26面倒事に巻き込まれた
「まさかサーチで魔法を研究する仲間から理由もわからず狙われるとは。。普段なら信じられないと言いたいところですが、この状況では信じる他ないですな」
ドランバルト学長の表情は変わっていないのに、
発する声からは怒りを感じる。
流石この規模の都市を統括しているだけはあるな。
出会ったときは気のいい年寄りだと思っていたが、
貫禄と威圧感がある。
「この者達は何者ですか?」
兄がドランバルト学長に尋ねた。
「ピンク髪の男はビビアン。この都市に数人しかいない所長の中でも相当な魔力を持っていて、かなりの切れ者ですな。見た目は派手ですが魔力の操作は繊細でかなり優秀な者です」
見た目が派手だと感じていたのは俺だけじゃなかったのか。
あいつらが会場に来た時の周りの者達が見た反応は、
あまりにも普通だったから
この都市では標準的な見た目なんだと思っていたが。
大柄でピンク色の短髪。
筋肉質な体型。
化粧が濃く。
唇が分厚い。
正直一度見たら忘れない顔だ。
俺ですら暗闇にこの顔が出てきたら
驚きの声をだす自信がある。
「そして隣にいる男はサイズ。奴もまたビビアンに並ぶ魔力を持つ所長で、研究者であると同時に戦闘にも長けていてこの都市で一番の剣術使いでもあります。気をつけてくだされ」
ハゲが特徴的。
細身の体型。
鋭い目つき。
ギザギザの歯。
剣術使いだったのか。
影の魔法を中心に戦っていたから
剣はついでだと思っていたが、、、
あれで都市一番の剣術なら正直たいしたことないな。
魔法を研究する都市なのだから当たり前といえば当たり前か。
「所長とゆう事はこの都市ではそれなりに権力をもっている者達とゆう認識で間違いないですか?」
「そうですな。自身の研究所を持っていて、部下を従えている者を権力者と言うのであればそれであっています。皆研究をするのが好きなので権力には興味がないと思っていますがな」
なるほどな。
俺がサイズに見つかったのは研究所の職員じゃなかったからか。
「じいさんの言う通りあたし達は別に権力が欲しいわけじゃないわよ」
権力が欲しくないなら考えられることはなんだ?
私怨か?
それとも俺達がもっていない情報のなにかか?
「ほう。ではわしを狙った理由はなんだ?お前たちに命を狙われる理由も捕まえられる理由もわしには心当たりがないんじゃがな」
「聞かれたら答えるとでも思っているの?」
片目をつむり、
ビビアンが大きな声でドランバルト学長に向かって言った。
「そんな甘い考えだからこの都市はあたしのものになるのよ」
両手を広げビビアンの後ろに5つの魔法陣が出現する。
すると魔法陣から人一人を飲み込む程の大きさの炎球がドランバルト学長に向かって飛んでいく。
威力としては申し分ないな。
俺達の国のレベルで考えたら相当な使い手だろう。
だが、ドランバルト学長に対しての魔法ならそれほどの脅威ではない。
それがわからない程度の奴らなのか?
