10 戻ってきたのかもしれません
目覚めるとそこは…………見慣れた天井でした。
がばっと身体を起こすと、正真正銘どこからどう見ても自室が広がっています。少し固めながらベッドの感触も慣れたものですね。
「自分の部屋……」
多分、ですが。
見慣れた本棚の本は記憶の通りに並んでいますし、ラックにかかった制服や服も私の物に見えます。
そろりとベッドから降りて、机やタンスを開けてみますが見覚えのある自分の物があります。まじまじ見ると……もっと乙女要素を増やすべきかもしれません。
「ですよね?」
普段であれば断言出来る……いえ、何も考えずに受け止めているような事に、疑いを持ってしまいます。
確かめるには、どうしたら良いでしょうか。
名探偵シロちゃんの脳細胞をびびっと回転させます。
うーんと、そうですね。まずは超可愛くて優秀な助手が必要ですね。
「ギンちゃん、いますか?」
少し大きめの声で呼びかけてみます。
周りを見ても、銀色の影は見えません。
「夢だった……とかですか?」
夢オチはちょっとがっかりです。怖かったですし、帰れた事にはホッとしてますけど…………ギンちゃんは可愛かったですからね。それに、お約束ごとを放り投げた気分になるのもいただけません。
でもでも、いる気がするんですよ。だって、今も『ぷゆぷゆ』ってとっても小さくですが聞こえてきます。
「もしかして、ここですか!?」
バっと掛け布団をめくります。
ポヨンと、銀色のまるっこいフォルムのものが空を飛んでいます。
『ぷゆー!』
叫んだギンちゃんがぐるぐるストン。十点満点な着地を見せてくれます。
あのぷゆぽよ加減、ギンちゃんです。間違いありません!
「ギンちゃん!!」
ぽんっと跳ねたギンちゃんが擦り寄ってくれます。とっても可愛いです。
「っと、いけません。今は、色々確認しなくては……ギンちゃん、よろしくお願いしますね。」
ぽよーんな返事を確認したところで、まずは日付です。約束だとか学校だとかあると大変です。意味もない欠席はいただけません。
枕元のスマホの電源ボタンに触ますが、画面は真っ暗なままです。長押しを試してみますが、電源は入りません。充電コードは繋がっているのですが……。
「故障、ですか?」
使い物にならない板を持ってリビングに向かいます。ここにデジタル時計が……88:88、ですか?
困りましたね。何もわかりません。
とりあえず、窓から外を見てみると、外はさんさんと明るい光に満ちています。朝というよりはお昼間っぽい感じですね。どんな予定でも遅刻確定っぽい雰囲気です。
「と、とりあえずスマホ修理に行きましょう。」
普段はネットで済ませちゃうので曖昧ですが、駅前にあったと思います。
服をばばっと着替えて、カバンにお財布と学生証、それと忘れちゃいけません、ギンちゃんを入れて。カンペキですね!
ではでは、少し嫌な予感がしないでもないですが……私ことシロちゃんと可愛いギンちゃんがいれば大丈夫でしょう。それでは……!
「行ってきまーす!」
『ぷゆー!』
これにてシロちゃんのお話は完結です。
すべてを明かしてはいませんが、異質なものをすべてシロちゃん視点で明かすのもそれはそれでどうかと思いますので
なろうに慣れるために書いてみました
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