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7/10

7 おそろしいのは人間なのです

ぷはーっ、生き返ります。新鮮なお茶です。あ、私はとってもお上品なのでげっぷなんてしませんけどね。気分はぷはーです。仕事終わりのビールです!!当然、飲んだことなんてありませんが!

お腹が空くとナイーブになっていけません。シロちゃん、大復活です!

ギンちゃんにもあげたかったのですがお口がありません。かけるのは何か違いますし。ギンちゃんが欲しいと言っているわけではありませんが、少し罪悪感がありますね。

さっきの人?ならギンちゃんの食べ方がわかるのでしょうか?……食べ方っていうとなんだか猟奇的ですね。ギンちゃんの……えっと食事方法……?気にしない方向でいきましょう。ギンちゃんは大切なお友だち、盟友に変わりありませんし!

さてさて、壁も扉もない所を通って部屋っぽい場所からでます。

前に見たところにそっくりな階段ですね。怖いくらいに同じです。実はループだったりしないでしょうか。だとしても、今回はアテがありますからね。ふふん♪と、鼻歌だって出ちゃいます。


「ギンちゃん、行きましょう。」

上は見ません、振り返りません。赤いぶにょんぶにょんなんて見たくありません。

変な場所に迷い込まないよう前を注視して歩きます。

ペットボトルと袋は邪魔ですが、ポイ捨てはいけません!中身もちょっと残ってますし。

袋をポケットに、ペットボトルもポケットに……はみ出してますが、深いポケットのおかげでちょっと注意すれば大丈夫そうです。

両手は空いてたほうがいいですから!

さて、とんとんとんと階段を下り、三つ目の踊り場です。あっさりです。えぇと、確かここから二段下と言ってたはずですね。記憶力は良い方なので間違いないはずです。

……着きましたのはいいのですが、本当に何かあるんでしょうか。なんの変哲もない壁ですね。さっきもそうでしたし、この塔?はすごく隠蔽が上手な感じです。これから先も隠しルートを見つけるなら全ての壁を叩きながらいくしかないかも知れません、乙女な手が絶対痛くなるやつですね。

さて、コンコンっと壁を叩いてみます。


「へ?」

急に真っ暗になりました。


「ほあ?」

ふわっと足元が頼りないです。っていうか、浮いてる?


「ひきゃああああああ!!??!」

落ちてるううううぅぅぅ?怖い怖い怖い!!?ジェットコースターより遥かに怖いです。落下死待ったなしコース!?

と、過ったのですけど……いつまでたっても下につきません。それはそれでベチャッとケチャップに退化せずに済むので良いんですが。と、いうかいつの間にか風を感じなくなりました。お腹のひゅんっとした感じもありません。間違いなく落ちてはいる……落ちてます?足の裏には感覚はないですけど、風景変わりませんし絶対落ちてるって言えないですね。

足は持ち上がります。下ろせます。空中を歩けちゃったりするんでしょうか。でもちょっと動いて壁に当たってザリザリって削れたりしたらイヤですね。どうしましょう。せめて落ちているのかどうかくらいは分かりたいですね。


「ギンちゃん、いますか?」

ぷにゅんとほっぺたに感触がありました。ほっこり癒やされたところで、勇気を出して前に手を伸ばしてみます。

何にも当たりません。少し前に身体を傾けてみますがスッカスカです。削れる心配はなさそうなのでそーっとそーっと足を出してみます。踏めますね。真っ暗なだけで道があるってことですよね。進むしかない気がします。でも怖いですからちょっとずつ、ちょっとずつ……です。一歩を更に小さくしてすり足気味に歩きます。


「きゃっ」

眩しいです、急にピッカリ、目が痛いです。でも目が潰れたわけじゃないみたいです、朝早くに起きたときみたいに目がしょぼしょぼします。少しずつだけど目が慣れてきます、耳も慣れてきます。よくわからないんですけど、耳にも少しずつ音が聞こえてくる感じなんです。落下で鼓膜キーンってなってたんでしょうか。

そんなことよりも音です、音っていうか話し声です。誰かが居ますね?


「なんだ眩し!?って……女?」

「女……みたいだな。まだおこちゃまって感じだけどよ。」

まだハッキリしないですが二人いて、どっちも男性っぽいです。なんだかちょっと軽い感じでしょうか。ちょっと苦手なタイプかもしれません。


「なぁなぁお嬢ちゃん。」

猫なで声って言うのはこんな声なのでしょうか。ねっとり背中がぞわぞわです。視線もこう……顔じゃなくてもっとちょっと下、体の部分を上から下をジロジロと見ている気がします。


