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元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている。  作者: 甘酢ニノ


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#43 完璧なアイドルに、笑顔で宣戦布告された件

 翌朝。

 登校途中に類の後ろ姿を見つけて、ひまりは追いかけた。


「類くん!元気になって、よかった!」

「ああ……」


 類は言葉に詰まる。

 礼を言おうとしても、恥ずかしくて口ごもっていた。

 しかし、ひまりは類の顔を見ながら考え事をしていた。


(燐ちゃんの薬、本当に効いたんだ……)


 たった一錠飲んだだけでここまで回復するとは、ただの薬ではないのかもしれない。あるいは、類やRINがただの人間ではないのか。


(元気になったならなんでもいいけど、でも、類くんも燐ちゃんも、全然普通に見えるんだよね……)


 ひまりが類の顔を黙って見つめているせいで、類の顔が徐々に赤くなっていく。

 ひまりはそれに気づかず思考を続けていた。


(燐ちゃん、嘘をつく子じゃないし、言ってたことは全部本当なのかな……でも、わたしが知ってる類くんは、優しいし頼りになるし、それは変わらないな……)


 突き刺さってくるひまりの視線に耐えきれず、類は赤くなった顔で俯いて手で隠した。

 それを見ていた春藤が、彼女なりの普通の声量で呼びかける。


「ひまりが兎山くんを泣かせてる!!」


 春藤の声に、周囲の生徒がみんな振り返った。


「ばか!言うなよー面白いところだったじゃん」


 春藤の隣で眺めていた周が残念そうに言った。

 ひまりはようやく類の異変に気づく。


「え?!類くん、ごめんね!ちょっと考え事してて、めっちゃ顔見てた!」

「イケメンだなぁって思って見てたの?」

「帆夏ちゃん!ちが……っ、わないけど、別のこと考えてたの!」

「いいなーイケメンの彼氏ー!わたしも欲しいよー!」

「か、彼氏じゃないよ!!!」

「フジ、お前それ、俺がいるところで言うなよ!」

「……もういい」


 類は素っ気なく言うと、3人を置いて歩き出した。


「類くんー!ごめんね」


 ひまりが追いかけると、類はちらりとひまりを見る。

 そして、目を逸らして小さく呟く。


「ありがとう」

「え……?」


 ひまりが、驚いて類を見つめる。


「昨日のこと、本当に助かった」


 類が何とかそれだけ言うと、ひまりは、嬉しそうに笑った。


「……うん!」


 ひまりは頷いて、類の横に並んで歩いた。


 -----


 その夜。

 Re⭐︎LuMiNaの生配信ミニライブ。


 終了後に人気投票最終発表がある。

 今日はきらりではなく、司会者がいてステージ後ろの大きな画面に順位が発表されていた。


『それでは、第5位から!!第5位…… 橘ゆめ!』


 ゆめの名前と票数が画面の1番下に表示される。

 ゆめは悲鳴を上げて泣き始めたが、明らかに嘘泣きだ。

 人気投票の最下位になった程度で落ち込むタイプではない。


(よかった……最下位じゃない……)


 ゆめには悪いが、ひまりはほっとしていた。

 中間発表では4位だったが、二回連続最下位になる可能性もあったし、そうなった時はひまりは流石に落ち込むだろう。


『第4位……RIN!!』


 RINはスポットライトが当たると、いつもの無表情のままぺこりとお辞儀をした。

 マネージャーからそうしろと言われていたからだ。


 ひまりは最下位を回避して安心したせいで、人気投票と別のことを考え始めてしまう。


(燐ちゃんに後でお礼言わないと……類くん元気になったよって。燐ちゃんは、あんまり喜ばなさそうだけど……)


 燐が類を嫌っているのは勘違いではなく、過去に色々あったからというのが理解できた。

 無理に仲良くさせようとは思わないが、出会った時に攻撃をしない程度に和解できたらいいな、とひまりは考える。


(でも、どうして燐ちゃんは、アイドルになったんだろう……)


 RINは真面目に練習に参加しているが、アイドルを楽しそうにやっているわけではない。

 RINが言った過去が本当なら、他にもっと能力を活かして大金を稼ぐことができる仕事があるように思えた。


(それは……類くんも同じだよね……)


 周囲から歓声が上がって、ひまりにスポットライトが当てられた。

 人気投票の発表中だった、と慌てて後ろの画面を見上げる。


 そこには、

 2位、ひめさきひまり

 1位、きらり

 と並んでいた。


 票数もごくわずかな差だ。

 集計時期が少しずれていたら、ひまりが逆転していたかもしれない。


 ひまりはふっと冷たい予感がしてきらりを見た。

 きらりはいつもの笑顔を配信用カメラに向けていて、ひまりの視線に気づいて顔を向ける。

 アイドル用の笑顔のままにっこりと微笑まれて、いつもなら安心して嬉しくなるところなのにさっと血の気が引いた。


(これは、ヤバい……かも)


 -----


 ライブ終了後、控室。

 きらりが駆け寄ってくる。


「ひまちゃん!おめでとう!」

「きらり、ありがとう……その……」


 ひまりは笑顔で答えながら、ごめんね、と続けそうになるのを堪えた。

 きらりはそれがわかっているかのように、ひまりの背中を優しく叩く。


「ひまちゃんが頑張った結果!ひまちゃんはわたしのライバルってこと!謝るとこじゃないでしょ!」

「う、うん……!」


 きらりの言葉にひまりはようやく安心できた。

 そして、2位の嬉しさがじわじわとこみ上げてくる。


(類くんに報告しなきゃ!5位から2位だもん。さすがに褒めてくれるよね!)


 ひまりは、胸が高鳴った。


(すごいねって、言ってもらえるかな……それとも、頑張ったねって……)


 ひまりは、類の顔を思い浮かべた。

 類の無表情が、少しだけ緩む瞬間。


(類くんも、喜んでくれるかな……)


 ひまりは、そう思うと嬉しくなった。


(早く、会いたい!)


 ひまりの笑顔を見て、きらりも嬉しそうに笑う。

 そして、笑顔のまま、ひまりに囁く。


「ひまちゃん、類くんわたしが貰っていい?」

「……え?」


 ひまりは、耳を疑った。


「わたし、類くんのこと、欲しくなっちゃったの」

「き、きらり……?」

「だから、ひまちゃん。ごめん、貰うね!」


 きらりが無邪気に笑う。

 その笑顔はアイドルとして完璧で、1位と2位の決定的な差を感じさせるものだった。

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