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一掃

 周りを囲むモンスターはこちらを追い詰めるようににジリジリと距離を縮めてくる。


「あちゃ〜、ちょっと話し込み過ぎちゃったかな。え〜っと君、名前は?」

「仁。」

「ジンね、私はカテラ!!よろしく!!」

「よ、よろしく。」


 先ほども見た眩しい笑顔に俺は若干の気恥ずかしさを覚えた。


「よし、ジン!!私が合図したらしっかり"足に"掴まるんだよ!それ以外のところはダメだからね、洗濯大変だから!!」

「俺、汚くないもん!!!」


 お嬢さん俺の扱いが雑では!?


 しかし、そんな心の訴えに反応することなく彼女のライトグリーンの瞳はこちらを囲むモンスターを見据えていた。


「くるぞ!!」


 チンピラの声を皮切りにモンスターが一気に押し寄せる。


「バッド!」


カテラの合図と同時、詠唱とともにチンピラが弓を引くような動作を取るとその型に合わせて水の弓と一本の水の矢が形成された。


「言われなくても分かってんだよ!!穿つ水弓(オー・アーク)ぁ!!」


 引いていた腕を開放。放たれる水の矢。その一本の水の矢は空中で扇状に数十本にも分裂し、前方のモンスターをいとも簡単に貫いた。


「あれは、魔法……。」


 その現実離れした光景に無意識にも言葉がこぼれた。


「カテラぁ!!サボってんじゃねえぞ!!」

「ありがとー!バッド!!後ろは任せて!!」


 水の弓を下ろし雑に吠えたチンピラに、うさ耳をぴょこぴょこ揺らし手を振るカテラ。


 後で触っていいか聞いてみよ……。


 そんなことを考えていると、チンピラの魔法に(おのの)いていた後ろを囲むモンスターたちは、先ほどの水の矢を警戒したのか一塊(ひとかたまり)になって向かってくる。


「ジン!掴まって!!」

「え!おう!」


 カテラの足首を咄嗟に掴む。そしてカテラの顔を見やると、おかしなことに彼女はモンスターの方ではなく上空を見上げていた。


「加護開放『比類なき(エクセプティオ)膂力(トロール)』」


 そう静かに呟き少女は膝を曲げる。直後、大地が落ちた。いや、違う……!俺の体が上空に上がったんだ!!


 一瞬の浮遊感の後、少女の大剣を先頭に俺たちは地面に向けて急降下する。さっきほど味わったものとは別次元の速度と恐怖が俺を襲った。


「おりゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「おああああああああああああああああああ助けてえええええええええええええええ!!!」


 俺の絶叫をお供に、その隕石は群れたモンスターのど真ん中に落下する。響く爆音。粉塵のように巻き上げられた灰。


「ふう。スッキリ〜!」

「気が気じゃなかったぞこっちは!」


 爽快な顔で体を伸ばす少女とは対照的に、地面にうつ伏せで埋もれていた俺は勢いよく顔を上げた。


「まったく、ジンは臆病さんだな~。」

「お前がガサツすぎんだよ。」


 そう言って辺りを見回す。カテラの一撃によってすり鉢状にくぼんだ大地には、団子になっていたはずのモンスターは跡形もなく消えており、代わりに菱形の青く発光する宝石がいくつも転がっていた。


「あの光ってるのは?」

「あれは魔石。魔物からドロップする石で魔道具の動力源だったり武器の素材にだったりに使われてて売ると高いの。汚染区にいる幻血種(クリムゾア)の魔石は特にね。」


 そう言ってカテラは近くの魔石を拾い上げる。


「私たちの仕事はね、2000年前魔女の呪いによって汚染されてしまったこの土地──汚染区の謎を解明して、人が住めるように呪いを浄化する仕事なの。って言ってもまだこの場所も浄化できていないんだけどね。」


 あははと自嘲気味に笑うと、彼女はどこか遠くを見るような強烈に意志のこもった目で魔石を握りしめた。

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― 新着の感想 ―
世界観練られた作品だなぁと思いましたー おもろそうっすー テンションも全体的に高い作品ですし、これらが楽しみっす!
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