第17話 ミネヤンブログについて
ミネヤンブログ。
私が忍君のブログと出会ったのは、元夫と離婚をしてすぐの事だった。
元夫の借金が判明してから、私はネットで同じような体験をした人のブログ等を読み漁っていた。
その頃は仕事も辞め、廃人のように日々を過ごしていた。
ご飯を食べる気も起きず、水を飲んだりトイレに行く以外ほぼ布団の中で1日を終える中で、ミネヤンブログと出会った。
ミネヤンブログでは、いわゆる世の中の人生に迷える子羊ちゃん達を救うような内容を扱っていた。
その内容は多岐に渡っていたが、どれもが新たな発見を与えてくれ、私を勇気付けてくれた。
例えば、結婚する、お金持ちになって大きな家に住む、それが人生の成功であり幸せ。そんな価値観に疑問を投じる。
貧乏でも幸せそうな人は居るし、お金持ちでも不幸な人は居る。
そもそも、幸せ、不幸せとは何なのだろうか。
イケメンの御曹司と結婚し、何不自由なく専業主婦をして一生働かずとも旦那の給料で生きて行く。子供を産み育てる。
高価な時計を買い、高級車に乗りいわゆる1等地に豪邸を建てて、豪華な食事をして暮らす。
それは、本当にあなたにとって幸せなのだろうか。
旦那がいくら稼いでこようが、稼がない人だろうが、自分も働いて社会との繋がりを感じていたい。そんな人も居るだろう。
大好きな人に顔や容姿、性格を褒められるよりも、大好きな仕事で上司やお客さんから仕事ぶりを認められる方が何より嬉しい。
価値観の比重は、"女性だから"なんて思考停止の常套句では片付けられるはずもないだろう。
子供も、授かりものと言うくらいだから結婚したら居るのが当たり前、なんて事は無い。また、夫婦自らの意思により妊娠を望まない家庭だってあるだろう。
高価な時計も、高級車も、1等地の豪邸も、豪華な食事だって、そんなものなくたって生きていける。
でも、何でそんなものが生きとし生ける者全員にとって幸せなのだと思うのだろう。
それは、私達が悪い魔法使いに魔法にかけられているからだ。
テレビや雑誌では、芸能人やどこぞの社長が豪華絢爛な邸宅に住み、何千万という腕時計を身に着けているのを取り上げる。
それが、いかにも幸せの極地であり成功者がたどり着くべき環境なのだと言わんばかりに。
じゃあ、何の為に悪い魔法をかけるのか?
それは、この魔法によって誰が得をするのかを考えると分かるだろう。
うろ覚えだけど、こんな風な事が綴ってあった。
ミネヤンブログでは世の中の仕組みを教えてくれて、この世界がいかに幸せを感じにくくなるように作られているのかを教えてくれる。
全ては自分次第なのだという事も。
ミネヤンブログの作者は、私よりも人生経験が豊富なのだと勝手に思っていた。
それが、高校3年生の男の子がブログを綴っていたなんて…
しかも、この陶芸教室で出会った目の前の子が。
私は忍君からブログの管理画面を見せてもらうまでは半信半疑で居た。
でも、その管理画面は紛れもなく私を勇気付け、励ましてくれていたミネヤンブログそのものだった。
一体、どんな19年間を送ればこんなブログを生み出せるのだろうか。
私は困惑と感心、嫉妬、感謝、様々な色違いの感情がぐちゃぐちゃに混ざった心をスッキリできないまま帰宅した。




