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綺麗な先輩達 第3話


本当は4月1日編を書き終わってから投稿しようと思ったのですが……思った以上に長くなりそうで。

続きは今日の夜か明日の夜に。


「で、どういう事ですか?」


玄関での初顔合わせを済ませ食堂に移った一同。

沢樹先生がいれてくれたお茶が皆に配られるのを待って、寮長さんが口を開いた。

見渡せば先生と叔母を除いて皆、困惑気味な表情をしている。


それはそうだろう。

叔母から聞いていた話では、半年以上前から寮母がいなくて、特に食生活がかなりギリギリな状態だったらしい。

そんな時にようやく見つかった寮母は、一見身長が高いクールな女性に見えるが、実はベビーフェイスでちょっとシャイなれっきとした青少ごめん、やっぱ無し。忘れて。


「?……えーと、山田君だっけ?どうかしたの?」


「あ、いや、なんでもないすよ。ご心配お掛けしてすいません」


やたらと美人な先輩に心配されてしまった。

自分で自分を凹ませて周りに心配させる……かまってちゃんかっ!!


「んー、それならいいんだよ♪」


そう言って明るく微笑む美人先輩。いや、他の先輩方も美人なんだけど、この人は……なんていうか、完璧すぎる。

顔のパーツに体の細さ。手足の長さから纏っている雰囲気まで。

The 美人。

そんな2つ名を持っていてもおかしくない女性だ。

顔のつくりが少し日本人らしくない上に、自然な栗色の髪を見るに、恐らく外国の血が混ざっ「銀?聞いてるの?」


「聞いてませんんーぃいふぁいいふぁい」

何やら話していた叔母と寮長さんのやり取りを、敢えて無視して思考に没頭していた俺。叔母の問いに素直に答えたのに、半眼で睨みつつ頬をつねってきた。本日2度目。


「他人事みたいにしてるけど、あなたは当事者なんだからね」


「むしろ当事者な僕と寮生の先輩方に大事な情報を与えず、他人事みたいな扱いをしたのはあなただと思いますが?」


勝手な事を言う叔母に、頬をさすりながら半眼で睨み返してやった。


「うっ………ちょっと可愛い甥っ子にイタズラしたくなっただけじゃない……悪かったわよ」


拗ねた様にそっぽを向く叔母。27歳。

そんな可愛いらしい叔母を、驚愕の表情で見ている新雪寮の面々……何をそんなに驚いているんだろうか?


「はぁ〜〜。『極寒桜』の七瀬美桜先輩もそんな表情をするんですねぇ〜〜」


んー?今、何やら非常に面白可笑しい発言が聞こえぞー?


「はい、沢樹先生!」


「はーいぃ、山田君ー!」


「ご、極寒、桜ってなんでぷっwww」


駄目だ!込み上げてくる笑いに圧されて、最後まで言い切れない!!w


「はいぃ、極寒桜とはぁ、大学時代に付いた七瀬先輩のあだ名ですっ!由来は冬だった当時の大学の食堂でぇ、しつこく後輩の女の子をナンパしていた男性にぃ、先輩が頭から背中まで満遍なくぅ、氷が入ったアイスコーヒーをぶっかけちゃったのが由来でぇす!」


