義雄6
次の日から、義雄は情報クラブに行くことをやめた。
学校が終わると、さっさと帰り支度をする。
帰りがけに神社に入り込み、一周してみる。
今日もいなかった、とがっかりしては、いや、忙しいのだろう、明日こそは、と思い直す。
時間が合わなかったのかもしれない、と思っては、鳥居に寄りかかってしばらく待っていたりした。
ひすいの学校はどこなのだろう。
聞いておけばよかった。
おれは、なんて間抜けなんだ。
いとこなら、ひょっとして、じいさんと一緒に住んでいるのかもしれない。
ママの出身地は大まかには知っていたが、N区、といったところで、いったい何軒家があるのだろう。
ひとりで祖父の家を尋ね歩く勇気は、義雄にはまだなかった。
それに、家を探し当てたところで、見つかったら、ママに連絡がいくだろう。
その時、ママに何と思われるか。
寒さをこらえて神社の石ころを蹴りながら、うじうじと思い悩む日々。
さすがにもう、見込みがないのかもしれない、とあきらめかけたある日。
なかば投げやりに、いつもの習慣で、ちらっと鳥居に目をやると。
白い手が、ひらひらと手招いていた。
思わず駆け出しかけて、義雄は恥ずかしくなった。
なんだ、オレは。
まるで、主人を見つけて、喜んで駆け寄る犬みたいじゃないか?
ことさらにゆっくりと、面倒くさそうに近寄っていく。
「よお」
だるそうに上げた手を、小さい手がぱしっと打った。
驚いて見開いた義雄の目をのぞき込むと、ひすいはくすくす笑いながら、義雄の手を握って、奥に導いた。
「寒いなあ」
何を言ったらいいのかわからない。
責めたくはあるが、責めるなどしたら、いかにも首を長くして待っていたようだ。
「当たり前でしょ、冬だし、夕方だし、外なんだから」
ひすいは、容赦ない。
「わたしの方が、待っていたんだから、寒かったのよ」
知ってる。
じっと立っていると、足先からじんじん冷えてくるのだ。
スカートなら、一層寒いだろう。
「ほら、だから、これ」
ひすいは、スカートのポケットから、カイロを二つ、取り出した。
「一つ、あげる」
義雄は、手のひらの上で、カイロをじっと見つめた。
スカートのポケットの薄布一枚を隔てて、ひすいの太ももに触れていたもの。
やけどしそうだ。




