義雄3
ひすいと名乗った少女は、たたたと小走りで近づくと、義雄の手を取って、鳥居の奥の方に引いていった。
義雄はあたふたとついていった。
二人は、小さい本殿の裏手の縁に並んで腰かけた。
人気が無いわりには、固められた土の上はきれいに掃き清められていて、ところどころ小さい雑草が地面にしがみついていた。
狭い空地の向こうには、木が生い茂っていて、人家からかなり隔たっているようだ。
こんなところに入り込んだのは初めてで、いけないことをしているのではないかと義雄はどきどきした。
しかし、ひすいに注意する気にはなれなかった。
もう放してしまったひすいの手の感触と温度が、義雄のてのひらに生々しく残っていた。
義雄は、ぎゅっと手を握り込んだ。
「わたしたち、いとこなのよ。
母方の」
「母方?」
義雄は、眉をひそめた。
ママは、自分の家族のことをあまり話さない。
実家に帰ったことさえない。
義雄が小学校低学年のころだったか。
夏休みに祖父母の家に帰省するという友だちがうらやましくて、帰宅してから、おじいちゃんの家に行かないの、とママに聞いたことがあった。
ママは、不意をつかれたような顔をして、しぶしぶつぶやいた。
「おばあちゃんは早くに亡くなって、おじいちゃんは再婚したの。
だから、あまり帰れないのよ」
「なんで? 親子なのに?」
心に浮かんだ疑問を、義雄はそのまま口に出した。
ママが辛そうな表情になったから、それ以上は聞けなかった。
いとこ、ということは。
おじいちゃんの再婚相手の、子どもの子ども?
義雄が首をひねっていると。
「よしおさんのお母さんの、お姉さんが、わたしのママなの」
「じいさんの再婚相手に、連れ子がいたってこと?」
「まあ、そうね」
「それが、きみのママ?」
「そう」
「ママたちが姉妹だから、いとこ同士?」
「そう」
理解できたことに、義雄はとりあえずほっとした。
バカだと思われたくない。
それから義雄は、すばやく考えた。
血はつながっていない。
つながっていたとしても、いとこなら結婚だってできる。




