『日本改造計画外伝』その拾弐<少子化対策>
「さて、今度は『少子化対策』にしましょう。総理。」
「具体的にどうするのです。総統。」
「その前に1970年代の話です。あの頃第二次ベビーブームがありました。」
「覚えています。日本の様な国土面積が狭い国で人口爆発は好ましくない。
人口を抑制すべきだと言う論調があった事も覚えています。総統。」
「その論調を真に受けて人口抑制した末路が現在ですよ。働き手の不足。
社会保障費を払う人間より、消費する人間の増加。いいことが何もない。」
「では、如何致しましょう。人口抑制を語った学者を処罰しますか。総統。」
「馬鹿々々しい。1970年代に時間素行できようはずもありません。これは未来の為に行うのです。方法は、幾つかありますが、実効性、即効性共に最善手があります。欠点が全く無い訳ではりませんが、一つあります。総理。」
「ほぉ……それは、是非ともお聞かせ願いたい所ですね。総統。」
「簡単ですよ。『生産』すればよいのです。」
「……『生産』……? ですか。総統。」
「そう! 体外受精、通称『試験管ベイビー』です。まず、十八歳から二十九歳の女性を百二十万人、年俸百万円で雇用します。そして、体外受精した受精卵を子宮に戻す。この際、父親の個人情報を伏せておく事、実験の同意書に署名させる事が重要です。更に、教育にも力を注ぎます。とくにストレス、ハラスメントへの耐久力を重要視。真面目にこつこつ働く企業に都合のよい人材を育成します。」
「……まさしく『生産』ですね。しかし、反発も予想できます。総統。」
「反発は、一時の事です。精神的耐久力の高さ、従順さ、真面目にこつこつ働く姿。全て企業にとっては理想的。コスパだのハラスメントだのを口にする社員は、いずれ淘汰される事でしょう。例外は、自分で起業する能力を持つ事のみですね。」
「……成程、一国一城の主となるべきですか。総統。」
「恐らく精神的に強くても、肉体はそうはいきません。いずれ体調を崩して倒れます。そうすれば、労働者を『使い潰した罪』で、経営者を処罰可能です。」
「……成程、むしろ、『撒き餌』ろ言う事ですか。総統。」
「言っておきますが。私の『創作』では、ありませんよ。かつてチョビーもやってました。チョビーの場合、優性遺伝子同士の掛け合わせでしたか。」
「チョビー? 誰です。」
「あぁ……かつてドイツにいたチョビヒゲ独裁者ですよ。総理。」
「あぁ……ですが、よりにもよって『チョビー』ですか。総統。」
「別に問題ないでしょう。『チョビー』ですから。ですが、『チョビー』の自殺後、実験データもろとも研究者も口封じされ、ニュルンベルク裁判でも明らかには、ならなかったそうです。まさしく闇に葬られた『黒歴史』そのものですよ。」
「そう言った非人道的な実験を闇に葬っても死刑を逃れる事能わずでしたね。総統。」
「失敬な、私は『チョビー』とは違います。現在では、体外受精は立派な医療行為。衛生観念に欠陥のあった当時とは、比較になりません。それに私は、より人類の為になる実験をさせています。」
「ほぉ……それは、是非ともお聞かせ願いたい所ですね。総統。」
「それは、『完全試験管ベイビー』……つまり、人体に戻す事無く人工物だけで、完結させます。人工子宮に人口羊水、コンピューターによる完全環境制御も実現。」
「マジですか。現在の技術はそこまで進んでいるのですか。総統。」
「ですから『実験』と言ったのです。いずれ必要になるのです。今から準備すべき。」
「確かにできれば、ビジネスチャンスにも繋がりそうです。」
「とは言え十年でできる話ではありません。今できる事と言えば、児童養護施設の拡充。それ位でしょう。国債から補助金を出すとして、来年からは補助金を拡充させます。では、私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
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