1章 邂逅編 Episode:15 違和感
2017|03.30/15:37 〔〕 垣根の空
タッタッタッタッ
と軽快な足音が響く。
(誰か、来たのかな...?)
虚ろな目を擦り龍我は起き上がる。後ろには気持ち良さそうに眠る美園がいる。
(そ―いや、連れてきたんだっけか?)
寝起きの頭を掻きながら台所へ向かう。コップをとり水道水を注ぎ飲み干す。
「今、何時だ?」
時計を見る。
「3時37分だよ。」
答えが返ってくる。
「おう。サンキュー。オウ...」
オウガはこんな声じゃない。じゃあ今のは。
勢いよく龍我は振り向く。
ゴスっ
龍我の意識はそこで途絶えた。
「おーい。うまくいったぞ。」
側近Bがドアの方に向かい叫ぶ。
「こっちもだ。」
側近Aは肩に大きな寝袋のようなものを抱えている。
「こいつバカだなぁ」
ハハハと笑いながら側近Bは龍我を引き摺る。
「早くしろ」
ドアの外ではテルが不機嫌に呟く。
「テルよぉ。何でそんな怒ってんだよ。確かに子供襲うのはどうかと思うけどよぉ。」
龍我を引き摺りながら側近Bは言う。
「...」
テルは黙ったまま遠くを見つめる。
(お前ら半田に操られてんだぞ)
そう思うと何故か怒りなのか悔しさなのかよくわからない感情が込み上げてくる。
「クソッ!!!」
ガァン!!
壁に拳を打ち付ける。腕からは赤い液体が滴っている。
「なぁ、ゲンちゃん」
ゲンちゃんと呼ばれた側近Aは階段の下に止めてある車に寝袋と龍我を載せているところだった。
「なんだよテル。」
「正直に答えてくれ。俺とお前の仲だ。」
「もったいぶんなよ。」
「半田さんの腕に変な入れ墨なかったか?」
半田に謝った時のことを思い出す。
あの時ゲンちゃんは先に謝った。でも、あの変な入れ墨を見ていたわけじゃなかった。
どちらかと云うと、半田に対してだ。
「今日は変なことばっかしか言わねぇなテル。」
ゲンははっきりこう言った。
「腕には何にも入れてなかったじゃないか。」
驚きでテルは目を見開く。
「そうだったよなぁタイト。」
と言って側近Bに話しかける。
「男の腕何て見るわけないだろ。」
そんなやり取りをしているがテルの耳には入ってこない。
(こいつ等には見えてない?)
テルは一層半田への不信感が増していった。
「そんな事よりさぁ、早く行こうぜ。半田さんが待ってるよ。」
ゲンがテルを急かす。
「ああ、悪い。」
テルは階段を飛び降り着地する。
「ヒュゥ~。いつの間に高所恐怖症、克服したんだよ。」
ゲンはふざけた様に口笛を吹いた。
「何でだろうな。」
軽く流しテル達は、ゲンの運転で半田の下へと戻った。
ニシシシッ
どこかで誰かが笑う声がした。