1章 邂逅編 Episode:08 Your Name?
二日連続で投稿させていただきます。
少々箸休め回だと思って見てください。
2076|03.31/12:47 大通り平和十字公園 噴水広場前
「はぁっはぁっ」
荒い息をしながら龍我と少女は路地裏から大通りの方へと出てきていた。
(商店街から少し離れちまったけどここなら見つけにくいだろ)
平和十字公園、その名の通り公園の入り口に全長十メートルはあろうかというような、巨大な歪な形の十字架が一本聳え立っている。その奥には噴水がありこの辺りでは有名なデートスポットとなっている。
今、龍我たちが居る場所はその噴水の場所である。
噴水を取り囲むように植物が植えられていて、隠れるには丁度いい空間が広がっていた。
二人はベンチに座り植えられている木々の隙間から追手が来ていないか確認する。
ふと、隣の少女をみる。これと言って変わった点など、美少女ということ以外変わりのないどこにでもいる女の子だ。
追いかけられるほどの犯罪を犯すようには見えない。
「おい。あんた何で追いかけられてんの?」
俺は上がった呼吸を整えつつ聞いてみたのだが...反応を見る限り芳しくはないな。
女の子は目を逸らして言った。
「貴方は関わっちゃダメよ。貴方には知らなくていいことだから。」
何か物有り気な感じで彼女は言った。
「ふーん。」
「え!?それだけ?貴方が聞いてきたのに!もっと...こう...あるでしょ!男なんだから!」
少女は驚き立ち上がった。
「いや、男だからって言われても...」
(そんなのでわかるわけないだろ。)
彼女は少々感情的になってしまう傾向があるようだ。
「言いたくないっていうか言えるようなモノじゃないってことだよな。そんなの知って俺も狙われたら敵わねぇし。」
手をひらひらさせながら龍我は言った。
「べ、別に...」
最後の方はゴニョゴニョ言って聞こえなかったが、まぁいいだろう。
「取り敢えずあんたの名前を教えてくんねえかな?あんたあんたじゃ呼びにくくて。」
ベンチに座るよう促し、会話を試みる。
「言ってなかったわね。私は、花谷美園って言います。」
意外と素直に教えてくれた。そっちの方が俺も助かるな。
つーか...
「綺麗な名前だな。俺は古月龍我だ。」
嬉しかったのか美園は顔を真っ赤にしている。
いや、名前も彼女の容姿と完全にあっている。透き通るような肌に長く艶めく黒髪、隣にいてもわかるく
らいのいい匂い。まるで花の咲き乱れる庭園にいるかのよう...
おっと、変なキャラになってしまった。いかんいかん。でも、いい匂いだよなぁ...
また変な思考に突入しようとしていたその時、
ぽすっ
何か柔らかい感触が肩へDIVEしてきた。感触のする方を見ると美園が寄りかかっている。
俺の思春期真っただ中の初心なハートが急上昇中である。俺のいろんな所が急上昇しそう。
そんな内心と裏腹に俺の隣で苦しそうに呻く美園。
「へぇ!?みっ美園さん!?」
思わず変な声が出てしまった。
「大丈夫です...。ハァ...。少し...やす..めば...」
体勢を変え膝枕になるように美園を寝かせる。しかし、あからさまに荒い呼吸をしている。
どう考えても大丈夫じゃないだろ...
「おい!病院!病院に行けば!!」
「それはダメ。ダメなんです。」
どうしても...と、美園は言おうとすると口を噤み下を向く。
その表情を見て事情があるんだろうと思う。
「いいよ、言えないなら。確かにあいつが病院なんかに来たら大変だよな。無駄に被害を拡大するだけだし。」
俺の言葉に美園は「はい」とだけ答えて、眠ってしまった。
(今のはどう考えても嘘だよな...)
考えても見てほしい。中学生の俺がわかるような推理で読み解けるような状態なのだろうか。あの推理なら言いよどむ必要もない。あの半田って奴が病院の中で暴れたらそれこそ大惨事になる。そう言えばいいんだ。でも、それだけじゃない気がする。あいつらは美園を標的としているのだろうか...
それなら、あの状況の中で連れて行けたはずだ...。俺が行った時にはすでに美園は拘束されていたんだし...。でも連れて行かなかった。いや、もしかして連れて行く事が出来なかった?でも、なんで...
「あ~わっかんねぇ!」
目下最大の疑問であった。
そして今、少年たちの運命の歯車は少しずつ回り始め大きな物語の奔流へと巻き込まれていく。
黒い影は静かに二人へ近づいて行った。
なかなか、紳士な(?)龍我君ですね。
さて、次回も波乱の予感!
それでは、いつもの行かせてもらいます!
公園でラブラブな二人。そんな二人を引き裂く魔の手とは...!?
次回!! 「ラブコメ何て要らないんだよ」をお送りします!!