それでも質問の内容を、汲み取ってくれた沢樹先生はとても教師として優秀なのだろう。非常に素晴らしい話を聞かせてくれた。


「ふ、ふふ、そ、そうですか…ぷっwww……………ふぅ。とても為になるお話でした。ありがとうございます」


沢樹先生に心からお礼を込めて、頭を下げた。

俺の中での先生ランキング、初登場にしてTop3に食い込んできた沢樹先生とは、これから仲良くなれそうだ。


「さて、話がずれちゃいましたけど、これからの事についてもう一度はなふぃぃ、いふぁぁ!ひょっ、ひょういちはんいふぁいいぃぃ!」


「ひゃぁぁ、へんひゃい、い、いひゃいれすぅっ、ごめんなひゃぁいぃぃ!」


早速仲良くつねられました。




「言っておくけど、雅美には寮母は男の子だって伝えたはずよ」


叔母の言葉に一同、頬を擦ってる涙目先生を見る。

どうでもいいけど、そういう仕草をすると本当に年下にしか見えないな。


「わ、わたしはちゃんとみんなに言いましたよぉ!」


「……確かに言ってたけどねー」


「普段が普段だから、また嘘だとばかり……」


余程信用が無いのだろうか、この先生は。


「……貴女、そんなに毎日嘘ついてるの?」


「つ、ついてませんよぉ!月に一回ぐらいですぅ!」


「朝昼夜で一日三回はつくわよね!」


「………うん」


「わぁぁぁぁぁ!しぃっ!しぃっ!」


そして生徒とキャッキャキャッキャしだす先生。時折、俺と叔母の顔色をうかがうようにちらちら見てくるけど、呆れを多分に含んだ視線だからだろうか。

とりあえず先生ランキングが大きく降下した事だけ言っておく。




▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼




一階の食堂があるこの部屋は、建物の構造的に少しだけ飛び出ている形になっており、窓際の天井部分はガラス張りで、今日の様に天気が良い日は、そこから柔らかい日射しが射し込んでくる。

俺が座った席は運良くその日射しが当たる場所だったみたいで、気を抜けば微睡んでしまいそうになる、そんな幸せスポットだった。


「ひゃー……中学まで徒歩50分かー。私なら間違いなく不登校だねー」


「不登校になったらなったで、1日中畑仕事ですよ」


微睡まずにいられたのは、先輩方が話しかけてくれているからだろう。


「ぐぅぅっ、往復1時間40分歩いて勉強しに行くか、1日中土いじりか……究極の2択……!!」


「いや、大袈裟過ぎです」


少しテンションの高いこの先輩は、三年生の鈴井 透子先輩。新聞部で部長をやっているらしく、食堂に入ってきてすぐに写真を撮って良いか聞かれた。勿論快く承諾してキメ顔で応じた。


「いやいや、都会っ子な私達には、そんだけの覚悟がいる選択だよー。ねー?」


「………うん」


そう頷いたのは、深夜(みや)ひかり先輩。

寡黙で身長高めの、かっこいい系美人さんだ。

ちなみに、どちらかというと俺もかっこいい系美人さんと称さだ・か・ら!止めろオレ!これ以上自分を傷付けるな!!


「う〜ん…やっぱり畑仕事よりも学校に通いたいかな?でも畑仕事にも興味があるし……悩むわね!」


ちょっと二人とはズレている発言のThe 美人、冬堂 結晶(ゆき)先輩。


「そうやって考えられる冬堂先輩は田舎暮らしの素質がありますよ」


「えっ!本当に!?や、やったわー!私やったわ!ひかりちゃん!!」


「………うん、おめでとう」


喜び合う先輩方。何が嬉しいのかさっぱり分からないが、美人な二人の笑顔は見ていてとても幸せな気分になります。っと、あんまり見てると危険な事になりそうだ。


「ふむふむ。田舎暮らしの素質……っていうと、具体的には?」


そしてこちらの先輩は、真剣な表情でメモを構えている。


「そんな真面目に聞くような事でも無いですけど……そうですね。田舎には娯楽がほとんどありませんから。自分で自分が楽しいと思える事を、どれだけ探せるか。単純な話、退屈な毎日じゃ生きる気力なんてわきませんよね」


ズズズと、沢樹先生が淹れてくれたお茶を飲む。ちなみに昆布茶だ。


「ほほー…なるほどねー。つまり私みたいに悪い部分に注目して、どちらが楽かーってな考え方より、面白そうな部分を見つけて、どちらが楽しいかなーっていう考え方の結晶の方が、田舎で暮らすには合っていると」


「まぁ、その考え方は田舎に限らずではありますけどね」


「都会には、それなりに楽しめる事が溢れてるから、探す必要もなく見つかる。それに慣れてしまった現代っ子には田舎は厳しいって事かっー!!」


そう言ってメモをぺちんと叩きつける透子先輩。ほんとテンション高い。ってか、そんなに田舎で暮らしたいのだろうか?


