第22話 曽根崎くん、ショック。
「子供はおらんらしいで」
「そ、そうか…」
居たとしても、気持ちは変わらない。
そう思っていたけど心底ホッとした。
知らない男と瞳子さんの愛の結晶…。
「ホッとしたやろ?うちのおかんの友達が、あそこの陶芸教室のおばちゃんと仲良しやねん。」
横山が俺の机に両腕をのせ、腕を枕にアゴをのせている。
「冬休み明けやし、全然授業に身ぃ入らんわ〜」
アクビをする横山の目はトロンとして垂れている。
「そうだな…」
窓の外を眺める。
休み明けに席替えがあり、俺の席は前から2番目の窓際になった。
灰色の空から雪が降り、外はぼんやりと薄暗い。
「で、その横峯忍って男は?」
窓にあいつの顔が映る。
澄ました、青白い顔。
横山の方をバッと見た。
「ライバルは長身のイケメン君かぁ〜♪もう付き合ってたりして」
横山はニンマリと笑みを浮かべてこちらを見ている。
「ふ、2人きりでケーキ屋さんに行く約束したもん!!」
そうだ。俺は瞳子さんと阿見山町のケーキ屋さんに行く約束をした。
「ブッ!!」
横山が吹き出す。
「小学生かいな!!」
「うるせえ!俺だって、勇気出して誘ってオッケーもらってんだよ!」
チェリーな俺はとても頑張った。
初めの頃は年上の、綺麗な瞳子先生の顔を見る事さえ中々出来なかった。
それが、それが…
「それなぁ、上手い事かわされてんちゃう?」
「あ?」
ん?
「休みが合えば、ってな。いつ行くかは決めてへんねやろ?」
そ、
「そうだけど…」
イヤ、これ、ほんとイヤ!!
「多分行く気ないと思うねん。社交辞令?ってやつ?よう分からんけど」
「……」
「大人ってな、その場の雰囲気読んで上手い事かわしはんねん。だから、曽根崎君はな…」
ショックだ。とても。
嫌、薄々は分かっていた。でも。
瞳子さん、約束って、俺言いましたけど…
一人で勝手に盛り上がって…
もしかして俺ただの迷惑な奴?
「ごめん、ごめん!曽根崎君、お〜い!気ぃついてる?」
横山が何か話してるけど、全く頭に入って来ない。
「大体な、瞳子先生からしたら生徒の男子高校生に漫画借りてお返ししたくらい何て事ないんちゃう?曽根崎君は純粋バカやから勘違いしてもうたんやろな〜」
横山の頭をはたく。
「ちょお!聞こえてるやんけ!」
「うるせえ!何で横山はそんなに…」
チャイムが鳴る。
横山が俺の前の椅子を立ち、自分の席へ帰って行った。
俺の横を通り過ぎざまにデコピンをして来た。
「イタッ!」
振り返ると横山は目を見開いてとてもムカつく顔をしていた。
「仕返しや!」
もう、俺の心はグチャグチャだ。




