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10話 魔王様を健康にせよ!

前回のあらすじ

魔王城は健康に悪かった

「今すぐ脱いで下さい!」


 この言葉に唖然とする魔王様とアンナちゃん。

 自分だってヤバいこと言ってる自覚はあるけどもう止まれない!


「人間……貴様何を言って?」

「脱げって言ったんです! 脱がないなら私が脱がしますよ!」


 動かない魔王様に痺れを切らし、強引に服を掴んで脱がそうとする。


「ええい何をする!? 止めろ!」

「うわ!?」


 魔王様に振り払われ、床を何回転も転がるほど吹き飛ばされる。

 でもそんなんじゃ私は止まらない!

 立ち上がり、魔王様に向かって全力疾走する!


「まだまだー!」

「無駄だ」


 冷静さを取り戻したようで、いつの間にか魔王様の表情が不敵な笑みに変わっている。

 確かに魔王様相手に勝てるわけがない。

 でも私には禁忌の方法がある!


「くらえー! フローラルスプレー全力噴射ー!!」


 直接顔に振りかけるとリラックスしすぎて意識を失う魔法の香水、フローラルスプレーを反動で手がガタガタするくらいの出力で魔王様に向け噴射する!


「目眩しか? そんな事をしても意味は……な……」


 魔王様がスプレーを受けると体がふらついていき、そして仰向けに倒れる。

 よし、成功!


「貴様……我に一体何を……」


 う、思いっきりスプレーを受けたはずなのにそれでもまだ意識がある!?

 アンナちゃんも一撃KOしたのにさすが魔王様……!


「ぐ、何だこれは……意識があるのに……体が動かせん」


 あれ、体を動かすことは出来ないのかな?

 睡眠不足だったみたいだし、もしかして金縛りにでもなった?

 それならチャーンス!!


「ふっふっふー……」

「ま、待て……何だその笑みと手の動きは……!?」

「魔王様……かーくーごー!!」


 手をワキワキしながら魔王様の服を一気に脱がしにかかる!


「や、止めろ……! アンナ、何を見ている……!?こいつを止めろ……!」


 魔王様に言われハッとしたアンナちゃんが私を止めるため羽交締めにして来る。


「久里! お前魔王様に何をしている!? いい加減にしろ!」

「何言ってるのアンナちゃん! 魔王様がこんな不健康な体でいいの!?」

「だから私達は不健康でも病気にならないと何度も言ってるだろう!」

「それとこれとは別だよ! アンナちゃん! 魔王様の臭いを嗅いでみなよ!」

「それがどうし……う!?」


 アンナちゃんが手を離し鼻をつまみながら後ずさる。

 ほらやっぱり!


「これで分かったでしょう?」

「ち、違う!? これは最近お前の清潔空間に慣れていただけの話で……」

「つまり魔王様の体臭はゴミレベルってこと?」

「え、いやちが……」

「違くないでしょう! これじゃあ魔王じゃなくて掃き溜めの王だよ!」

「久里! お前魔王様に向かってなんて事を! 確かに最近魔王様の透き通るような白い肌を見ていないがそこまで言う事は……あ」

「え、白い肌?」


 アンナちゃんが口を滑らせ『しまった!』と言う顔をする。

 あれ?

 魔王様は黒人かと思うような茶色の肌をしているよね。

 え、もしかしてこの色って全部汚れ?

 日焼けとかじゃなくて……本当に全部汚れ……?


 首をカタカタと回転させながら魔王様を見る。


「な、何を見ている……?」

「……シナキャ」

「……は?」

「キレイニシナキャーーー!!!」

「うわーー!?」


 その時どんな顔をしてたか分からない。

 けど魔王様が恐怖の叫びを上げるくらいだから相当ヤバい顔をしてたんだろうね。

 まあそんな事はいいとして、魔王様の服をポイポイとリズムよく脱がしていく。

 そして全裸の魔王様完成。


「よし、次! 来て、『バブルウォッシュバレル!』」


 どんなしつこい汚れも落とす魔法の洗濯桶を出現させる。


「アンナちゃん! 魔王様を入れるの手伝って!」

「……えーい! こうなったらもうヤケだ! 魔王様申し訳ありません! アタシも綺麗な魔王様の方がいいです!」

「アンナ貴様……!! うわぁ!?」


 アンナちゃんと協力して魔王様を洗濯桶の中にバシャンと放り込む。

 残念だったね魔王様!

 もうアンナちゃんはこっちの味方だよ!


