1章 邂逅編 Episode:09 やっぱこの世界逃げるが勝ちっしょ!
一切戦いません!
血も流れません!
にげます!逃げるが勝ちです!
2076|03.30/12:59 平和十字公園噴水前
≪後ろだ!!≫
咄嗟に体をひねる。
バゴォォ!!
龍我の座っていた所へと容赦なく木刀が振り下ろされる。
「チッ!女もしっかり助けてやがる。」
木刀を持った側近Aは忌々しげに言う。龍我はきちんと美園を抱きかかえていた。
「うるせえなぁ...女も護れねぇで男が務まるかよ。クソ!!!」
流石に今のはヤバかった。事前に教えてもらってなかったら直撃は免れなかった。
(助かった。)
心の中でさっきの声に礼を言う。心の中で言ったつもりだった。なのに、
≪お礼なんて要らないよ。≫
へ、返事きたぁぁぁ―――!!!
≪驚くのも無理ないよね。僕は名もなきで...≫
ブオォン!!
目の前を木刀が通り過ぎる。
「ちょ、待て!!こっちは話してんだって!」
「訳解んねぇこと言ってんじゃねぇぞ!」
美園を庇いながら振り下ろされる木刀を間一髪のところで避ける龍我。それは、
心の声のおかげでもある。
≪周囲10メートル以内に龍我に殺意を向ける敵影を2つ発見。≫
何言ってんだこいつ...二人?ってことはテルと側近Bかな...。
あの半田って野郎がいないことには感謝だが、どっかで見てる可能性もないわけじゃない。心の声によると10メートル以内だけだったし範囲がそれだけなのか、もしくは奴が
殺気などけせる仙人のような人間なのか...。
≪そうだね...の効果範囲は100メートルといったところかな?≫
じゃ、後者ってことか?何方にせよ、今はこいつ等だろう。
側近Aの攻撃を掻い潜りながら心の声に言われたとおりに動く。
≪右の角から二秒後≫
右の角を見る。言われた通り側近Bが飛び出してくる。
(嘘だろ)
側近Bはチャンスだと思ったのだろう。勢いに乗せて殴りかかってくる。
(避けれねぇ!せめて美園だけでも...!)
眼を瞑り身構える。だが、何時まで経っても衝撃が来ない。龍我は恐る恐る目を開ける。そこには壁に凭れ掛る側近Bがいた。
(何が起きた?)
疑問に思うが今は考えている場合じゃない。美園を背負い直しまた走り出す。
≪もう少しか...≫
そんな声が聞こえた気がした。
(感知能力、俺も使えないかな。)
先ほどの戦闘である程度、能力の信頼性と基本性を確認できた。
≪安心して。龍我も意識を集中させれば使えるはずだ。≫
そんな事なら早く言ってくれ。まあいいや。
龍我は目を閉じ意識を集中させる。すると、頭の中にマップのような物が描き出される。マップの中心には黄色い点。
そして、その点を中心に等間隔に引かれた円が描かれている。円の中には赤い点が三つ映し出されている。赤い点は疎らに動き回っているようだ。
(要するに、俺たちを探す手段は持っていないって訳だな。逃げるなら今のうちか...)
≪そうだな...私も今はそれが一番の策だと思う≫
なら目的は簡単だ。要は見つからずに逃げ帰ることが一番の目的だ。
≪路地裏を掻い潜り...≫
(いや、それはダメだ。)
心の声を遮る。逆に人がいないせいで簡単に道が割れてしまう。
(昔からよく言うだろ?木を隠すなら何とやらだ!)
そして、俺と心の声の二人(?)と家まで見つからない安全なルートと道順を割り出し実行に移した。
正直、あの三人組には勝てる自信はあった。でもそれは何も背負ってなかったら、の話だ。今の俺には美園もいる。それに、さっきの戦闘でかなりのエネルギーを消費しているのだろう、体が思うように動いてくれない。こんな状態で戦ったら、美園を危険に晒すだけだ。だから今は敵を迎え撃とうなんて考えていない。
無駄に被害を拡大させたくない。
美園は、絶対守り通す。
そう決意すると、龍我はマップを気にしながら行動を開始した。
話の中でちょいちょい助言を与えてくれる声は一体何なんでしょうね。
これから少しずつ分かっていきます。
次回 「フフフッ次回は私がいただきました。」