1章 邂逅編 Episode:10 契約
今回、半田オンリーの話です。
登場人物は彼一人です。
2076|03.31/13:05 とあるビルの屋上
半田は一人悩んでいた。
あの三人組には上との連絡がある、と言って依頼された少女を探しに行かせている。
行かせているとは言っても彼らはあの少年には勝てないだろう。
理由は簡単だ。
「器か...」
器とは、ある一定の能力を持っている存在のことを指す。能力を持っている存在は各々特殊な能力を開花させる。
極端な話、相手に触れずに遠くへ飛ばしたり、物を燃やす事が出来るということだ。あり得ないことを平
然とやってのける理不尽の権化。
所謂、超能力者と謳われる者たちだ。
(まずいな...こんな場所で器に出会うなんて...)
想定外だと考える。だが、不味いと言っている割に心の中には驚きや歓喜の感情が押し寄せていた。
(こんな気持ちはいつ以来だろうか...)
自分の技が破られる。今まで相手をしてきた中で、かなりの実力の持ち主だと半田は見抜いていた。それでもまだ、彼は成長すると確信している。
(なぜでしょう...彼と戦っていると貴方を思い出します。皇よ...)
昔を懐かしむように半田は空を見上げる。空には厚い雲が立ちこみ今にも降り出しそうな空模様だ。
『森林に潜む蜘蛛』
詠唱を開始する。半田を中心にサークル状の光が展開し、紫色の光が半田の顔を妖艶に際立たせる。その顔にはうっすらと笑みが零れていた。すでに依頼など、半田の中ではどうでもよくなっていた。彼の優先順位は龍我と言う男に移っていた。
(申し訳ございません。皇よ...)
命令に逆らうことは彼にとって皇への裏切り行為とされていた。しかし、半田にも考えはある。
(このままでは皇への脅威へと成り得る...ならば今のうちに...)
そう決意し続きの作業へと移る。サークルの上に一本の鎖を置き、両の掌を前に突き出す。
『この鎖と双腕に宿りて新たなる力を授けよ。』
カッッッ....ゴオォォォォォ...
雷鳴が轟き稲妻が走る。鎖がサークルの中へと溶け込み、光る掌ほどの蜘蛛がニ匹現れた。
そのニ匹の蜘蛛は半田の体を這い腕へと進む。そして蜘蛛たちは手の甲まで来るとニ匹同時に咬みついた。
「グッ」
半田は痛みを堪えるように眼を瞑る。
そして目を開けると、ニ匹の蜘蛛は忽然と姿を消した。
代わりに、半田の腕には螺旋を描くような模様が浮かび上がっていた。
皆さんお久しぶりです。
週末はどうお過ごしでしたか?
私はお祭りに出かけて足パンパンです。
次回 『やっぱりラブコメなの?』