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5/10

5 壁を抜けても普通ですが、適当に歩くと変な場所です

壁を抜けると、そこはゆきぐ……部屋でした。色は少し薄いでしょうか。それとも目の錯覚でしょうか。

どちらでもいいですね。今は!壁地獄を抜けた事に喜びましょう。


「疲れましたねぇ、ギンちゃん。」

『ぷーあぷー』

赤いスライムも追いかけて来ませんし、幸先が良いですね。次の行き先も、一本道ですから迷う心配もありません。

えぇ、目の前にはまた階段があるのです。階段部屋というやつです。上下に階段はありますが……下りでいいと思います。だから一本道ですっ。

……ここにいたくはありませんし。

ちらりとさっき私が出てきた方向を見るとそこには壁がありました。頑張って開けたはずの通路なんてありません。

この壁、赤い巨大なむにゅっスライムじゃないですよね?

……考えたら怖くなってきました。しゅばばっとその場所を後にします。

トントントンっと階段を下っていきます。振り返らないように、でも耳を澄ませて物音を聞き取ります。

今の所、私とギンちゃんの音しかしません。

三回ほど踊り場を超えて更に下っていきます。


「同じような見た目なのでわからなくなりそうですね。」

『みゅ!ゆ!』

それにしても……喉が渇きました。ちょっとツラいです。水を確保したいです。ご飯もですね、死活問題です。お家の冷蔵庫が恋しいです。

嘆いていてもしょうがないので足はしっかりと動かします。


「えっ!?こ、こ、こ、ここはどこですか!?」

ふっと気付けば、視界が緑でした。

びっくりして鶏になっちゃいましたが、私はススっと冷静に戻ります。大丈夫です。怪我をしたわけでも、嫌なものが近くにいるわけでもありませんからね。

落ち着いて周囲を見渡すと、大きな葉っぱに、ぐるぐるのツタが目に入ります。丈夫そうな幹に、色とりどり取りの花っぽくない花とか色々です。振り返っても似たような感じの景色ですね。

森……いえ、ジャングルみたいなイメージでしょうか。ムシムシはしていないので過ごしやすくはあります。


「外なんでしょうか?違う気もしますけど……」

でも、植物があるならお水はありそうです。もしかしたら、バナナとかヤシの実とかあるかもしれません。ヤシの実だと割れなくて困りますけど。

一応、後側をじっと確認をしてみますが、今まで歩いてきた階段なんて微塵も見当たりません。蜃気楼っていうんでしたっけ?

でも、その辺りの植物に軽く触ってみますけど、ちゃんと触れます。


「不思議ですねぇ。」

『ふゆゆー』

怖い動物とかも居そうな雰囲気ですが、ここでじっとしていても仕方がありません。出口とお水と、何か食べ物を求めてレッツらゴーです。

ポケットのギンちゃんを指でこちょこちょして、出てきたら肩に乗せてあげて一緒に進んでいきます。

獣道みたいにちょっと開けたところを進んでいますが、それでも植物とかは生えています。でも歩きにくさはあんまりないです。葉っぱに足が触れてる感じなのにガサゴソみたいな音がほとんどしません。

ちょっと不気味です。

喉が乾いてなければ歌でも歌って誤魔化したいところですが……体力温存は大事です。

それにしても、上を見ても天井が見えないくらいに草木が生い茂っていますが暗くないです。っていうか影が無いんですよね。おかげで近いのか遠いのかもよくわかりません。

あ、私の影はありますよ。手を振ると、私と同じように手を振ってくれるかわい子ちゃんな影です。ギンちゃんのぷにゅーんな影もあります。


「変なのは良いんですが……お水はないんでしょうか。出口もですけど。」

植物を噛んだりしたら水出てくるかもですが、それはちょっと避けたいです。

見通しが悪いので目標物もなくて、困ってしまいます。

似たような風景であっても全く同じ風景……というか植物はないので違うところを歩いていると思うんですが……。っていうか、似てるのにわかるほどに違う植物っていうのも怖いですね!?

気づかなかったことにしましょう。

それはそれとして、適当に進んでますがこっちで良いんでしょうか。


「歩いていけばどっかに着くとは思うんですが……」

せめて壁とかあると良いんですが……見えない透明な壁とかでもいいので。

てこてこ歩いていると、にょーんとギンちゃんが目の間に伸びてきました。

肩には感触がありますし、でもギンちゃんの端っこがあるので伸びたで良いんだと思います。


「あ、危ないですよ!」

肩から落ちないようギンちゃんをそっと両手で包んで、持ち上げます。伸びたお餅みたいな身体?が、すぐにぷるぷるまるまるに戻りました。


『ゆゆーゆゆー』

ギンちゃんが手のひらの上で左から右へとズリズリ移動します。そして端まで来るとぴょんっと跳んで左手に来て、また右手へと移動します。

何かを伝えようとしてくれてるに違いありません。


『ぷー……』

「ギンちゃん、危ないですよ!」

びよーんと、手のひらの上から右側に向かって伸びていきます。

落ちそうです。伸びた先を掬いたいですけど、ギンちゃんを両手で持っています。片手でも放したらそれこそ落ちてしまうかもしれません。

でもギンちゃんは落ちずに居ます。伸びるのはやめましたが、右側にぐぐっとなったままです。

さっき見たような形です。あの時は床の上でしたけど……。

そう考えるとギンちゃんともっと仲良くなれてるのかもしれません。嬉しいです。


「右に曲がって進むんですか?」

『ぷゆ!!』

元気良く返事したギンちゃんが元のぷにまるな形に戻りました。

正解ですね!

ではでは右に曲がって進んでいきましょう。

ちょっと木や大きな植物が多そうだと思いましたが、最初の多そうなところを超えるとまたちょっとだけ開けた場所に出ました。

と、思ったらキィって音がします。前……ではなくちょっと横の大木からです。金属音……じゃないですね。木製?あれです、よくあるドアの開く音です。

当然ですが、開くドアなんて見当たりません。枝のしなった音とかでしょうか。でも、今まで音ってほとんどなかったんですよね……。


「行ってみますか?」

ギンちゃんに尋ねるとぷるるんと身体を揺らします。多分、行きたいという事ですね。

ブクマや星5、はげみになります!

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