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神様よりもケモミミ

「こっちです~!!」


 酒場で散々騒いだ後、金髪の科学者少女ココロッココに連れてこられたのは入り口から入って右にある扉。その雰囲気のあるシックな木の扉を開ける暗く長い廊下が俺たちを迎えた。外は昼間だったはずだがその廊下は夜の陰に包まれ、窓からは月の光が射している。


 先が見えないな、この長さは一体なんだ?


「それじゃあ行きますよー!!」

「まてまて、なんかおかしくねぇか?」

「はて、おかしいとは?」

「明らかに外から見た大きさと違う!外から見たこの建物はこんな縦に長くなかったぞ!!」

「ああー、それは神様の権能の一つですよ。空間を歪ませてホーム内部に亜空間を作り出してるんです。」


 なるほど、まったく別の空間を繋げ合わせているわけか。


 神の権能とやらの説明は置いておいて、俺はそう納得した。


「この廊下の先に神樹があるんだよー!!」


 久しぶりに来たー!!とカテラがウサ耳を揺らしてはしゃぐ。

 バッドはというと、長い耳が生えた美形の男に連れられ、どこかへ行ってしまった。


 あの見た目はきっとエルフだ。ファンタジーよろしく、異世界ものでよく見る金髪長耳にあの美形。妬ましい限りである。


「神樹ってのは?」

「それはまあ、見た方が早いっすね。はい到着です。」


 長いように見えた廊下は案外そうでもなく、廊下が途切れた先には広い草原が広がっており夜空までがそこにはあった。その空間にひと際目立つそれは、一本の蒼い樹。蛍の光を彷彿とさせるような、多くの蒼く発光する粒子がその木に集まり、流星の残す光の尾に似た蒼い光線がその樹をぐるっと囲んでいる。


「これは、すごいな────。」


 その美しい光景に思わず感嘆の声がもれる。


「でしょでしょ!なんたって神様の宿る樹だからね!!」


 それにカテラは自慢げにその大きな胸を張る。


「けど検査ってのは


「大丈夫ですよジン。検査と言っても想像しているような仰々しいのはしません。ただ神様に診てもらうだけなので。」

「それ、俺が想像してるやつよりよっぽど仰々しいんだが。」

「物は試し!!ほらほら早く始めますよー!!ココロッココは診断結果が気になります(ゆえ)!!はやく!!」

「押すな押すな!何やるかもたいして把握してないんだよこっちは!!」

「いーですから!大丈夫です痛い思いはしないですよ!!たぶん。」


 俺の背を押すココロッココが後ろめたそうに視線を泳がす。 


 多分すんじゃねえか。


「それじゃあご神木に触れてくださいです!!」

「お、おう……。」


 息を呑んでゆっくりとその幹に触れるが────、


「なんも起きねーけど?」


 肩透かしを食らった。


 こう、光がバーッとでたり、それはそれは神々しいおじ様が降臨したりするもんだと思っていただけに若干の口惜しさが残る。


「おかしいです!普通、人が触れたら何かしら反応をされるはずなんすけど。うーん、フーリ様との接続不良っすかね。」


 ココロッココがポリポリと原因不明の事態に頭を掻く。


「やっぱりジンは性格悪いから神様に嫌われちゃったんじゃない??」


 そう言ってこちらを向くカテラの意地の悪い笑みに、ビキッと青筋が奔った。


 人が困ってるのにニヤニヤしやがってこのウサ公!!


「うーん。とりあえず原因がわかるまで診断はお預けっすね!見た感じ体に異常は無さそうですし平気でしょう!!」

「適当っ!!!」


 どうすんだ重大なウイルスとかにこのキューティーボディが侵されてたら!!


「はぁ、そんなに不安ならシスティアに頼んで診てもらいましょう。」


 仕方ないとばかりにココロッココはため息をついて腕を組んだ。


「相変わらずビビりだな~ジンは!ぷぷ~!そんなんだから恋人もいないんじゃないの~?」

「あ?」


 そのくそウサギの嘲笑に俺の堪忍袋の緒が────ブチ切れた。


 元は俺が神様を馬鹿にしたのが始まりだが────、こう茶々をいれられ続けてはもう我慢ならん。それと彼女ができないのは俺が!自分の意思で!!作らなかっただけだ!!!


 そう心の中で叫んだ俺は忍者顔負けの技術で音もなくカテラの背後に回り、抵抗する暇を与えずそのウサ耳を余すことなく堪能する。


「わわっ、なっ何してるのジン!!や、やめえええええええええええええええ!!!!!!」

「おおおおおおおお!!いけませんよジン!!とんでもないセクハラです!!」


 セクハラ上等!こいつには一度お灸を据えねばなるまい!!


「謝るか?」

「謝る!!謝るからああああああああ!!」

「こんなカテラは見たことがありません!!何と言うかすごくセンシティブですよ!!やっぱりもう少し続けましょうジン!!」

「ココロッココまでええええええええええええええ!!!!!」


 静かな光る夜空にカテラの絶叫が響いた。

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