1話 健康的に登校するよ!
自作長編2作目です。
適当に頑張って行きますのでよろしくお願いします
ピピピピ、ピピピピ。
リズムのいい目覚ましの音が部屋に鳴り響き、私の朝は始まる。
「ふわぁ……朝だー」
時刻は現在朝六時。
眠気の残る目を擦りながら、ベットから起きてカーテンを開けると、朝の日差しが私の意識をはっきりさせる。
「よし、今日も張り切って行くぞー!」
私は斉藤 久里!
健康的な十七歳の女子高生!
二階にある部屋から階段を下りて、まずは鏡がある洗面所で顔を洗う。
バシャバシャと水をかけ、タオルで拭くと黒い瞳がぱっちりと開く。
日本人らしい黒い髪をツインテールにして纏めたら、次はジョギングだ!
緑のジャージに着替えて、靴を履いて外に出る。
「よーし今日も走るぞー!」
元気に近くの公園の並木道を4周回る。
朝の爽やかな空気と程よくかく汗が気持ちいい。
「いやー今日もいい天気だなー」
そう思いながらジョギングを終え、汗をタオルで拭く。
今の時刻は六時四十分。
大体予定通り!
ブレザーの制服に着替えてエプロンを巻くと、キッチンに立つ。
うちは母子家庭でお母さんは忙しい。
昨日夜勤だっから今も寝ている。
だからご飯を作るのは私の役目!
「今日はどんな献立にしようかなー♪」
ちょっと悩んだ結果、ご飯とベーコンエッグにサラダ。
それを作る事にする。
キッチンの隅からいつもの踏み台をサッと用意する。
私の背は小学校高学年くらいしか無いから、これが無いと作業しづらいんだよね。
ジュージューとベーコンを焼いていると、匂いに釣られて起きたのか、小学生の弟が起きて来る。
「姉ちゃんおはよう」
「おはよう! もうすぐ朝ご飯できるから待っててね!」
弟はリビングの椅子に座ると、まだ眠気が取れてない顔でこっちを見る。
「朝から元気だなー姉ちゃんは」
「ふっふっふ、健康が取り柄だからね!」
「背は俺より低いのになー」
「背の話は禁句! 後低いと言っても並ばなきゃわかんないくらい僅差だよ!」
「でも俺はこれからまだまだ伸びるからなー」
「お姉ちゃんだってまだまだ伸びるんだから!」
「へー」
もう十七歳なんだから無理だろって目で見て来るけど……私は諦めない!
胸もぺったんこだけど……せめてBくらいまでは行ってやるんだから!
まあそれはそれとして、朝食の用意を進める。
お昼の弁当も並行しながら作り、完成したらコップに二人分のミルクを注いで、朝食と共に持っていき椅子に座る。
「ではいただきます!」
「いただきまーす」
箸で卵を割ると美味しそうな黄身が流れる。
ベーコンに絡め、ご飯の上に乗せて口に含むと、ジューシーないベーコンと濃厚な卵の味。
そしてご飯の甘みがベストマッチし、頭が幸せでいっぱいになる。
うん、今日も会心の出来だね!
「姉ちゃんの作るご飯は本当美味いよなー。でもサラダはちょっと……」
「ダメだよ! バランスよく食べないと、姉さんみたいに健康な体になれないぞ!」
「姉ちゃんはちょっと健康にうるさすぎだと思うんだけどなぁ」
「良いじゃない! 健康で悪いことなんてないんだから!」
「ちぇー」
不満を言いつつも弟はちゃんとサラダを完食する。
平和ないつものやりとりだ。
「ご馳走様でした!」
「ご馳走様でしたー」
食べ終わったら次は片付け!
カチャカチャカチャと音を鳴らしながら食器を洗い、お母さんの分をラップに包み冷蔵庫に入れる。
その後しっかり歯磨きをして、これで朝の準備は完璧!
部屋に戻り、持ち物を確認!
忘れ物なし!
時間は七時五十分!
「よし、じゃあ行って来まーす!」
「いってらっしゃーい」
私の高校は弟の小学校よりも遠いからいつも先に出る。
背が低いから地面に当たらないよう気をつけながらカバンを持って登校!
途中暴走トラックが来て事故に巻き込まれるなんてこともなく、通ってる高校に到着!
「みんなおはようー!」
教室の扉をガラガラ音を立てながら開けて挨拶する。
既に登校していたクラスのみんなはこっちを一瞬向き、そして無言で視線を戻す。
(うん、いつも通りだね)
その反応に何も言わず、私は自分の席に向かう。
教室の後ろにある窓際の席。
そこが私の席なんだけど、机の上には何かが置かれていた。
(これって……花?)
綺麗な花瓶に入った花だ。
何でこんなところにあるんだろう?