「よし、協力して洗って行こう! アンナちゃんはこっちのタオル使って!」

「分かった! ってちょっと待て。体の汚れを落とすなら風呂じゃないのか?」

「こんな汚れまくった体じゃいきなり風呂なんてダメだよ! まずは洗わなきゃ! えーい!」


 まずは魔王様の背中から洗剤水を染み込ませたタオルでゴシゴシと二人で洗っていく。

 洗った箇所はみるみるうちに真っ白な姿を取り戻していき、成功を確信した私とアンナちゃんは魔王様の頭、角、腕、足、お尻を全部を洗う。

 そして次は前!

 顔も胸も腕も足も……そして。


「後はここだけだね」

「ゴクリ……流石魔王様だ。大きい……」


 残るは男の大事な部分。

 

「お、おい待て……そこは我の神聖な……!」

「大丈夫! 弟が小さい時お風呂で何回も洗ってるから!」

「サキュバスとして我慢出来ません! 魔王様失礼します!」

「や、止め……ああああああああ!!」


 魔王様の情け無い悲鳴が響く。

 でもしょうがない!

 清潔にするためだもん!

 魔王様ちょっと白目向いてるけど全部ピカピカになったから問題なし!


「次行くよ!『クリーンホットバス!』」


 魔法のバスタブを出現させ、今度はそこに魔王様を入れる。


「な、何だこの風呂は……とても暖かく落ち着く……」


 魔王様の引き攣った顔がどんどん緩んでいく。

 結構ご満悦な様子だ。

 肌の潤いとツヤが戻っていくし、シャワーを浴びせると綺麗な銀髪が光って見える。

 でもこれだけじゃ終わらない。


「アンナちゃん、収納魔法だったっけ? それでお昼ご飯出して」

「え、あれか? 分かった」


 アンナちゃんが何もない空間から木のバスケットを取り出す。

 中にはスキルで新鮮にしたお肉と野菜を挟んだサンドウィッチをいっぱい詰め込んである。


「さあ魔王様、あーんしてね」

「ふざけるな……これ以上思い通りになど……」

「む……。だったら強引に開けちゃうもん!」


 魔王様の口と顎を掴んで力づくで口を開かせる。

 サンドウィッチを無理やりねじ込み、顎を動かしモグモグさせる!


「もがもがもが!?」

「はいごっくん! よし! アンナちゃん水!」

「これだな!」


 木のコップに入った清潔な水をゴクゴクと魔王様に飲ませる。

 そして再びサンドウィッチ。

 この繰り返しをバスケットの中身が空になるまで続ける。


「これでお腹いっぱいになったでしょう! 仕上げにもう一回フローラルスプレー!」

「ふ、ふわぁ……」


 お風呂でリラックスした状態では流石に我慢できなかったようで、魔王様は夢の世界へと誘われる。

 ぐっすり眠って寝不足も解消間違いなし。

 後は体を拭いて、服を着せてこれでOK。


「よーしこれでミッションコンプリート!」


 ゴミの体臭と茶色い肌、寝不足に空腹と最悪な状態だった魔王様は爽やかな匂いに包まれたピカピカの体に!

 お腹も満たされて健やかな表情でぐっすりと眠っている。


「後はベットに寝かせなきゃね」

「扉を守っている魔族に運ばせよう」


 その後、扉の外にいた魔族の人を呼んで魔王様を運んでもらった。

「一体何があったんだ?」とめちゃくちゃ聞かれたけど、「疲れが出たんだろう」とか言ってはぐらかしてた。

 まあ説明しにくいしね。


 そして、魔王城を離れ拠点に戻った私達は……。


「いやーいい仕事をしたねアンナちゃん! アンナちゃん?」

「はぁ……。勢いとはいえ……アタシはなんて事を……」


 なんかテーブルに頭を突っ伏している。

 さっきの事すごい後悔しているみたい。


「何言ってんのアンナちゃん? きっと魔王様も喜んでくれるって!」

「何でそんなお気楽なんだ!? くそ……なんでアタシはあの時こいつの味方をしてしまったんだ……」

「まあまあ、過ぎた事は考えてもしょうがないって!」

「お前が言うなー!!」


 そんな感じでかなり怒られた。

 もうアンナちゃんは心配性だなー。

 きっと明日ご褒美くれるくらい喜んで……くれると思った時期が私にもありました。

 次の日、魔王城に呼び出された私達は……。


「…………」

((ガクガクブルブル))


 玉座に座った魔王様から物凄い殺気を向けられた状態で正座するハメになっていた。

 あ、これ今日が私の命日かな?

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