレンデは、さのさかのコースのひとつだ。最大斜度23度 平均斜度13度 距離700mの中級者向けのコースだ。
「うむ〜、僕は鹿島槍が良いな。近いし、そこそこ大きいし。結構良いスキー場だと思うよ。」
歩夢は鹿島槍スキー場を提案した。俺と歩夢が中学生の時一番よく一緒に行ったスキー場だ。それに雅との出会いもそこだ。コース面積 78ha、標高差720M、コース数は15本、各コースの組み合わせ方によっては22通りのコース設定が出来る。ゴンドラがある白馬のスキー場ほど、大きく無いにしても、スノーボードなら様々なスタイルの人でも楽しめるくらい、コースバリエーションは豊富だ。
「俺も鹿島槍が良いな。」
「まぁ、私も鹿島槍が良いかなって思っていたんだ〜。あそこ、マジでいろんな事出来て面白いし。」
雅が更に賛同する。今の意見だと、さのさか1の鹿島槍3だ。
「ゆかちはどう?」
「私は、その、どこが良いかなんて分からないし、あ、でも…、なだらかで広いコースがある所が良いな…。」
ボード未経験の由香の立場から見れば、そういうコースがあるのは重要だ。初心者が練習するためには、初級者コースといえども、林間コースのような細いコースでは危険だし、他のボーダーの邪魔になってしまう。
「ゆかちの意見からすると、ヤナバか爺ガ岳が良いのかな。」
雅が疑問を投げかけた。確かに、鹿島槍も初心者が練習出来るコースはあるにはあるが、大半は中上級向けのコースで、正直言うと初心者向けコースは、そこまで広くは無い。反面初心者の客も沢山押し寄せたりもするので、コースが密集状態になり、あまりおすすめは出来ない。一方同じ大町市内にあるヤナバスノーパークと爺ガ岳スキー場は広々とした初心者向けコースを有しており、地元のファミリーに人気がある。但し、中上級向けのコースがほぼ無いに等しい。
「ヤナバや爺ガ岳だと、私と雅は満足できないんじゃない?」
智香の言う通りだ。そして俺も同じくである。
「栂池なら、コースも広大だし、私も自分の求める滑りが出来るのだけれど。」
智香は新たに栂池高原を提案した。栂池高原スキー場、コース面積 194ha、、標高差880m、コース数は11本。11本のコースと言っても、1コース1コースの幅がとてつもなく広く、広大な緩斜面が広がっている。これだけの標高差もあるのだから、当然急斜面だってそれなりにはある。かなり滑りやすいスキー場だ。
「でも、栂池て良い所だけど、遠いんだよね〜。たまに行くなら良いけど、ホームゲレンデにするとなるとちょっと〜。」
雅は難色を示した。確かに鹿島槍は車で最速10分の立地だが、栂池は小谷村と言う事もあり、30分以上はかかってしまう。関東や関西から来る客なら、どのみち数時間かかる道のりだから、その程度誤差の範囲だろうが、地元民にとっての感覚は大分違う。
「あ、あの〜。私の事は気にしなくて良いから。頑張ってみんなに追いつけるようにするから、鹿島槍でも良いよ。」
由香は申し訳無さそうに言った。
「取りあえずインターネットで良さそうなシーズン券を探してみるよ。」
俺は手元のパソコンを開いて、シーズン券を検索してみた。
部費の予算の事もあるからそれも考慮に入れたい。本当は複数のスキー場が滑れるシーズン券があれば良いのだが、それは値段が高く、あまり強気になれない。かと言って1カ所だけでは、大会を目指す事も考えれば、その会場のリフト券も組み込まなければならない。そう思いながらネット検索をしてみる。
「あ〜、思い出した〜!」
突然先生が声を上げた。
「あの〜、先生ね〜、県の教育委員会の知り合いの人からね〜、複数のスキー場で使える〜、シーズン券を〜、貰えるかもしれない〜。」
え、これマジ?
「本当ですか、先生!?いったいどんな…」
「やっぱり〜神楽君〜、私に対しては〜…」
「ユーキ〜、掟…♥」
あぁもう分かったよ、言い直すよ、だからアレはやめてくれ!
