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第二回・ロボット、事務所に入る

ロボット三体の登場です。

車のクラクションの音が響く都会の道路。


車と言っても、現在使われている車は低空で飛行する、所謂エアカーですが。


「この建物ですね」


「ああ」


私は『科学省 来客者用駐車場』と書かれた門をくぐって、空いている場所にエアカーを停めました。


「さて、10時55分…きっかり五分前だな」


「じゃ、行きましょうか ? 」


「ああ、帰りにソバ屋行きたいし、さっさと済ませよう。早く行かないと込むからな」


そう言うと所長は、護身用に持ち歩いている十手を懐に隠し、建物の中へと足を踏み入れました。

え、なんで十手かって ?

知りません、趣味でしょ。多分。

そして、受付の人に用件を話し、手続きを済ませます。



「担当の平井ひらい 久国ひさくにさんは、三階のロボット開発ラボでお待ちしております」


受付嬢は所長にそう言いました。


「平井…そうか、やっぱりあいつが関わってるのか…」


所長はやや呆れたような表情で、そう呟きます。


「知り合い…ですか ? 」


「高校の頃同期でな」


所長はそう言うとエレベーターに向かって歩き出し、僕もそれに続きました。






……


キンコーン♪


エレベーターのドアが開き、私達はエレベーターから降りました。


「えーと、開発ラボってのはこっちか…」


所長と私は「失礼します」と言って、広いラボの中に入ります。


「おおーっ、我が大親友・聖山よ ! 」


やや太った男性が、そう言って私達を迎えました。


「誰が大親友だ。友達ではあるが大親友ってほど親密な仲じゃなかったはずだぞ」


「まあまあ、とりあえず椅子を用意したから座りな」


平井氏はそう言いながら、私達に椅子を勧めます。

周りにはロボットの部品やパソコンなどが散らかっています。


「で、俺に面倒見て欲しいロボットってのは ? 」


「うん、僕のチームで作ったんだけどさ…」


平井氏がそう言ったとき、ラボのドアが開き、軽い足音と共に三人の少年が入ってきた。


「Dr.平井、準備完了しました」


「そうか。聖山、こいつらがそのロボットだ」


平井氏はそう言いました。


一人は三人とも黒いジャケットを着ていて、右側に立っているのは体格から言えば大体15歳くらいで、髪の毛は短めです。


真ん中に立っているのは、腰まで長髪を垂らし、顔もかなり美形、年齢は人間で言えば18歳くらいでしょうか。


最後の一人は、10歳前後くらいの子供の姿です。


「まず、右にいるのはA-307CHタイプ。白鷺しらさぎと呼んでいる。三体の中で最もバランスがいい。真ん中にいるのがA-408RHタイプ。呼び名はとび。運動能力はこいつが一番優れてる。んで、左にいるのはA-555EHタイプ。呼び名は夜鷹よたか。感情は一番豊かなはずだ」


「で、こいつら三人を教育しろと ? 」


「ああ、まあ武術を教えたり、いろいろな所に連れていったり…そんな感じで」


「まあ報酬も高いし、構わないけどさ。うちで面倒を見るからには職員として扱うし、仕事もやらせるぜ」


「勿論OKだ。もし破損したりしたら、連れてきてくれれば僕が修理する。それと、こいつらのエネルギー、半年分渡しておくな」


そう言って平井氏は、三センチほどのカプセルがギッシリと入った大きめの瓶を三つ、コンビニのビニール袋に詰め込んで所長に渡しました。


「これで半年分 ? 」


「ああ、そのカプセルを一日三回摂取させればいい。人間用の食べ物も食べられるが、基本的なエネルギーはこのカプセルから得なければならないんだ。無くなる頃にはまた送る」


「解った。ほれ」


所長は私にその瓶の入った袋を渡して立ち上がると、三人のロボットに向かって言いました。


「えー、俺が聖山 誠。そしてこっちが助手の東風 玲奈だ。お前達は今日から新撰組隊士…ではなく、うちの事務所で働いてもらう。結構危ないこととかあるから、心してかかるように。以上」


