28面倒な魔法の相手
おかしいな。
剣を俺に振りかざしてきている者達の目は
自分の意志が一切ないような目をしている。
リサのように自我をもっている感じではない。
完全な人形のような感じがする。
「この者達も『半分人形』の魔法の影響を受けているのか?」
俺はできるだけ迫りくる敵たちを、
死なないように加減をしてふき飛ばしながらビビアンに尋ねてみた。
しかし予想外だな。
この都市の研究者達は魔法にしか興味がない連中だと思っていたが、
武芸もそこそこだ。
兄が相手をすると負けるかもしれないな。
俺にかなうわけはないが、
剣を振る力、体の動き、
平均的以上の動きだ。
「ふふふふ。リサは使いたい時に使うために『半分人形』で特別に操っていたの。あたしたちを利用しようとしたんだから、そのお返しにしっかり特別扱いしてあげたわ。おかげでいい表情が見れたわ」
「特別?」
「『半分人形』はあたしが使う魔法の中でもとても高度な魔法なの、なんせ相手の意識を残しながら操るんだから。でもね。他は違うわ。意識を完全に奪って単純な行動をするように命令を送っておくことであたしへの負担が一切ないのよ。これが『完全人形』あたしのもう一つの魔法よ」
なるほどな。
意識を完全に奪っているから死んでいるような目がになっているのか。
そうなるともう一つ解明されていない魔法があるな。
「『完全人形』か、お前のもう一つの魔法はなんて名前の魔法なんだ?人と見分けがつかない人形を操る魔法があるだろ?それが今の魔法なんじゃないのか?」
この面倒な状況をなんとかしたかった。
もし事前に入手していた情報通りの内容なら
今俺を襲ってきている者達が全て人形である可能性もある。
もしそうなら、わざわざ手加減して戦わなくてもいい。
人なら流石に操られているとはいえ
他国の者を殺めるのはまずい。
めんどくさい。
「あらあら。おしゃべりさんがいたのね。まぁいいわ答えてあげる。ランスロットちゃんは相手が人間だから手加減してるのよねぇもし今の相手が人形だったら手加減する必要がない。けど残念ねぇえ!そいつらは正真正銘の人間よ」
まぁそうだよな。
いくら人と見分けがつかないとはいえ。
俺に襲い掛かってきている者達が人形には見えない。
つまり俺がこの者達を殺すわけにはいかない。
「本当に面倒だ」
残念ねぇランスロットちゃん。
確かにあたしのもう一つの魔法はある。
それは使うタイミングが大事な魔法。
今は使うべき魔法じゃないし意味がない。
それに思った通り、
ランスロットちゃんは研究者の連中を殺せない。
それもそうよねぇ。
残念。
殺す選択肢が選べないならもう勝ち目がない。
「残念ねぇ!あなたが勝てる未来はないわよ」
ビビアンは勝ち誇った表情でこちらを見ている。
「うるさい。吠えるなこの者達を動けなくすれば後はお前だけだ」
「ふふふ。あまい、あまいわよランスロットちゃん。あなたは殺さずに制圧しようとしているようだけど。気づいていないのかしら?」
ビビアンに言われて周りを見てみた。
「これは本当に面倒だな。趣味も悪い」
手加減しているとはいえ俺が吹き飛ばした者達は
既に立ち上がって俺に斬りかかってきている。
いくら手加減をしているとはいえ
立ち上がってこれない程度にはしているつもりだった。
実際に吹き飛ばされた者たちは
腕が折れ曲がっていたり、
足が折れているのにも関わらず、、、
意識を完全に奪っているからこそできるんだろうな。
厄介すぎる魔法だ。
「いい表情ねランスロットちゃん。その困った顔はとても魅力的よ」
ビビアンに言われて気づいたが、
どうやら俺は困っているらしい。
戦闘中に困ることもあるんだな。
初めての体験かもしれないな。
「ああ。私が他国の善良な市民を殺すのは問題だからな」
「そうよねぇ。いくら操られているからって殺したら問題よねぇ」
「なら。直接お前を殺せばいいだけだ」
「あらあらあら。忘れているようだから教えてあげるけど。あなたリサと学長を守る気があるのかしら?」
「お前こそ気づいていないのか?とっくに2人はこの場にいないぞ?」
「なんですって!?」
慌ててビビアンが研究者を使いリサ達が倒れていた方の椅子や机を破壊して確認した。
そこには確かにいたはずのリサ達の姿はなかった。
「はぁあ騙されたわ。まさかあの2人以外に従者がいたって事かしら?それともサイズちゃんが昨日仕留め損ねたのかしら」
「残念だったな」
◇◇◇◇◇◇◇◇
誇白とランスロットはサイズの魔法により影に飲み込まれ説明会の会場から移動していた。
誇白は昨日アーサーがかなり遠くに飛ばされていた事から、
今回自分たちが飛ばされるところも相手にとって有利でしかない
辺境の地だと考えていたがそうではなかった。
「前回のようにどこか遠くに移動すると思っていましてが、ここはサーチですね」
誇白はレンに変装したランスロットに確認も含めて言葉で伝えた。
レンは声を発することなく周りを見渡し頷く。
「前回?おい!その前回ってぇのはどこからの情報だ?」
「あら。あなたに聞こえるように話したつもりはないのですが」
「ああ?」
相当怒りやすいタイプのようですね。
(アーサー。私達が移動させられたのはサーチのどこかだ)
・・・・・
(これは恐らく向こう側で指輪を使われているのかもしれませんね)
(そうだな。私達を移動させる前に魔法が厄介だと言っていたからな。指輪を使って魔法を封じてアーサーを倒すつもりなんだろう)
(それはなんと言いますか、、、意味がないですね)
誇白の気持ちもわからなくもないが、
アーサーは我が国最強でもあるが他の国の実力者にも負ける姿が想像できない強さをもっている。
それもアーサーを知っているからこそ言える事で
知らなければ信じてもらえないような強さだから仕方がない。
「情報の出どころがそんなに気になりますか?」
「当たり前だろ。お前のさっきの発言は明らかに俺の魔法による移動を経験した奴がいたって事になる。だがなそれを知っていて誰かに伝える事が出来る奴は本来生きていないはずだ」
気づかないほど馬鹿ではないとゆう事ですね。
「かなり怒っているようですね。何か問題でもありますか?」
「あ?俺が敵を見逃しちまったって事になるだろうがそんなことあっていいはずがねぇーんだよ」
自分に相当自信があるようですね。
実力的は確かにあるとは思いますが、、、
(これはわざわざ隠す必要はないだろう)
(かしこまりました。直ぐに戦闘が始まるかもしれません)
(私の事は気にするな。誇白が勝つと信じている)
(ありがとうございます。その期待に応えてみせましょう)
誇白の感情が高ぶっていた。
従者になってから特に活躍の場もなく、
昨日の戦いにも参加できず、
不完全燃焼な気持ちで今日を迎えた。
本来なら主であるアーサーが面倒な事になってほしくないと
願っているのだからそれに同意しなければいけないが、
今回は敵に感謝している。
やっとお役にたてる。
「わざわざ隠す必要もないですし教えてあげましょう。あの時あなたの相手をしていたのは私ですよ」
フードをとり顔を見せ。
サイズを挑発するような表情をしている。
「そうか。お前だったのか」
サイズの頭には欠陥が浮き出ていて今にも破裂しそうだ。
「あの時は手加減していてごめんなさい。あなたが指輪の持ち主ではないと確信して泳がせることにしたのでやられたふりをしていたんです」




