表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

幸子3

 たまった衣類を見返していたある日、幸子はふと、これで何か作品を作ったら、いつも手元に置いて眺められると思いついた。

 近所にパッチワークキルトの教室があるのは知っていた。幸子は思い切って、そこに電話をかけた。



 週一回、何年かは通った。

 大体できるようになった頃、幸子は教室をやめた。


 主婦たちの、中身のない、上っ面だけの世間話に笑って見せることに、疲れたのかもしれない。



 誰もかれも、幸せなくせに。

 他人の方が自分よりも幸せなのではないかと、戦々恐々としている。


 やたらに自慢したり、お世辞に包んで必死に探りを入れたり。

 針先を動かしながら、ハサミをきらめかせながら。

 どうでもいいことに血道を上げる女たち。






 幸子は色や柄の組み合わせを考え、布に型紙を待ち針で留める。

 それから、慎重に三角や四角や丸など切り取っていく。

 布にハサミを入れる瞬間は、いつも緊張する。




 これは、できたばかりの大きい手芸品店に、義雄と行って、義雄に選ばせた布だ。

 ポケット口は別布にして、かわいい半ズボンを縫った。


 義雄は気に入って着ていたけれど、釘かなんかに引っかけて、お尻が大きく破れてしまった。

 繕うよりは新しいのを縫った方が早かったので、別の布で同じデザインのを縫ったけれど、義雄はいつまでも、あの半ズボンはどこ? と聞いていたっけ。



 この通園バッグは、二年間ずっと義雄と一緒に通園した。


 今日は行きたくないと駄々をこねた時は、恐竜さんと一緒だよとなだめて行かせた。

 帰りにはにこにことバスから降りてきて、付き添いの先生に大きく手を振ってサヨナラしていたっけ。



 どの布地にも、縦糸と横糸のすき間に、義雄との時間が織り込まれている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