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2012年11月・12月  作者: 山猫亭
11月
1/7

【暇人】ぼっちな批評家の苦悩

P.N.暇人で活動している者です。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


今回は投稿環境の確認も兼ねての作品投稿となりました。

 バトル系物語の主人公は、そのほとんどが最後には友情や愛で最後の敵を倒してハッピーエンド。

 最終回までの過程で友情を深め、恋が愛に変わったりして主人公たちは成長します。


 私、中里梓なかざとあずさはそんな物語が大嫌いです。




「なーになに。また酷評でネットの小説ボコってんの?」

「うるさい。私がネットで何しようが関係ないでしょ」

 小学校の頃から腐れ縁の友人である高森秋穂が不意に私のノートパソコンの画面を覗き見て苦笑した。

 高校二年の私達は、文化祭も終わって先輩もほとんど部活に顔を見せなくなり事実上最高学年になったばかりで、自由気ままに振る舞っている。ちなみになんの部活かといえば文学部。

 本来なら各自本を持ち寄って読んだり紹介したり、作品を書いて合評をするのだが、最近ほとんど学校のパソコン室に籠ってはネット小説を漁る私。読むジャンルはといえばもっぱらファンタジーや恋愛のようなメジャーなもの。

 メジャーなジャンルの方が結構叩き甲斐があるのだから仕方がない。

「ま、書き手も大変だよね。頑張って書いても梓みたいな人種に叩かれちゃうんだからさぁ」

「普通に考えて叩かれてる内が華よ。少なくとも読んでもらえてはいるわけだし、コメントは口が悪いだけで言ってる内容は当然だから、指摘箇所を改善すればいいだけ。礼を言われるならまだしも否定されるなんて納得できない」

 私がいつも口癖のように発するこの信条に秋穂はいつも苦笑を返す。明確に私に対して意見をぶつけてくれたことは今のところ一度としてありはしないが、彼女はきっと私のことをある程度理解してくれているに違いないと勝手に思っている。

 私は他人に対して絶対的な信頼は持たないようにしている。別に他人から信用されたいわけでもないし、頼られたくもない。さらに言えば自分のことを他人に完全に理解してほしいと思うこと自体が傲慢だとさえ思っているからだ。

 くだらない友情ごっこや恋愛ごっこなどに興味はない。だから基本的に匿名で活動ができるインターネットの世界に居心地の良さを感じている。

 私は人嫌いなのだ。

 だから友情・愛情といったテーマを掲げるジャンルの話を好きになれない。だから批判したくなる。そのためには読まなければならない。一番大きな矛盾を自らの内に抱き、それを自覚しながら目を背けて作品を読み耽る。そして文章校正や言葉遣い、キャラクターのアクションに対する疑問や批評、指摘を作者へと投げつける。

 意見を小出しするのが嫌いな私はいつもまとめて感想を書くが、毎度私の感想を見て絶句する作者がおかしくて仕方がない。勘違いしないでほしいが、作者を虐めて楽しむような意味ではなく単純にあまりの言われようにあたふたしている様が滑稽なだけだ。

 その反応はまさに自分の感想を読んで何か感じ取ってくれたリアクションそのものであるため、余計に私の中で満足感が膨らんでいく。

 しかし、たまには私だって寂しくなる時がある。


 本当にこのままの生活を続けて私は平気な顔をしていられるのだろうか、と。


「お前リアルで友達いないだろ」

 などという冗談混じりのコメントが時にグサリと突き刺さる。まるで氷でできたナイフのように鋭く、深く私の精神を脅かし、心を芯から凍らせていくような寒気を得る。普段口にしていることとは対照的に本音の部分では人との接触をやはり求めてしまう人間の性が見え隠れして、妙な恥ずかしさに一人悶える憂鬱な時間。「ぼっちの何が悪い」と開き直ってみたい気もするが、きっとそれを一度でもしてしまうと本当に開き直って余計ぼっちになるに違いない。自分で自分のその様子をはっきりイメージできてしまうのが追い打ちをかけた。

「何勝手にナーバスになってるのさ? らしくないこと考えてないで、そろそろ冬休み中の活動で使う部誌の作品、書いちゃってよね」

「ちょっと、人がせっかく大人っぽく妄想を垂れ流してたんだから邪魔しないでよ」

「妄想を垂れ流すのに大人も子供もないってば。あと、胸張って言うことですらないよね」

 相変わらず秋穂は妄想へと飛んで行った私の意識をリアルに戻す達人である。「部誌」という単語だけで指先から髪の毛一本一本の先まで震えが止まらなくなる私の弱点を良く知ってらっしゃる。

「べ、別に部誌の為の作品を書くのが嫌ってわけではないのよ? そもそも作品を書くのが嫌な人は文学部に入部しないから! ただ、編集の時に人と話さなきゃいけないのが怖い、なんて口が裂けても言えな……ぁ」

「ふっふっふ。コミュ障乙」

「しまったぁぁぁああああああああ!」




 秋穂にだけはどうしても自分の素が出てしまう。

 クール系女子というレッテルを貼られることを密かに期待しているというのに、ままならない。

 今日もいつものように秋穂に誘導されボロがでる。

 まぁ……いいか。それで部活に笑いが生まれるきっかけになるなら悪くない。


 どうせ私の位置づけは今日も明日も今後も、きっとしばらく変わらないのだから。

今後は徐々に作品が増えていくと私自身期待しております。


それではまた、お会いできることを祈りつつ。

by暇人

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