2話 健康生活崩壊の危機
前回のあらすじ
健康的に世界から消えた
「う、うーん……あれ、ここは?」
凛華さんを中心に私達を突如飲み込んだ謎の眩い光。
それは凛華さん達三人と私を含めた十人を飲み込んだ。
そして、気付くと私達は知らない場所に立っていた。
「ここは何処? って本当に何処なの!?」
周りを見ると、西洋のお城にありそうな白くて広い部屋が広がって、下には赤い絨毯が敷かれている。
そしてなんと、銀色の鎧を着た兵士みたいな人、ローブを纏った魔法使いみたいな人達に囲まれていた!
奥には玉座もあって、白い髭を蓄えて冠を被った王様っぽい人までいるし訳がわからないよ!
「勇者様が……十人!?」
「どういう事だ?」
「まさか失敗か?」
何故か囲んでいる人達も動揺している。
どういう事だろう?
「静粛にせよ」
玉座にいる王様の声が響くと、周りが一気に静かになる。
そして。
「異世界の勇者よ。私はこの国の王ゴルド。よくぞ召喚に応じてくれた」
そう言って王様人が手を広げてこっちに歩いて来るとと、凛華さんがその人の前に立つ。
「待ちなさい。私達はまだ何が起きているか把握してないわ。まずこの状況を説明なさい」
流石生徒会長!
こんなわけ分からない状況でも冷静!
そこに痺れる憧れる!
「おっと、すまなかったな。わかった、まずは状況を説明しよう」
そこから王様、じゃなくてゴルド王が説明してくれる。
ここは剣と魔法が実在する異世界“ミアスミア”と言って、魔王軍と戦う為に地球から勇者を召喚したみたい。
で、本来一人を召喚するつもりだったけど近くにいた人を巻き込んじゃったんだって。
でも、ミアスミアに召喚された事で勇者を含めてこの世界の言語の習得と、特別なスキルに目覚てるらしい。
で、地球に帰る為には魔王軍を倒さないと行けないんだって。
うーんよくある分かりやすい設定だね!
「全くベタな設定だな……現実に起きた事を除けばだが」
「え、青井っち現実認定早すぎない!? 陽葵はまだ半信半疑なんだけどー!?」
うーん心なしか青井くん顔がにやけているような……やっぱプロゲーマーとしてワクワクしちゃうところがあるのかな?
でも魔王軍に勝たないと帰れないって困ったな。
私は健康第一の平和主義者だから戦うなんて嫌だしね。
でもそんなこと考えてたら話が進んでて、スキルを確認しようって流れになっていた。
「では、まずは私からスキルを見て頂戴」
「はい、では手をお出し下さい」
凛華さんが鑑定士というに言われて手を出すと魔法陣が浮かび上がり、凛華さんの手が光り始める。
すると、手の甲から光が出てゲームの画面みたいな説明文が表示される。
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スキル 『伝説の勇者』
魔を討ち払う聖剣を扱えるスキル。
熟練の剣技や魔法も扱える。
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「国王様! このお方が勇者様です!」
「おお、やはり! その美しさと凛とした威厳のあるお姿! やはりそなたこそが勇者であったか!」
ゴルド王とその臣下のみんなが凛華さんに頭を下げる。
ていうかやっぱり凛華さんが勇者だったんだね!
そんな気はしてたけど!
「ふ、私なら当然の結果ですわね。……早速試して見ましょうか。来なさい! 聖剣!」
そう言いながら凛華さんが天高く右手を上げると、眩い光が放たれて、凛華さんに手に神々しいオーラを纏った剣が現れた。
凄い! カッコいい!
「なるほど、これが勇者の力というわけですね」
スキルの力かな?
