翡翠2
あいつが来ている時は、いい飼い主ぶって、ミルクを猫かわいがりするくせに。
エサやりも、トイレシーツの交換も、散歩も、一回もしたことない。
ミルクがトイレに失敗した時でも、翡翠が帰ってくるまでそのままにしてある。
この十年、翡翠は朝早くから起きて、ミルクの散歩とエサやりをしてきた。
少しゆっくり寝られるのは、雨の日だけだ。
今日のご飯は何にしようか。
翡翠は、冷蔵庫を開けてみた。
弁当か何か買ってきたらよかったのだけど、ミルクがお腹を空かしているのではと気になって、そのまま帰って来てしまった。
冷蔵室も冷凍室も、いっぱい、いろいろ入っている。
またママが凝った料理を作ろうとして、高い材料を買いこんだのだ。
結局途中であきらめて、外食したり、仕出しを頼んだりするくせに。
ポルチーニなんて、どうやって使えばいいのかわからないけど。
ようするに、キノコよね。
キノコと、ソーセージと、変わった形の尖った野菜をソテーすることにする。
できあがったソテーに、缶から出したスープを温めて、レトルトご飯で夕食にする。
「いただきます」
はしを取り上げると、お気に入りのクッションに寝そべっていたミルクが、薄目を開けて、また閉じた。
リモコンでテレビをつけて、食べ始める。
寂しくなんか、ない。
ミルクがいるから。
ママやあいつが一緒の食卓よりも、ずっとおいしい。
よしおは、ママと目を合わせないようにして、ママの手料理を食べているのだろう。
うまいともまずいとも言わず。
しかめっ面で。
翡翠は、ふふっと笑う。
いまだにわたしのことを、勝手に中学生と思い込んでいるみたいだけど。
いきがってみたり、赤くなったりするわかりやすい義雄の様子を思い出して、また翡翠は笑う。
背伸びしちゃって。
中二病のお子ちゃまが。
たぶん、義雄は自分のことを異性として好いているのだろう。
何にも知らないお子ちゃまのくせに。
かわいそうに。




