1章 邂逅編 Episode:12 皹
今回は、テル達のお話ですね。
今回も温かく見守ってください
2076|03.31/ 14:17 路地裏
テル達三人組は気分が重かった。
何しろ半田の命令通りに少女を連れてこれなかった。
少女どころか少女を背負った少年ですら捕まえられなかったからだ。
かと言って彼らに非はない。少年に探索能力が備わっていることすらわかっていない。
「どうします?テルさん」
側近Aは泣きそうになりながらテルに小声で聞いている。これから受ける仕打ちを思うと涙が溢れるのだろう。
「大丈夫だ。半田さんはそんなことはしない」
なぜ、こんなことが言えるのかわからなかった。半田から仕打ちを受けることも当然だろう。だが、テルはそうは思わなかった。
「戻ろう。」
今はそれしか方法はない。彼らには少女達を探す手段は無い。ここは半田に頼る以外の道は残されていなかった。
三人は半田の下へ戻ろうとした。
いつでも何かあれば半田さんが解決してくれた。失敗ばかりで、何の役に立たないそんな俺たちを半田さんは許し、チャンスをくれた。本当に半田さんを尊敬している。
「ん?」
テルの足が止まる。
ふと、テルは呟いた。
「俺たちっていつから半田さんといるんだっけ?」
「「え?」」
前を歩く二人が同時に振り向いた。
「昔からに決まってんだろ」
側近Aは呆れた様に言った。
「どうしたんだよ?俺たちと半田さんは昔っから一緒に色んな事してたじゃないか。
鴉の奴らの時とか。あと、YOUNGの時とかな。」
側近Bも同じように言った。
「い、いや。何でもないんだ。独り言だよ。」
ハハハと笑いながらテルは誤魔化す。
さ、行こうぜと二人を促し半田の下へ歩みを進める。
「YOUNGか懐かしいなぁ」
「だよなぁ、あの時の半田さんって言ったら...」
二人の会話が聞こえてくる。
昔、テル達は別の不良グループと争いになった事があった。<鴉>と言うグループだった。5対3不利な状況に追い込まれ、どうしようもなくなっていたその時、助けてくれたのが半田だった筈だ。だが、おかしい。テルの中で半田と出会ったのは二年前の鴉の時だ。YOUNGのグループとの争いは鴉よりも以前、三年前の事だ。
(俺達の認識にズレがある?本当に助けてくれたのは半田さんなのか?)
テルの頭の中で疑問が渦巻いている。それは何時しか疑問から不信へと変わっていく。
彼の中で信頼、希望そして、憧れの光に霞がかかる。
時計を思い浮かべてほしい。それは一つの小さな歯車だったかもしれない。だが、歯車が欠ければ時針は少しずつ狂っていく。
(もしそうなら、一体あの人は何者なんだ?)
その時、ピシリとテルの中の何かに皹が入った。
さて、今回はテル達のお話でしたが、どうでしょうか?
これからの物語の動きってある意味ではテルが、
かなり重要な役なんじゃないかなって思ってます。
これからどうなっていくのでしょうか。
いつもの行きましょう(/・ω・)/
次回「転寝」をお送りします。