1章 邂逅編 Episode:14 命令
2076|03.30/14:20 庶民街-路地裏
テル達は同じ路地裏に来ていた。そこではつい先程まで戦闘が行われていた場所だ。
半田には何かあったら戻ってこいと言われている。
「半田さん居ないっすね。」
側近Aがテルに話しかけてくる。
ああ。
とだけ言ってテルは黙っている。
(おかしい。)
この言葉だけがテルの頭の中でぐるぐると回っている。今まで頼りにしていた人は本当は偽物なんだと言いたい。だが、それを良しとしない気持ちが浮き出てくる。
まるで、出口のない迷路を延々と彷徨っているかのような気分だった。
「どうしたテル?顔色悪いぞ?」
側近Bが心配そうに窺ってくる。
「さっきから頭痛が酷くてな。」
「天気が悪いせいだよ!気にすんなって」
笑っているが、この笑顔も操られているのではないかと思うと、背筋にいやな汗が流れる。
「お待たせしました」
建物の間から音もなく半田が現れる。何時もの様に微笑を浮かべ歩み寄ってくる。
しかし、一つだけ違うことをテルは見つけた。それは半田の腕にタトゥーのような螺旋を描く模様が腕一
杯に広がっていた。
「半田さん...」
それは?と聞こうとしたが、
「すいません半田さん。アイツら捕まえられませんでした。」
側近Aが地面に膝をつき謝った。
「いいんですよ?次頑張ってください。」
半田は微笑の顔を崩さず言った。
「す、すんません」
テルは頭を下げる。顔は見えないが半田は今も笑っているのだろう。
不気味な微笑みを宿して。
「では、名誉挽回と言うことで、君たちには此処に行ってもらいます。」
半田は一枚の紙をテル達に手渡した。
「ここって?」
テルは驚き聞き返す。
「そこに彼らは居ますから。連れてきてください。」
不気味な微笑みで半田は言う。
「手段は問いません。」
獰猛で尚且つ優しく半田は命令する。
紙には施設の名前が書かれていた。
垣根の空