「舐めよって」
ドランバルト学長が同じように5つの魔法陣を出現させた。
そこから出てきたのはビビアンがだした炎球と同じ大きさの水球だった。
ドランバルト学長に向かっていった炎球に対して水球をぶつけて相殺した。
会場内は水蒸気で視界が一気に悪くなる。
(アーサー頼む)
兄からの連絡で、
俺は風魔法を発動させて、
他に影響が出ない程度の威力で水蒸気を上に巻き上げた。
視界が元通りになり、
先ほどと違う状況に驚いた。
油断した。
「リサ君、、、」
ドランバルト学長が横腹をおさえて座り込みながら
弱った声でリサの名前を呼んだ。
ドランバルト学長の横には血の付いた短剣を持ったリサが立っていた。
「あらあら大変ね~。昔はあんなにも強かった学長でも歳には勝てないようねぇ」
「油断しすぎなんだよじじい」
ビビアンとサイズはその場から動かずに、
俺の方も警戒している。
「君までそちら側だったとは、、、」
ドランバルト学長はリサを睨みつけている。
これは俺達のミスだな。
リサが奴らの仲間であることはわかっていたのに、
ドランバルト学長の横にいたリサを引き離していなかった。
「学長。何を言っているのですか?」
リサはきょとんとした顔で、
不思議そうにドランバルト学長を見ている。
「リサ。何をとぼけているんだ?君がドランバルト学長を刺したのは紛れもない事実じゃないか」
兄はリサのまるで自分は悪くないような態度に驚いていた。
俺も流石にあのような顔をされたら驚くな。
「私が?」
リサは兄が言っている事を理解していないような口ぶりだ。
リサが何を言っているのか理解できない。
兄もドランバルト学長も俺と同じ気持ちだろう。
リサは間違いなく自分でドランバルト学長を刺して、
短剣も握っている。
魔法の類で俺達が見ている者が違うとは思えない。
「私は、、、間違って、、いない、、です」
リサは頭を抱えて苦しそうにしている。
「お前達リサになにをした?」
兄がビビアンとサイズを睨み尋ねた。
考えられるのはビビアンが初めに発動した魔法だな。
俺や誇白が何をしたのかわからなかった謎の魔法。
「流石におかしいと思うよな」
「そうねぇ。これでおかしいと思わない方がおかしいわよねぇ」
「いいから答えろ」
会場に兄の怒号が響く。
「ふふふふ。怒らないでよぉランスロットちゃんには関係ないでしょお?」
「私の妻の妹だ」
「あらあら。それはあまとめて始末しないといけないわねぇ困ったわ~」
ビビアンは困ったと言いながらも余裕の表情を崩さない。
「おいおいおい。元々この都市に来た時点で全員俺達の標的なんだから何も変わらねーだろ」
都市に来た時点で?
「ちょっともーサイズちゃん。そんな簡単にバラさないでよ」
「あ?いいだろ別に」
「まともに答える気がないのだな」
「いいえ。折角だから教えてあ・げ・る」
ドランバルト学長を狙う理由は教える気がないのに、
自分の魔法は教えるのか。
ふざけているのか、
舐めているのか。
本気にしない方がいい気もするな。
「あたしが生み出した魔法『半分人形』を使ったのよ。この魔法はね、相手を操ることができるの。例えば今のリサみたいにね。気づいたら行動していたって事になるのよ。しかもこの魔法の凄いところは自分の意志に反しているはずなのに、まるで自分の意志で行動しているように錯覚させることなのよ。もちろん他人から指摘されれば脳が混乱して訳が分からなくなって今のリサみたいになるんだけどね」
「なるほど。それでリサを操っていたのか。リサがお前たちの仲間になっているのは全てお前の仕業で間違いないな?」
「いいえ。違うわよ」
「何が違うんだ。お前が今言ったことが真実ならリサはお前に操られているからだろ」
「実際に操ったのは盗賊に襲わせた時と都市に着いた時、それと今の3回だけよ。そもそもリサからあたしたちに協力をお願いされて始めた研究だもの。だからリサも同罪よ?」
そういえば盗賊から指輪を奪った時に、
リサがすぐに手に取って魔力を流していたな。
あれは他の者が魔力を指輪に流して、
リサにかけている魔法が消えないようにするためだったのか。
指輪を見たらすぐに奪うように仕向けていたのか?
操るタイミングは決まっている?
それでも操るだけの能力では説明がつかない事がある。
「そんな話信じるわけがないだろ」
まずいな。
明らかに動揺している。
リサを敵と決めていたのに、
ビビアンの魔法を聞いて、
操られていただけかもしれない可能性が生まれたことで
兄の覚悟が完全に揺らいでいる。
「信じなくていいぜ。どうせ今からてめぇも俺にやられるんだからな」
兄に向かってサイズが剣を抜く。
「いいだろう。お前達2人とも私が相手をしてやろう。従者にも手を出させない」
!?!?!?
なにを言っているんだ?
冷静を欠いている。
兄が敵うはずがない。
俺がレンとしてここにいるんだぞ!?
どうするんだ!
従者にも手を出させないとか、、、
無理だろ。
(兄上どうするつもりだ!!)