「なんでしょうか。」

気づいていないふりで堂々と対応します。こういうのは臆しても良いことないですからね。

ハッキリした視界で見ると、目の前の男性は二人はだいぶ見た目が違います。一人の顔立ちは日本人でくすんだ金髪、ピアスをいくつか着けていて、テレビで見た深夜に渋谷に居た人っぽいです。もう一人は……国はわかりませんが、外国の人っぽいです。背が高めでがっしりしていてタトゥーが見えます。


「ここの攻略法教えるか、アイテムかだろ?さっさと出してくんね。」

「はい?えっと、なんの話でしょうか。さっぱり分からないんですけれど。」

「そういうの良いからさぁ〜。お嬢ちゃんお助けキャラとかそんなんだろ?それともあれか?お使いクエストキャラか?」

「違いますよ。わたしは普通の人です。」

あぁゲームキャラか何かと思ったんですね。確かにこの塔?はゲームっぽいところがなくもないです。脱出ゲームですね、謎とかないですが。


「んじゃ、アンタじゃなくてそっちのスライムか。」

男性二人の目が、わたしの肩のギンちゃんに向きます。ほんの少しデジャヴです。でも、さっきのお兄さんはこんな風にチラチラ胸に視線を向けてきたりはしませんでした。なんか嫌ですね、一歩だけ下がって……と。


「この子は、ぷるぷる震えるだけの可愛い子ですよ。」

嘘を、つきます。なんか嫌だからって理由です。聖人君子さんからは怒られちゃうかもしれません。でも、ゲームのキャラといいますかギミック、道具扱いされて嫌だったんですよね。ついでにイヤらしい感じの目つきも嫌ですし。とはいえ、どうしましょうか。信じてもらえてる感じではなさそうです。二人はごにょごにょ内緒話を始めていて……聞き取れません。

そもそも、『ここの攻略』ってなんでしょうか。周りを確認すると、それはひと目でわかりました。水です。水があります。まだ室内ですし、壁とか雰囲気は全然変わってないのに、プールのように水が敷き詰まっています。対岸には小さく見えるけれど扉がありますね。とっても遠いです。で、肝心の行き方は……スポーツ選手さんでもギリギリ届かなさそうな距離に小島がありますね。奥まで点々とありそうな感じです。水は横幅はいっぱいいっぱいですから、端を通るズルは無理っぽいですね。これは攻略法が欲しい気持ちもちょっとわかります。


「泳ぐのはできますかね?」

お話し合いは続いているようなので彼らは放っておいて、一人で水辺に近づきます。

水はすごく澄んでいるように見えます。でも奥の方は暗くて見えません。きっととっても深いんでしょう。歩いていくのは無理そうです。屈んで見てみますけど、やっぱり底は見えません。青と青と青です。透明だけど青い色です。ちょっと違和感がありますね。この部屋には青色はないのですけど……底が青色をしているのでしょうか。

気を取り直して、指先をちょっとだけ水に入れます。冷たくも熱くもありません。温水プールくらいですかね、普通です。


「これなら泳げそうですけど……」

あの二人が泳がないのは何かワケがあるのでしょうか。小島は適度にあって休憩もできますし、溺れるのがちょっと怖いですが、準備運動をしっかりすれば大丈夫なはずです。カナヅチって可能性もありますけど……。


「ギンちゃん?どうしました?」

これまで肩でじっとしていたギンちゃんが水に入れている方の腕にきゅっとへばりつきます。そしてズルズルと上に登っていきます、カワイイです。


「えっ?」

急にぐらっと後ろに倒されます。倒れるじゃなくて強めの力でぐっと引っ張られました。ぽふっと背中に当たるのはなんか温くてちょっと硬いですね。床じゃありません。ニヤニヤ顔のさっきの男性の片方が覗き込むように見てきます。この人に受け止められてるっぽいです。


「あぶないぞーってな。」

「お前の方が危ない奴じゃねーか。」

何が面白いのか、ケラケラと笑っています。起き上がりたいけど、両手とも抑えられててうんともすんともいいません。

これはとてもマズいような気がします。仮に乙女な女子高生です。このシチュエーションがとっても危険プンプンなのは知っています。自意識過剰かもしれません。でも、でも、鳥肌が止まらないです。


「このスライムも捕まえとかないとなー。」

視界の端っこで、乱暴にギンちゃんが掴まれます。太い指の間からはみ出して、でも出られないみたいです。痛そうです。


「放してくださいっ。」

私も、ギンちゃんも。そんな思いで言ったのに、彼らはやっぱりゲラゲラ気持ちの悪い笑い方をするだけです。どうしたら……何か方法はないのでしょうか。自由なのは足だけです。でも、蹴れるような位置には居ませんし、蹴っただけじゃダメな事くらいはわかります。うぅ……思いつきません。ギンちゃんも助けなきゃいけないのに。じんわりと視界が滲んできます。怖くて怖くて、ぎゅっとまぶたを閉じてしまいます。涙が横を伝う感じがしました。

ブクマや星5、はげみになります!

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