義雄5
夕方近くなってきて、冷たい風が木々を揺らした。
義雄は、横目でひすいを盗み見た。
ひすいは、体育座りをして、スカートのひだに顔を埋めていた。
スカートの裾と白いソックスの間にあらわになった、なまっちろい脛。
義雄は、あわてて、目をそらせた。
そらせたが、白く張りのある脚の残像がなかなか消えない。
「それで?」
長い沈黙にたえかねて、とうとう、義雄は尋ねた。
「なに?」
ひすいが、斜めに顔を上げた。
義雄は、足の方に視線をやらないように気をつけながら、ひすいの額のあたりを見た。
なに、って。
なにって言われても。
目的があって召喚したんじゃないのか?
悪者を退治してください、とか。
世界を救ってください、とか。
なにか、召喚した理由ってもんがあるだろう?
「なにか理由があって、ぼ…ぼくに会いに来たんじゃないの?」
オレ、の方が良かったかと、義雄はちょっと後悔した。
どちらにするか、迷ったのだが、なにしろ初対面だから。
でも、ちょっと強引な男の方が好みなら、間違いになる。
ひすいは、頭を傾けたまま、義雄ににいっと笑いかけた。
「理由なんて、要るの?」
義雄は、再び雷に打たれた。
理由がない?
じゃ、なんで?
「ちょっと、会ってみたかっただけ。
それが、理由、なのかな」
ひすいは、照れたようににこっと笑うと、縁からさっと下りて、スカートがめくれていないか、ささっと前後を確認した。
それから、置いていたカバンを取り上げ、底を払った。
「じゃあ、さよなら」
義雄は、いろいろとついていけなくて、あせった。
あたふたと立ち上がると、ひすいの前に立ちはだかった。
「また、会える?」
口をついて出た言葉に、義雄は我ながら驚いた。
つい、手で口元を押さえる。
「そう、かもね?」
鳥居の向こうに走り去る背中に、三つ編みがぽんぽん跳ねるのを、義雄はぼんやりと見送った。
別れ際の、はっとするほど妖艶な笑み。
義雄は耳まで赤くなっていた。