「私ね、ひかりちゃん。将来田舎に引っ越したら、ヤギと羊とねこを一匹ずつ飼うの」


「………素敵だと思うわ、結晶。……その時は私を家に招待してね?」


将来に夢みる二年生コンビ。田舎に引っ越すなんて、老後の人生プランでしか聞かない話だけど……まぁ、楽しそうで何よりですよ。



「………貴方達、楽しそうね?」


「ねー。って、そっちの話は終わったんですか?」


寮長さんと先生と話をしていた叔母が、さっきと同じ様な目付きで睨んでいた。


「『まーた他人事みたいに言ってからに……この子はもうっ!』と言いたげな視線ですけど、今の自分には何の決定権も無い流されるだけの存在なんですからね」


「なんでちょっと卑屈になってんのよ……。それでもあんた自身どうしたいとか、どうなりたいとか、言いたい事はあるんじゃないの?」


「幸せになりたい」


「私だってなりたいわよっ!!」


叔母の方が切実だった。



そんな叔母と甥っ子のつまらないやり取りをしていると、クスクスと沢樹先生に笑われてしまった。


「ふふふ……本当に仲が良いんですねぇ〜」


そうしみじみ言われると、恥ずかしいんですけど……。


「えーと……結局どうなったのか、結論を聞きたいのですが……」


照れ隠しではないけど、話を進めさせてもらおう。照れ隠しではないけど。


「その前にね。銀をここに連れて来た理由を知っておいて貰いたいのよ」


「理由、ですか?」


まぁ、女子寮と言わなかったのはイタズラでも、さすがに女子寮に連れて来たのは何か訳があるんだろうなぁ、とは思っていたけど。


「銀はね、別に新雪寮じゃなくても良いのよ。私のマンションでも、男子寮でも、近場で借りたアパートからでも、学園には通えるでしょ?」


「あー…確かに、わざわざ女子寮で寮母なんて大変な事をする必要はないですよねー」


鈴井先輩に続いて頷く一同。


「ええ。だから銀の為じゃないのよ。この新雪寮の為に銀を連れて来たの」


この寮の為に、ねー。


「んー…?寮の為というと?」


「寮母がいなくなって半年。教員や保護者から新雪寮を閉鎖して、第一女子寮と統合したらどうだ、って話が出てんのよ」


その話は初耳だったらしく、先輩方は皆驚いた表情をしていた。


「当然、私が統合なんてするつもりは無いんだけど。でもねぇ……今のあなた達を持ち出されたら、絶対に否!とは言い難くのよ」


今度は不安気な表情をする先輩方。


「……えーと、私達、なんかしちゃいました?」


「自分達でも気付いてるでしょ?半年前と今の違い。主に肌とか髪とか」


「「「っ!!!」」」


そして絶句する先輩方でした。

みんな分かり易いなぁー。

そんな風に、自分ひとりが暢気に座っている中、周りは愕然としていた。


「……いや、まぁ…」


「……自分でも、もしかしてーとは、ね……思っていたけど…」


「……周りの人達が気付く程とは…」


「栄養不足による肌質髪質の低下。更に寝ても抜けない疲労感。それでもまだ若い10代のあなた達なら良い方よ。もう若くない雅美を見てみなさい」


「えぇ!?ここでわたしですかぁ!?って、や、やめてぇ!みないでぇ!!」


慌てている沢樹先生を同情する様な目でみる先輩方。

いろんな意味で可哀想な先生だった。


「とにかく、不摂生な生活、主に食生活を改善しないと駄目だという事は分かりました。しかし、だからと言って女子寮に男子生徒を向かい入れたら、別の問題になるだけでは?と、先程から私は言ってるのですが?」


むしろそっちの方が大問題だと思うが。


「ええ、わかってるわ。だからね、今からお昼ご飯を作って頂戴、銀」


「………………え?」


「お昼ご飯よ。さっき食材買って来たでしょう」


「………………え?」


「今、寮に何人いるの?」


「ここにいるだけですよぉ。あと食材はぁ冷蔵庫に入れておきましたぁ」


「あら、いつのまに。という訳で銀。六人分のお昼、頼んだわ!」








「………………え?」


話、繋がってます?


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