「…さっちゃん…、それって本当…なの?」
先生に対してタメ語をは言い辛い。なんでこの部は、そこまでして、敬語禁止なんだ?!
「本当よ〜。何でも〜、高校生向けのウインタースポーツ振興目的とした〜、予算が〜、県議会で可決されたみたいで〜、それで〜、頼めば〜、複数のスキー場で使える〜、シーズン券が〜、貰えるらしいの。タダでね〜。」
確かに共通リフト券なるシーズン券は市販でも販売されている。高額ではあるが。それがタダで貰えるというのか?
県議会で可決した内容は、どうやらウインタースポーツを行う学校の部活動に対し、県の補助が受けられるシステムらしい。これは生徒会で決められた予算とは別枠で補助されるそうだ。その補助とは、県がスキー場や、そのリフト券を販売している会社から、それを購入し、学校の部へ支給するものだ。昨今ウインタースポーツの人口減少に伴い、県は若い学生達がもっと積極的にウインタースポーツを行い、将来的に地元自治体への経済効果を期待する意味で作られた条例らしい。そんなものがあったとは知らなかったが、是非ともあやかりたい物だ。
「あ、これか。」
俺は検索してみてその画面を開いた。長野県議会のリンクから、共通リフト券のページにアクセスして、その画面を皆に見せた。
「あ、これ鹿島槍もさのさかも入っている。」
「それに爺ガ岳、ヤナバ、栂池…」
「白馬だと、はくのり、コルチナ、岩武もそうね。それによませ、高井富士、竜王、斑尾、マウント乗鞍、野麦峠…これだけ対象になってれば充分だわ。」
なんだよ、どこをホームにするかなんて考えるまでもないじゃないか。
「んじゃ、シーズン券の問題はこれで解決だね!んじゃ〜次の議題はえっと…何しようかな〜。」
雅は進行を進めるが、やや行き当たりばったりな感もある。ここで由香が一言申し入れた。
「あ、あの!…私、スノーボード何も持っていなくて、買いに行きたいんだけど、何をどう買えば良いか分からなくて…。それでどこかで一緒に買いに行ける日があったらなって…。」
そうだ、由香に取ってはそれは大事な問題だ。確かに一口にスノーボードいっても、板、バインディング、ブーツといずれも多種多様だ。それぞれ、どのスタイルをテーマにして、個々どのようなサイズが相応しいのか、おそらく初心者だけでは全く分からないだろう。俺と歩夢も初めて買う時もスポーツ用品店で買った物だが、種類が予想以上にあり過ぎて、適当に安い3点セットを買ったものだ。まぁショップ店員さんに聞けば何とかなるし、俺達が買った店は、ほとんど初級者向けのボードばかりだったので、おそらくどれを買っても、はずれは無かっただろう。ブーツもちゃんと試着して選んだし。
それに俺も歩夢も今シーズンは板もウェアも買い替えが必要だ。サイズが小さくなってしまっったし、スキルアップを目指したいので、中級以上向けの板が欲しい所だ。
「俺も、皆で買いに行けたらて思う。」
「うん、僕と友基も今シーズン新しいの欲しがってたんだ。」
由香の意見に俺と歩夢が賛同する。
「私も、新しいウェア買おうかな。もうちょっとオシャレなの欲しいし。」
智香も若干乗り気だ。
「あ、それじゃ〜今度〜、カービングセッション、皆で行かない〜。私の友達が〜、経営している〜、プロショップなの〜。」
先生がカービングセッションなる専門店に行こうと提案した。専門店と言う事は、ボードに関する様々な物品が揃っているということか。
「良いね〜!私のバイト先でもあるから、色々紹介出来るよ〜。」
雅もノリノリだ。てか雅そんなバイトしていたんだな。しかも担任の先生の友人が経営する店かよ。
「取りあえず、いつ行く〜?」
雅は皆から、日程の確認を取った。早速今度の日曜の昼過ぎに皆でカービングセッションに買い物をする事が決定した。
さて、新しいボード何にするかな。
死ぬときはでっけぇおっぱいに埋もれて死にてぇって!←嫌です。
次回、板を買いに行くエピソードは少し長くなりますm(__)m