11話 魔王様に責任を取らされる!?
前回のあらすじ
魔王様を健康のためひん剥いた
「魔王様……昨日は大変な失礼を働いてしまい申し訳ありません……」
「ほう? では具体的に昨日どんな失礼を我に働いたのか言ってもらおうか」
そう言って玉座から正座している私達を睨みつけて来る魔王様。
どうしよう、かなりやばい!
めちゃくちゃ殺気向けられて体の震えが止まらない!
「え、えっと……その……」
あのアンナちゃんですら縮こまって言い淀んでる。
うー……私がやり始めたことだし、ここは責任とって私が答えるしかないよね。
「えっと……まず魔王様を脱がせました!」
「ああ……我の静止を無視し、あられも無い姿にしてくれたな。それで?」
「洗濯桶にぶち込んで体全部を洗いました!」
「そうだな、我の魔王として……いや、男としての尊厳を奪ってくれたな。その後は?」
「お風呂に入れてサンドウィッチをもぐもぐごっくんさせた後、眠らせて服を着せてベットに運びました!」
「そうだったな。まるで幼子のような扱いを受けたんだったな……で、何か言うことは?」
「……健康になれて良かったですね!」
「死ね」
「ぎゃあ!?」
キュインッ! っと魔王様の指先から黒いビームが出たと思うと、顔のすぐ横を掠めて床を斜めに貫通して穴を開ける。
うわやばい!
魔王様本当にキレてる!
まあ、普通に考えたら魔王様の大事なものを色々奪っちゃってたし、怒るのも無理ないよね。
でも……一方的に怒られるのは納得いかない!
「そもそも魔王様が悪いんじゃない!」
立ち上がり魔王様に向かって指を突きつける。
「ほう……?」
「久里! これ以上魔王様を怒らせるのは……」
「アンナちゃんは黙ってて!」
「な……!?」
アンナちゃんの静止を振り切り、前へ一歩踏み出し魔王様と対峙する。
魔王様の殺気が私に集中して、体が震えて今にも倒れそう。
だけど、怯むわけにはいかない。
ここは……私の譲れないところだから!
「全体的に不健康すぎるよ! まずなんなの!? あの体の汚さと体臭は!? 昨日も言ったけど魔王じゃなくて掃き溜めの王だよ! 自分の臭さで人間滅ぼそうとかでも考えてるの!?」
「なんだと……!」
魔王様の目が鋭くなり、殺気が更に増す。
でも私は言葉を続ける。
「目も充血してクマだらけだったし肌もカサカサだったし、お腹はぐーぐーうるさいし一体どんな生活してるの!? 休む時は休んで、しっかりご飯を食べなきゃダメでしょう! そんなんだからアンナちゃんにもあっさり裏切られるんだよ!」
「……」
(おい止めろ! こっちにヘイトを向けるな!)
魔王様の目がアンナちゃんの方に向かう。
アンナちゃんが小声で何か言ってるけどそれは無視!
「私達はそんなだらしない魔王様をしっかり正してあげたんだから! 確かにちょっとやり過ぎたかもしれないけど、目が覚めた時すごい気分よかったでしょう?」
「……ああ、そうだな。あんなすがすがしい朝を迎えたのは初めてだった」
「でしょう!」
魔王様が認めて私はドヤ顔する。
「だが、すぐに昨日のことを思い出し最悪の寝覚めへと変わったがな」
「その件に関してはごめんなさい」
トラウマを植え付けちゃったのは流石に悪かったね。
反省。
「さて……言いたいことはそれで終わりか?」
「えっと……大体?」
「そうか、ならば……」
魔王様が玉座から立ち上がり、殺気を出したままこっちに向かって歩いて来る。
身の危険を感じて咄嗟にフローラルスプレーを手に出現させる。
だけど、一瞬で魔王様は間合いを詰め、私の腕を強く掴みスプレーを奪う。
「あ……!」
「二度も同じ手が通じると思ったか?」
魔王様に首を掴まれ、あまりの苦しさに呻き声を上げながら持ち上げられる。
「う……うう……」
「魔王様! どうかお許しを!」
「邪魔をするなアンナ」
魔王様の赤い目が光ると床から黒い鎖が現れ、魔王様を止めようとしていたアンナちゃんを縛り付ける。
「ぐ……力が抜け……」
鎖に特殊な効果があったのかな。
アンナちゃんが膝からうつ伏せに倒れる。
「人間に絆され我を裏切りおって。貴様は一つの“欠点”を除けば実力があり、忠誠心も高く評価していたのだがな。こいつの何が貴様を変えた?」
「……変わったつもりはありません。ただ、久里の言う事も一理あると思っただけです」
「……こいつが我を害するとは思わなかったのか?」
「……正直に申しますと、そんなことは考えもしませんでした。何故なら久里は……ただの健康バカだからです」
「……」
アンナちゃんは魔王様をまっすぐ見つめながらそう言う。
そして、魔王様はもう一度私を見ると、無言で首を掴む手を離し、アンナちゃんの鎖を消滅させ、玉座へと戻っていく。
「ゲホッゲホッ」
「久里、大丈夫か?」
「ふ……ふふ」
「どうした? 何をにやけている?」
「だって、似たような事昨日やったアンナちゃんが心配するのなんかおかしいって思って」
「はぁ……そんな口が叩けるなら大丈夫そうだな」
ちょっと和やかなやりとりをした後、魔王様が玉座に座り再び口を開く。
「人間、問おう。貴様にとって健康とは何だ?」
「そんなの決まってるじゃん。命だよ!」
「それは病にかかる事が無い我々魔族にも重要だとでも言うのか?」
「当然!」
胸を張ってそう答えると、魔王様は少し口角を浮かべた後こう言った。
「到底信じられんがまあいい。その心意気に応えお前達の罪は不問にしてやろう」
「「え!?」」
思わずアンナちゃんと顔を見合わせる。
つまり助かったって事!?
やったー!!
「但し、責任は取ってもらう」
あ、やっぱそれで終わりなんて上手い話は無いよねー……。
でも責任ってなんだろう?
もしかして昨日魔王様の大事な部分を直視して洗った事?
え、じゃあもしかして……!?
「私達に魔王様の嫁になれって事!?」
「何だと!? それならアタシは大歓迎……!」
「やはり死ぬか貴様ら?」
「「すいません」」
うん、流石にそんなぶっ飛んだ話あるわけないよねーあはは。
「人間、貴様の名は久里と言ったな」
「うん、そうだけど……」
「では久里。責任をとってお前には今日から魔王軍へと入り四天王として働いてもらう」
「え?」
聞き間違いかなぁ?
ある意味お嫁さん以上にぶっ飛んだ事を言われた気が……。
「あ、あの魔王様……今久里を何にすると申しました?」
「何度も言わせるな。四天王として魔王軍で働いてもらうと言ったのだ」
「「えええええええええ!?!?!?」」
聞き間違いじゃなかった!!
一体どういう事なのー!?




