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目立ちたく無い俺、腹黒聖女様に懐かれる  作者: おとら@9シリーズ商業化


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動揺

 クラス中の視線が俺に集まる。


 それもそのはずで、俺が自分から目立つようなことをするのは初めてだ。


 知り合いが少なく、さらには知り合いにまで頼み込んで地味に過ごしてきた。


 でも、それはもうやめにしよう。


「おいおい、逢沢じゃダメだろ」


「帰宅部でしょー?」


「そもそも、体育とか身体測定でも運動神経良くないし」


 そんな声があちこちから聞こえてくる。

 それも当然で、俺は今まで本気でやったことはない。

 何かしら証明した方が良いかなと思案していると……礼二さんが動いた。


「あぁー、そいつの足が速いのは俺が保証する。少なくとも、そこらの運動部には負けないはずだ……本気を出せばの話だが——《《優馬、良いんだな?》》」


「うん、礼二さん。とりあえず、全力で頑張るから」


「うし、なら良い。クラスのみんな、俺の顔に免じてこいつをリレーの選手にしてくれるか?」


「……まあ、先生が言うなら」


「なんか、昔は部活やってたとかなのかなー」


「それで勝てるなら良いけど」


 納得はしてないが、ひとまず通ったか。

 あとで、礼二さんにはお礼を言っておかないと。


「そ、それじゃ、逢沢君で決まりね。そしたら……もう一人の女子は私がやります」


「よし、決まりだな。それじゃ、最初から確認していくぞー」


 そして、最終確認が終わってホームルームが終わる。






 その後、昼休みになると……いつもの場所に、こちらを睨みつけた清水が現れる。


「よいしょっと……ねえ、どういうつもり?」


「まあ、そうなるわな」


「貴方、目立ちたくないんでしょ?」


「少し変わってみようと思ってな」


 するとうつむき、両手の拳を握りしめて膝に置く。


「……私のせい?」


「あん? どういう意味だ?」


「私があの時、好き勝手言ったから……あんたなんかにはわからないって」


「あぁー、そういうわけでもない。ただ、お前に変われば良いじゃんと言った手前、俺がそのまんまっていうのは違うだろ」


 そんなのは、ただの無責任だ。

 清水がどうするにしろ、まずは俺が先に変わって見せないといけない。


「何よそれ……別に、私は変わるつもりなんてない」


「ああ、それで良いと思うぞ。俺はお前を見て変わろうと思っただけだ。それに、清水が合わせる義理はないし」


「ほんと、変な人……でも、これで契約はお終いね。貴方の弱みが無くなっちゃった」


「だから関係ないって言ったろ。大体、友達に契約とかいらん」


 相変わらず、よくわからない縛りがあるらしい。

 そういうモノがないと、不安な人生でも送ってきたのかもしれないが。


「でも、それじゃ私の弱みが……対等じゃない」


「だからいらんって。そもそも、俺が弱みに付け込むような男に見えるか?」


「そんなの……見えるわけないじゃない」


「なら良い、別に変わりはしないさ。俺は俺、お前はお前の好きにすれば良い」


「……わかったわ」


 その後、清水は俺を訝しげにチラチラと見てくる。


 俺はそれに気づいていたが、気づかないふりをして昼飯を食べるのだった。






 ◇



 その日の放課後、私は生徒会室でうなだれていた。


 みんなは仕事を終えたので、今は一人きりの時間だ。


 ……あの生徒会長は遊んでてこなかったけど。


「……何が起きてるの?」


 遊んでるときに、あんなこと言ったり。

 学校に来てみたら、今度はリレーの選手に立候補するなんて。

 今までの逢沢君からしたら考えられないことだ。


「私のせいっていうか……そういうわけでもないみたいだけど」


 ただ、その狙いがわからない。

 何のために、変わろうとしたのか。

 これからどうするつもりなのかとか。


「……私はどうしよかな?」


 だって、今更変わるなんて出来ない。

 そんなことしたら、みんなから嘘つき呼ばわりされちゃう。


「でも、逢沢君が味方になってくれるって言ってた」


 何かあったら、そいつをぶん殴ってやるって。

 多分……守ってくれるってことかのかな?


「……もしかして、そのために変わろうとしてる?」


 そう思うと、胸がドキドキしてくる。

 いや、別に逢沢君がそういう意味じゃないっていうのはわかってる。

 私のことを、ちゃんと友達だと思ってくれてるってことだと思うし。

 ……でも、女の子として立ったら?


「いやいや、違うわよね……違うのかな?」


 うぅー……あの男め。


 おかげで、モヤモヤが取れないわ。


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