表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

幸子5

 白米やみそ汁にも箸をつけているのを横目で確認してから、ごくさりげなく、本当に目立たないようにさりげなく、自分の席にも料理を並べる。


 座りかけて、千切りキャベツにかけるドレッシングを忘れていたことに気づく。

 さっと立って、冷蔵庫を開け、ドレッシングを義雄の前にそっと置いた。



「待つなよ」


 義雄の声を、久しぶりに聞いた。

 ざらざらとした、中途半端な高さの声。

 いつの間にか声変わりが進んだのか、まるで見知らぬ男の声のようだ。


 その声にどきりとしたせいか、言われたことの意味が、幸子は一瞬わからなかった。


「え?」


 義雄は、いらいらした様子で続けた。

「待つなって、言ったろ? 待たれたら、迷惑なんだよ」



 幸子は、当惑した。

 このくらい、待つうちには入らない。


 待つというのは、もっと、あてどなく、長く苦しいことだ。


 帰ってくるのがわかっていて、一緒に食事することを楽しみに、針仕事をしながら過ごしているのは、幸子にとっては、待つことではない。



「でもまだ、七時だし、このくらい、ママは何でもないのよ。

一緒に食べた方がおいしいでしょ?」


 しかし義雄は、顔をしかめて怒鳴った。

「待たれるのは、いやなんだって! さっさと先に食べてろよ!」


 整った顔立ちの義雄が顔をしかめると、迫力がある。

 まだあどけなさの残る、中学二年生の息子の爆発に、幸子は圧倒される。


 頭がいい男の子は、女にはわからない、難しいことを考えているのかもしれない。

 幸子には理解しにくい理屈でも、きっと義雄なりに、整然とした理屈なのに違いない。

 ような気がする。


 だから、幸子はいつも、負けてしまう。



「わかったわ。よっくんの言う通りにするわ。

よっくんの気持ちを考えずに、ごめんなさいね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