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第1話





意識が浮上していく感覚がある。

けれども身体は指1本動いてくれなくて。

どこか、水の中にいるような浮遊感を感じる。


そうだ、さっきいた男の子は誰だろう?

隣で寝ていたという事は、少なくとも家族、又は親族である可能性が高い。

けれど、私には兄と姉はいるが弟はいないはずだし、それにあの男の子は私に似ているようには思えなかった。


なおも続く浮遊感に疑問を持ち、私は瞼を持ち上げた。



そこにはほのかに色づく青、それは本当に水の中にいるかのような感じで。

あたりを見回しても何も無く、本当に私は浮かんでいるようだった。



「…ここ、は?」



微かに枯れた声は、どこか幼く感じて、私の声のはずなのに、他人のものだと思ってしまった。



「小さい…?」



喉に手を当てようとした時視界に入ったのは、幼子の小さく、柔らかそうな白い手だった。

は、え…、と吃りながら私は身体全体、隅々まで見た。


そこで見えたのは、まだ小学生にもなってないくらい小さい身体があった。




「え、なんで…、私は中学生だ、よね…?」



自分の手だと思われるそれを眺めながら呆然と呟いた時、先程までなかった大きな鏡が2面目の前に現れた。


そこに映し出されたのは、



「…私?…と、え?」



片方には生まれたばかりの私がいた。もう1面には、あの男の子によく似た女の子がいた。



私ともう1人を写している鏡のなかで、初めに動き出したのは、私が写っているものだった。

ゆっくり、けれども早送りのように、鏡の中の私が成長していく。



「…っ、これ、あの日の…!」



私の記憶している最後の映像が流れ始めた。

1人下校する私の後ろから焦点のあっていない男性が近づいてきて・・・


「…まっ、!!!!」



あの日、私はドラマを見ているように、時間が過ぎていったのを覚えている。

今まさに、あの日の私を見ている。

あの日のように大人に囲まれ、そしてその鏡は真っ暗になった。



真っ暗になった鏡を呆然と見つめる。そうだ、私はあの日しんだんだ。



では何故、意識がある…?






一言も発せず、指1本も動かせない中、もう1面の鏡が動き出した。

こちらはさっきの様に早送りのようではなく、ゆっくり会話の全てが分かるように流れていった。


鏡に映る女の子は、五十嵐悠華いがらしゆうかというらしい。

そして、双子の兄、五十嵐玲音いがらしれおん

先程会ったあの男の子だ。


広い屋敷によく二人でいた。時々出てくる男性と女性は両親だろうか。2人によく似ていた。

そして、お手伝いさんらしき人達が多勢。


2人はいつも一緒にいた。部屋での読書も、庭での散歩も、なにもかも。

特別会話がある訳じゃないが、必ず2人は手を繋いで。



最後に2人で大きなベットで寝ている姿が映ると、さっきと同様に鏡は真っ暗になった。


映像を見終わった瞬間、私の頭の中に五十嵐悠華の記憶している情報が流れ込んできた。



そして、鏡の役割を果たすかのように、〈わたし〉が映った。



ライトブルーの腰まである綺麗な髪に、ゴールドに輝く大きな瞳、白く透き通る肌は飴細工のように繊細で、西洋の人形のように、整った女の子、〈五十嵐悠華〉だった。





「…そっか、私は…〈五十嵐悠華〉なんだ。」



今の現状を理解した途端、水の中のようにふわふわしていた場所が、私を何処かへ連れていくように流れ出した。



向かう先に見える白い光は暖かく、そして、どこか聞き覚えのある声が複数聞こえてくる。




再び沈む意識に逆らわず、そっと瞳を閉じた。



















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