幸子3
たまった衣類を見返していたある日、幸子はふと、これで何か作品を作ったら、いつも手元に置いて眺められると思いついた。
近所にパッチワークキルトの教室があるのは知っていた。幸子は思い切って、そこに電話をかけた。
週一回、何年かは通った。
大体できるようになった頃、幸子は教室をやめた。
主婦たちの、中身のない、上っ面だけの世間話に笑って見せることに、疲れたのかもしれない。
誰もかれも、幸せなくせに。
他人の方が自分よりも幸せなのではないかと、戦々恐々としている。
やたらに自慢したり、お世辞に包んで必死に探りを入れたり。
針先を動かしながら、ハサミをきらめかせながら。
どうでもいいことに血道を上げる女たち。
幸子は色や柄の組み合わせを考え、布に型紙を待ち針で留める。
それから、慎重に三角や四角や丸など切り取っていく。
布にハサミを入れる瞬間は、いつも緊張する。
これは、できたばかりの大きい手芸品店に、義雄と行って、義雄に選ばせた布だ。
ポケット口は別布にして、かわいい半ズボンを縫った。
義雄は気に入って着ていたけれど、釘かなんかに引っかけて、お尻が大きく破れてしまった。
繕うよりは新しいのを縫った方が早かったので、別の布で同じデザインのを縫ったけれど、義雄はいつまでも、あの半ズボンはどこ? と聞いていたっけ。
この通園バッグは、二年間ずっと義雄と一緒に通園した。
今日は行きたくないと駄々をこねた時は、恐竜さんと一緒だよとなだめて行かせた。
帰りにはにこにことバスから降りてきて、付き添いの先生に大きく手を振ってサヨナラしていたっけ。
どの布地にも、縦糸と横糸のすき間に、義雄との時間が織り込まれている。




