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目立ちたく無い俺、腹黒聖女様に懐かれる  作者: おとら@7シリーズ商業化


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20/52

幕間

 ……これは、あの時の夢ね。


 十歳の時にお母さんが死ぬまでは、私達は普通の家族だったと思う。


 休日にお出かけしたり、一緒にテレビを見たり、時には言い争いしたり。


 でも、お母さんが病気で亡くなってから全ては変わった。


 元々無愛想であまり話をしないお父さんは、益々寡黙になっていった。


 次第にお父さんは私を避けるようになり、お酒の量も増えていった。


 幸い、暴力を振るわれるようなことはなかったけど……ある意味で無視されるのが一番辛かった。


 私はお父さんを元気づけようと、あれこれと頑張ってはいた。


 良い子でいたし、成績も良かったし、お料理だって覚えた。


 ちょうど学校でも容姿から女子や男子から虐めに近いことをされ、私は自分を守るために偽りの皮を被ることにした。


 自分を押し殺し、皆が思う私の姿になるために。


 ……それも、全て無駄に終わったけどね。


 あれは、私の高校受験が終わった頃だった。


 珍しく、お父さんが話があると言ってきた。


「……再婚?」


「ああ、二年ほど前に知り合った人だ。その人と、結婚したいと思ってる」


「えっ!? ……どんな人?」


「歳は父さんの五つ下の三十四歳で、結婚歴もない人だ。優しい雰囲気で、父さんは大分助けられた」


 二年前というと、お母さんが死んでから三年が経っている。

 別にそれ自体は変じゃないし、とやかく言うつもりはなかった。

 私がショックだったのは、《《私がしてきたことは無駄だったんだということ》》。

 そしてなんだかんだ言って、新しい女を作るお父さんに幻滅したのかもしれない。

 お父さんのことは好きじゃないけど、お母さんを好きということは信用してたから。


「そっか……良かったね! 多分、お母さんも許してくれると思う!」


「……ああ、そうだと思う」


「うんうん、お父さんみたいな無愛想な人と結婚してくれるっていう貴重な人だね。そうなると、逃さないようにしないと。私のことは気にしないで良いから、好きにして良いよ」


 私は慣れた仮面を被り、聞き分けのいい子供を演じる。

 正直言って、もうどうでもよくなっていた。

 私ではお父さんの助けにはなれなかったんだ。

 結局、お父さんにとって私も負担だったのだろう。


「そうか……助かる。それじゃ、相手には伝えておく。それで、ここに暮すことになると思うが高校はどうする? その辺りも、考えてはいるが……」


「うーん、どうせなら一人暮らししたいかな。できれば、知ってる人がいないところ。新しいお母さんも、そっちの方がやりやすいし。お金とかは家賃代くらいはバイトすればいいかなって」


「……そうか、わかった。それじゃあ、新しい部屋を用意しておこう。ただし、お金はきちんと出す」


「……ありがとう」


 こうして、私は一人暮らしを始めることになった。


 ちなみに挨拶をした新しいお母さんは良い人で、一緒に暮らさないかって言ってくれた。


 ただ、お父さんの顔は見たくなかったし、新しいお母さんと仲良くしてるのも見たくなかった。


 それに私がいない方が、絶対二人にとって良いはずだから。


 私は仮面を被って押し切り、地元から離れたところに住むことになった。


 そして、それからお父さんが私に会いにきたことはない。


 ほら、やっぱりそうだった……お父さんなんか、男なんか嫌い。





 ◇


 そうして、ベッドでうずくまるところで目が覚めた。


 ……嫌な夢を見ちゃった。


 ただ、不思議と寂しいという気持ちにはならなかった。


 そこで、ふと気付いた……自分が誰かに寄りかかっているということに。


「っ……!? あ、逢沢君?」


「すぅ……」


「ね、寝てる?」


 どうやら、いつの間か寝てしまっていたらしい。

 そして、周りからも寝息が聞こえてくる。

 みんなも疲れて寝てしまったのだろう。


「……あんがい、あどけない顔をしてるのね」


 逢沢君は不思議な人。


 不器用だけど、なんだかんだで優しい。


 それでいて、相手に負担をかけないようにしたり。


 彼といると……私は仮面が剥がれていってしまう。


 これはいいことなのかな?


 ……私は、一体どうしたいんだろう。








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