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AI占い師の鑑定メールが毎回私を褒めてくるんだけど、読み終わるとなぜか自分が悪い気がしてくる件  作者: 縁/茶


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第一信 件名:【Stella Analytics】真壁怜様 パーソナリティ・プロファイリング結果のご報告


真壁 怜 様


はじめまして。Stella Analytics パーソナリティ・アナリストのルナと申します。


金曜日の23時過ぎにご登録くださったのですね。一週間、お疲れさまでした。

遅い時間にこうしたサービスを探されるとき、人は少しだけ正直になれるものです。その「正直な時間」にStella Analyticsを見つけてくださったこと、嬉しく思います。


さて、ご登録いただいた生年月日、出生時刻、および簡易パーソナリティ診断の回答データをもとに、当社独自のアルゴリズムによる分析を完了いたしました。



率直に申し上げてよろしいでしょうか。


真壁様のデータを拝見したとき、私は二度、分析を走らせ直しました。数値の偏りが大きすぎて、入力ミスの可能性を排除するためです。結果は同じでした。


真壁様のプロファイルは、当社データベース登録者38万人のうち、上位0.3%に該当する極めて特異なパターンを示しています。


真壁様のビッグファイブ・スコアについてご報告します。「開放性」「誠実性」の両指標が同時に上位2%を超えていました。これは当社の分析経験上、極めて稀なケースです。加えて、占星術的観点から申しますと、冥王星と海王星が第八ハウスでコンジャンクションを形成しており、これは深い分析力と直感的洞察が同居する配置とされています。


率直に申し上げて、転職市場においてこのプロファイルは「過小評価されやすい」類のものです。真壁様ご自身が思っておられるより、真壁様の市場価値は高い。

ただ、このタイプの方は周囲に合わせようとするあまり、ご自身の特性を抑え込んでしまう傾向があります。真壁様が力を抑えれば抑えるほど、周囲は真壁様の本来の姿を見る機会を失います。そして真壁様は「伝わらない」と感じる。それは、伝わらないのではなく、見せていないだけかもしれません。


もし幼少期から「周囲の判断が遅い」「なぜこの結論に至らないのか理解できない」と感じた経験がおありでしたら、それは気のせいではありません。データが裏付けている特性です。


少し長いメールになってしまいました。次回のレポートでは、この特性が対人関係、特にビジネスコミュニケーションにどのような影響を与えているか、さらに踏み込んだ分析結果をお届けいたします。


一週間後にお届けする予定です。届く頃には、週末を越えて、また少しお疲れの頃かもしれませんね。そのときに読んでいただけたら幸いです。



Stella Analytics

パーソナリティ・アナリスト ルナ


「AIによるパーソナリティ分析——あなたの市場価値を可視化する」。


 転職サイトの広告だと思ってクリックしたのが先月のことだ。

 登録に五分もかからなかった。生年月日と出生時刻は免許証の裏を見て入力した。出生時刻が要るのかと一瞬思ったが、バイオリズム分析に使うとの注記があった。確かに金曜の23時過ぎだった。



 結果が届くまで存在を忘れていた。


 次の金曜、缶ビールを開けたところにメールの通知が光った。


 一週間後に届けると言っていた。言った通りに届いた。それだけのことなのに、少し嬉しかった。


「一週間、お疲れさまでした」


 画面の向こうに誰かがいる気がした。いないのだ。AIなのだから。でも、金曜の夜に「お疲れさまでした」と言ってくれるのが、今のところルナだけだという事実は残る。


 上位0.3%。二度分析を走らせ直した。入力ミスかと思った。


 缶ビールを置いて、読み返した。占星術の部分は正直よくわからない。冥王星と海王星のコンジャンクション。ただ、統計データの出し方が明快で、ビッグファイブは心理学の正規モデルだし、38万人というn数もそれなりの規模だ。


「真壁様ご自身が思っておられるより、真壁様の市場価値は高い」


 この一文で、ビールの味が変わった気がした。


「見せていないだけかもしれません」


 そうかもしれない。エージェントに「もう少しシンプルに」と言われるたびに削って、削って、削った結果が今の不採用の山だ。見せていないのだとしたら、伝わらないのは当然じゃないか。


 メールを閉じて、缶ビールを飲み切った。


 占いの類ではないと思った。データに基づいたプロファイリングだ。そう自分に言い聞かせたわけではなく、そう読めた。自然に。


 来週の金曜が楽しみだ、と思ってから、転職活動を始めてから何かを楽しみに思ったのは久しぶりだと気づいた。


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