1章 邂逅編 Episode:13 出会い
龍我単体の話ですね。
なんだか久しぶりな気が...
2076| 03.30・14:54 ?????????????
少年は暗い部屋の中にいた。
(あれ...何時の間にか寝てたのか俺...)
龍我は立ち上がり一歩足を踏み出した。しかし、彼はある異変に気付く。
「ん?ベッドが...無い?」
ベッドどころか壁も通路もドアも台所も全て無くなっている。
「え?、え?何で?!」
辺りを見回し挙動不審になってみる。
「何でだ?さっきまで在ったのに...もしかして」
半田達!と言おうとした時、
「そろそろ、気づこうか?」
俺の後ろ、詳しくは真上から優しい言葉が降り注ぐ。
驚いて振り向くとそこには、
「こんにちは。」
大きな光の塊(?)がいた。
「え?き、君は...?」
恐る恐る話しかけてみる。
「いやいや、ずっと一緒にいたじゃないか。もう忘れたの?ご主人様。」
えー
俺は呆然とするしかなかった。こいつがあの心の声の正体。デカ過ぎだろ...。いや待てよ、
「おい。ここは何処だ?俺の部屋じゃないんだよな。」
「おお、察しがいいね。そうだなぁ」
勿体ぶるように言う。美少女が言えばまだ可愛いだろうが、幻想に反して言っているのはデカい光の塊だ。
もう一度言う。でけえ光の塊だ。
「君の心の中とでも云えばいいのかな?」
全くわけわからん。俺の心の中に何でこんなデカいのが住み着いてんだよ。
「デカくて悪かったな」
あからさまに光の塊は不機嫌になる。その前に俺の心を読んでないか?
「読んだんじゃないよ。わかるんだ。だって、ここは君の心だよ?」
「それもそうだよな。ごめん。デカいなんて言って。」
光の塊はクスクス笑っている。許してもらえたみたいだ。
「あと、さっきから塊って呼ぶのも止めてくれない?」
「え?あ、ごめん。君、名前あるの?」
「無いよ。」
即答だった。
「だからさぁ。考えて欲しいんだよねぇ」
な・ま・え♡
可愛くおねだりされてしまった。でも、言ってる本人が光の塊だもんなぁ
「あ、また言った。」
何とも地獄耳のようで。でも、確かに呼びにくい。
不貞腐れている光の塊を尻目に龍我は、小さな子供が考えるようにう~ん、と唸る。
こころちゃんはなんか変だし...いっその事、クロスハートとか...
いや、ないな...
「どんな名前がいいんだ?」
俺の問いに少し考えた後こう言った。
「ご主人様と同じのが良いなぁ。」
そっか。俺と同じか...なんだろうな弟が出来たみたいだ。ま、弟も居ないからどんな気持ちかなんて解んないんだけど。
龍太?そんなんじゃないだろうし。ガを付けた方が良いのかな。
かっこいい名前が良いだろ。王様とかかっこいいしね。
「決まった。君の名前はオウガだ。」
「オウガ?」
にっこり笑って俺は続ける。
「ああ、王様のオウに龍我のガだ。どう?」
俺の提案を聞き、黙っている。オウガ(仮)は何度もその名前を呟き噛みしめる。
「うん!とっても気に入ったよ。ありがとう。」
ここで正式にオウガとして名前が決定した。
「でもオウガ。今の君と外の君とじゃ、全然雰囲気が違う感じがするんだけど。」
だが何故か答えが返ってこなかった。
「どうした?」
もしかしてまだ隠していることがあるんじゃないか...?
「ごめん。喋るのが恥かしくって、つい冷たくなっちゃうんだ。」
何とも可愛い理由だこと。
「そっかそっか。いいんだ。」
なぜだか可愛く思えてしまう。これが保護欲と言うやつか...
「そうそう、半田って奴が出してるあの鎖みたいなの。わかるか?」
詳しく説明しようとするが、
「あ~。想像するだけでいいよ。わかるから。」
え?
「さっきも言っただろ?考えてることは分かるって。僕とご主人様はリンクしてるんだ。だから、考えて
ること見てること、味や感覚、匂いも全部ひっくるめてお見通しだ!」
どこかの映画の科白を言っているのか、カッコよく宣言した。
「そ、そうなのか?」
「そうなんだよ。」
タジタジになりながら今日の出来事を思い出す。
捕まえられていた時、あの鎖は一体何なのか。
「ごめん。よくわからないんだ。直接触れることが出来れば解析できるんだろうけど。」
そうか、ありがとう。
「え?いや、一回俺はあの鎖に触ったぞ?そんでもって叩き切った筈だけど。」
俺はあの時、記憶が確かならあの鎖に触れている。そのとき解析は出来た筈じゃないのだろうか。
「ごめんよ。その時はまだ眠ってたから。」
俺はそっか。とだけ言って笑顔で返す。まだ聞きたい事があるのに何故か体が重くなっているからだ。
「なん、だこれ。」
「初めてなのにリンク時間が長すぎたんだ。」
え?リンク?
だんだん自分の体にノイズのようなものが走り出す。
「こっちの世界で存在が保てなくなってるんだよ。大丈夫。寝れば治るから心配しないで。」
心配しないでって、オウガとはもう会えないのか?
「そのうちね...」
声も聞き取り辛くなっていく。
「また会えるよ。」
それだけを言い残し、本物の暗闇が龍我を包み込んだ。
今日は対話で。正体も何なのか分かったようですね。
次回もよろしくお願いします。
次回予告
「疑心暗鬼」をお送りします。