1章 邂逅編 Episode:02 カッコつけたわけじゃない
2076| 03.30/11:36 商店街-路地裏
「クッッ!!!」
ガコン!路地裏にある物を蹴り飛ばしながら走る。どれだけ走っただろう。追ってから逃れるために迷路のような路地裏を右へ左へとひたすらに走った。
「待てやゴラァー!!」
「今なら痛くしねぇからよぉ!」
「おい!左に行ったぞ!!」
後ろから追手の声が聞こえる。
(何とか逃げきれそうね...)
そう、淡い期待を抱いた。だがそれはすぐに打ち砕かれることとなる。
「そんな...」
少女の行き着いた先は袋小路であった。
そして、少女を取り囲むようにゆっくりと三人が追い詰める。
「俺らもさぁ。女の子追い掛け回していい気分じゃないんだわ」
気だるそうに少年は呟く。
だから、
「さっさと、それ。渡してくんね?」
獲物を見るような目で少年は少女を見る。
少女はキッと三人組を睨み返した。
「渡せるものですか!!!これは大切なモノなんです!!」
ギュッと何かを守るように手を自分の胸に押し付ける。
「こっちも頼まれてんだ、さっさと渡してくれれば何もしない。これだけは本当だ。」
「そうだぜ。テルはこういう所は馬鹿正直というか、初心っていうか...」
「どう考えても甘い」
「うるせーーーーー!!!」
仲間に散々なことを言われテルという少年は怒鳴った。どうやら図星のようである。
その間にジリジリと少女は距離をとっていた。
(チャンスみたいだし一気に...!!!)
「逃げられる訳ないでしょう?」
影から声が聞こえたと同時に地面から淡く光る鎖が飛び出し、彼女の腕に巻き付いた。
「きゃあ!!」
突然の出来事で反応ができなかった。少女は声のした方の睨む。
影から出てきたのは、微笑を浮かべる不気味な男だった。
その男は鎖で動けなくなった少女へ歩み寄った。
「皆さんの仕事が遅いんで心配になって来てしまいましたよ。」
「は...半田さん!?い、いつから?」
テルは、半田という男に聞いてみた。
「最初から見てましたよ?」
微笑は崩さないまま答える。だが、その目は笑っていなかった。
(いつの間に...まったく気づかなかったぜ...)
テルは半田に尊敬いや恐怖すら感じていた。目の前にいるのは同じ人間なのかと...
(どうやってあの鎖を出したんだろう...)
そう、不思議なあの鎖は何なのか。ただ、わかるのはアレを操れるのは半田ぐらいの者だと。
「さて、と。私も仕事なので...」
半田は微笑を崩さず少女の持っているモノに手を伸ばす。
「放しなさい!!」
抵抗はする。だが、無駄だろうと少女は思った。なぜか?理由は簡単。
この男は強い。自分に相手にできるような存在ではないと。ただ、それだけだ。
少女が諦めかけたその時だった。
「四人で寄ってたかって恥かしくないのかよ?」
半田や、テル達の声ではなかった。一斉に声のした方を向く。
そこには、買い物袋を持つ少年が立っていた。