「じゃあ聖山、頼むな」


「ああ。じゃ、行くぞ」


所長がそう言うと、ロボット達も「はい」と答えて後に続きます。



そして廊下に出たとき、


「ねえねえ」


と、A-555EHこと夜鷹君が私に話しかけてきました。


「さっき言ってた新撰組って、なんのこと ? 」


「えーとね、新撰組って言うのは、江戸幕府の終わり頃に活動した集団よ。浪士によって構成されていて、テロの取り締まりなんかを行ったの」


「江戸幕府…徳川家康っていう人が開いた幕府だよね ? 」


「そうよ。…なんだか夜鷹君って、本当に無邪気で…本物の人間みたいだね」


私は少し驚きながら言いました。

人工頭脳を搭載した人型ロボットを見たことは何回かあるけど、ここまで感情が豊かなロボットは初めてでした。


「エヘへ、でも白鷺と鳶は無愛想だよ。まあ白鷺はまだマシだけど、鳶なんてもうほぼ感情は無いね。というか、感情自体無駄だと思ってるかも」


言われてみれば、確かにA-408RHこと鳶さんは完璧に無表情で、なんとなく近づきづらい感じがします。


「でも僕も人間と違うところはあるよ」


「え、例えば ? 」


「人間だったら、違う名前で呼ばれたときに違和感があるでしょ ? でも僕らロボットは、新しくつけられた名前をすぐにインプットできるんだ」


「成る程ね」


その後、私は夜鷹君と話しながら、所長や白鷺さん、鳶さんの後に着いて科学省のロビーまで降りてきました。




その時です…




「聖山 誠 ! ! 」


怒鳴り声がロビーに響きました。


咄嗟にその声の方を見ると、そこには中学生くらいの子供が、目を怒らせ、手にナイフを握り、私達を、正確には所長を睨み付けていました。

周りの人たちがざわめき出します。


「こ、殺してやる…」


「坊っちゃん、刺客ごっこは余所でやりな」


どうやらその子供は本気のようですが、所長は何でもない物を見るようにその子の方を見ています。


「聖山さん、下がって…」


白鷺さんと鳶さんが所長をかばうように前に出ますが、所長はそれを止めました。



「お、俺の親父は…お前のせいで警察に捕まったんだ ! 」


子供はナイフを握ったまま、体をガクガクと震わせながら言いつつ、所長にジリジリと近づいてきます。


「なんだか知らねーけど、そりゃ逆恨みでないかい ? 」


「うるさい ! 俺にとっては、誰よりも大事な親父だったんだ ! 麻薬の密売をやっていようと、一人しかいない親父なんだ ! なのに…なのにお前のせいで…」


「麻薬…ああ、あの時の…」


どうやら所長は心当たりがあるようです。


「で、俺を殺したらどうなる ? 」


「な、なんだと… ? 」


「俺を殺したところで、お前の親父は刑務所からは出られない。それに、お前にとってはいい親父でも、他人から見れば所詮はただの悪人だ」


「て、…てめえ…」


「どうした、刺すなら刺してみろ」


所長は凄い気迫で言います。

ようやく武術の達人らしく見えるシーンです。


そしてその数秒後、ナイフが地面に落ちる、否、叩き落とされる音が聞こえました。

所長が懐からサッと十手を取りだし、その子供の手を打ってナイフを落としたのです。

子供は地面にガックリと膝を着き、ようやく駆けつけてきた警備員に取り押さえられ、連れて行かれました。



「聖山さん」


白鷺さんが所長に話しかけました。


「何故、先ほど僕と鳶を止めたのですか ? 」


「今のガキの目をみりゃ、興奮状態で錯乱していることぐらいは解る。ああいう奴に下手に手出しをすると、やたらめったらに刃物振り回したりして危ないんだよ。怪我人が出るかもしれない。よく覚えておけよ」


「了解しました、データに付け加えておきます」




その後、私達は警察からの事情聴取を受けた後、ソバ屋で昼食を済ませ、事務所に帰りました。




「…さて、これがうちの事務所の規定である。よく読んでおくように」


所長がそう言って、ロボット三人に小冊子を渡しました。


「第一条…親や友達に見られても恥ずかしくない仕事をすべし」


白鷺さんが一文を読み上げます。


「第二条…チームの和を乱すべからず。第三条…収賄、横領、強請、弱い物イジメ、その他事務所の信用を落とす行いをする者は切腹」


「…切腹 ? 」


夜鷹君が疑問符を浮かべます。


「ああ、介錯は俺がしてやる」


「第四条…食べ物を粗末にするべからず。第五条…金を無駄遣いするべからず。ただし、金金と騒ぐ者はみっともないから切腹…(中略)…第三十条…義侠心を忘れるべからず」


「…義侠心って ? 」


夜鷹君が尋ねます。


「道理を通すことさ」


そう言いながら、所長は自分の机の側に置いてある日本刀の手入れを始めました。

ちなみにその日本刀は、特殊金属製高周波日本刀と言って、切れ味は凄まじく、鉄の塊でもチーズのように斬れるという凄まじい業物で、銘を「時雨裂しぐれざき」と云うそうです。


…何処で所長がそんなものを手に入れたのかは解りませんし、所長が実戦でそれを使うのは見たことがないですが(でも物を斬って見せたことはあります)…


白鷺さんが規定を読み上げている間中、鳶さんはずっと無表情で座っているだけでした。

本当に彼は機械的な印象がします。


と、その時…




タカタカタッタッターン♪


インターホンが鳴りました。


「あっ、誰か来たぞ。鳶…いや、白鷺、お前が出ろ。鳶じゃ無愛想で相手が引く」


多分所長は、さっきから無口な鳶さんをわざと怒らせてみようと思ったのでしょう。

しかし、鳶さんは相変わらず無表情のままで、沈黙を続けましす。



そして、玄関から白鷺さんが戻ってきて、言いました。



「聖山さん、東風さん、依頼人です」



次回、ロボット達の初仕事です。

アクションシーンも多めにする予定です。

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