……なんてね。
これの意味を知らないほどバカじゃない。
(珍しいな……こんな直接的な嫌がらせをするなんて)
無言でその花を取ると、とりあえず後ろのロッカーに置いて席に座る。
何となく察することができると思う。
私は……“いじめ”にあっているんだ。
「あれ〜? 久里っち生きてたの〜?」
そう声をかけてきたのは、可愛い赤いサイドテールをしたクラスの同級生朱音 陽葵ちゃん。
天真爛漫でムードメーカーでもあるクラスの人気者。
みんなのアイドルっぽい存在みたい。
背は標準だけどそれでも私より一頭身高い。
「もー、生きてるよー! 誰がこんな事したんだろうね?」
「え? 自分で置いたんじゃないの〜?」
そう言って、陽葵ちゃんはニヤニヤしながらその黄色い瞳で私を見る。
「え? 何でそうなっちゃうの?」
「だって久里っちってさ、イタズラ好きでしょう〜? 噂で聞いたよ〜。中学校の頃クラスを巻き込むイタズラしてよく怒られてたってさ〜」
陽葵ちゃんがそんな事言うけど、私は中学どころか、この高校でもそんなことした覚えは無い。
「ちょっと! それは誤解……」
「貴様……また人に迷惑をかけているのか?」
立ち上がって否定しようとすると、前から青いショートの髪をした背の高い男子青井 颯斗君がやって来る。
メガネを指で押さえながらこっちを見下ろす姿は結構怖い。
おまけに二頭身分も高いから余計に。
「迷惑なんてかけてないって! て言うか青井君、それよりも目は大丈夫?」
そう言うと、青井君は少しクマが出来ている緑色の目をはっきりと開けて答える。
「貴様に心配される筋合いは無い。プロゲーマーとして目のケアは常に万全だ」
そう言いながらいつも胸ポケットに携帯している目薬を私に見せる。
本人も言ってたけど、高校生でありながら青井君はプロゲーマーという凄い人なんだよね。
だからゲーマーの憧れの的だし、クールで見た目がかっこいいから女子にも人気がある。
因みに、メガネは度が入っていないブルーライトカットメガネだったりするよ。
「ちょっと〜、話を逸らさないでよね〜? ていうか颯斗っちの目の話はどうでもいいし〜」
「どうでも……いや、まあそうだな」
あ、大事な目をどうでも扱いされてちょっとショック受けたみたい。
「貴方達、朝から一体何の騒ぎかしら?」
次に来たのは、美しく長いプラチナブロンドの髪を靡かせた高嶺 凛華さん。
大手会社の社長令嬢で、プロモデルもやっている完璧美少女。
高校の生徒会長も務める彼女は全校生徒からの憧れの的だ。
「お、凛華っち! おはよう!」
「高嶺か……おはよう」
「ええ、おはよう二人とも。何があったのかしら?」
二人から話を聞くと、凛花さんはため息をつき、そのシルバーの瞳で私を憐れむかのように見つめる。
「久里さん、貴方の噂は聞いてるけど、まさかこんな悪質なイタズラをすると思ってなかったわ」
「もう、だから私じゃないって! 証拠もないでしょう!?」
「では、貴方がやっていないと言う証拠もあるのかしら?」
「う、それは……」
そんなのあるわけもない。
となると、変な噂が立っている私が否定しても説得力はない。
「久里っち〜? いい加減認めて謝ったら〜?」
「斉藤、とっとと謝って認めろ」
「久里さん、認めて謝るなら生徒会も今回の件は不問にしてあげるわよ」
「……」
三人だけじゃなく、クラス中の視線が「さっさと認めろよ」と訴えかけて来る。
そりゃそうだよね。
クラスの人気者二人と生徒会長。
この三人が私を犯人だと思って問い詰めてるんだもん。
……ここで認めちゃうのはとっても簡単。
この状況からもすぐ解放される。
だけど。
「……ふっふっふ、悪いけど認めないよ! やってない事をやったなんて私は言わないからね!」
「「「「「……!」」」」」
クラス中に響き渡るように大声で宣言する。
軽蔑の視線がクラス中から向けられるけど別にいい。
だって私は”間違ったことはしてない“もん!
「はあ? 久里っち……この後に及んでまだ……」
「もういいですわ。二人とも、行きましょう」
陽葵ちゃんを制止し、そのまま立ち去る凛華さん達。
その事にホッと胸を撫で下ろした時だった。
突如凛華さんの足元から白い光が溢れ出し、それが足元に広がっていく。
「何ですのこれは!?」
その光は近くにいた私を含めた複数人のクラスメートを巻き込んで広がると、眩く輝き出す。
そして光が消えると、私達は教室から……ううん。
この世界から姿を消していた。