初めて持つ筈なのに、凛華さんはまるで熟練の剣士みたいに聖剣を華麗に振ってみせる。
その美しい姿に私を含め全員が見惚れて、歓声が部屋に響いた。
「おお、何と美しい剣舞だ勇者殿!いや、勇者凛華殿!」
ゴルド王の絶賛に機嫌が良くなったみたいで、凛華さんは微笑みを浮かべて答える。
「いいでしょう。元の世界に帰るため、そして何よりこの世界のため私は魔王を討ち倒すとこの場で誓いましょう」
凛華さんの宣言に再び歓声が響く。
まあ無理はないよね。
私だってそっち側だったら絶対キャーキャー言ってたもん。
その後もみんなのスキルを鑑定する作業は続いて、青井くんは光と闇以外の属性を扱える『大賢者』。
陽葵ちゃんは最上級の聖属性魔法を扱える『大聖女』という結果が出た。
「ふ、大賢者か……悪くない」
「颯斗っちも陽葵もイメージぴったりじゃん〜!」
「いや、お前のどこに神聖さがある?」
「ひど〜! 陽葵は太陽みたく明るい感じでみんなを導けそうじゃん〜!」
そんな青井くんと陽葵ちゃんのお喋りに耳を傾けてると、いつの間にかみんな終わって私が最後になった。
鑑定士の人に手を出すけど、凄い緊張する。
健康に気を使ってると言っても貧弱じゃないってくらいの身体能力だし、そもそも痛いのは嫌だから絶対にタンクとのスキルとか来ないで欲しい!
ドキドキしながら浮かび上がったスキルを見るとそこには……
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『健康上手』
どんな環境でも健康な生活を送れるよう改善できる能力。
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「こ、これは一体……」
「や、やったーーーーーー!!!!」
鑑定士の人そっちのけで天高くガッツポーズをする。
いやだって仕方ないでしょう!
健康のスキルだよ!?
私にピッタリすぎるじゃん!
しかも絶対戦いに向いてない系スキルじゃん!
間違いない! これは勝ち確!
でも。
「おい、あの少女は何故戦いに向いてないスキルで喜んでいるんだ?」
「勇者様と共に戦う気はあるのだろうか?」
「え?」
いつの間にか周囲の人々から疑惑の視線を向けられてたことに気づく。
一体なんで……ってああああそうだよ! ここの人たち魔王と戦うために私たちを呼んだんじゃん!
戦いに向いてないスキルで喜んでたらそりゃおかしい目で見られて当たり前じゃん!
とにかく言い訳をしなくちゃ!
「いや、これは違くて私は……!」
「ふ、戦う気が無くて当然ですわ。何故なら彼女は私達の敵なのですから」
そう言って凛華さんが私の言葉を阻む。
いや、嫌われてるのは分かってるけど敵とまで言わなくていいじゃん!
「勇者様の敵だと!?」
「まさかこの少女、魔王側なのでは!?」
「なんと! その様な邪悪なものまで呼び寄せてしまったとは……!」
あ、まずい。
周囲の人たちまで私を敵認定し始めた。
しかも邪悪とか言われ始めてるし!?
「助けて!」って顔でクラスメートを見ても何も言ってくれない。
それどころか自業自得みたいな目で見られてる!?
なんで? ってああそうじゃん!
私ただでさえ嫌なやつって思われてる上に朝自殺詐欺(?)したって事になってるんだった!
そんなの誰も庇ってくれるわけないじゃん!
「ふ、哀れだな。日頃の行いというやつだ」
「そうだね〜。ていうか戦う力あっても久里っちと一緒に戦いたくないし〜。
お城でおとなしく指を咥えて陽葵達の活躍を見てたら〜?」
青井くんと陽葵ちゃんがそう言ってくる。
いや、でもお城で待ってるだけでいいなら別に問題は無いような……。
「いえ、それだけでは生ぬるいわ。ゴルド王、私は戦いが終わるまで彼女を牢屋に入れた方が良いと思います」
「え」
「ふむ、分かった。この者を牢屋に入れよ!」
凛華さんの提案に王様が乗り、私は二人の兵士に腕を掴まれ連れていかれる。
「ええええええええ!?」
……そして、私は地下の薄暗く狭い鉄格子で阻まれた牢屋に入れられる事になった。
うわー!? なんでこんな事にーー!?