14今回の面倒事は関係ないようだ
「ドランバルト学長よろしいですか?」
「おお。もうよろしいのですかな?」
「ええ。私の従者が全て倒しました」
「ありがとうございます。そちらに任せっきりで申し訳ない」
「こちらが任せてほしいと頼んだのです。問題ありません。それより情報をもっていた盗賊から気になる事を聞きまして」
「気になる事?」
「はい。影で物体を移動させる魔法と人間と区別がつかない人形を操る魔法を使う者がドランバルト学長を狙っているようです」
「なに!?」
兄からの情報を聞いたサーチの馬車では動揺が広まっていた。
「その2つの魔法を使う者が私を狙っているのは確かですか?」
「間違いないようです」
「なるほど、、」
「心当たりはありますか?」
「ない」
力強い”ない”だった。
「は?」
「そもそもその2つの魔法は発表されていない」
「物体を移動させることができる便利な魔法に、人間と区別がつかない人形を操る魔法のような世の中に役立つ魔法は、もし知っていたら世界に広めるに決まっています」
兄の後ろからリサが少しだけ大きな声で学長の言葉に同調した。
「では相手はサーチの関係者ではないと考えていますか?」
「いや可能性ならある。サーチも一枚岩ではない。魔法の技術を独占しようとしている者もいる」
「そうですね。私達が知らないだけで外部の者とは決めつけられません」
「実は盗賊の頭が口にした内容から私は、サーチの関係者もしくは外部と通じている者がいるのは確実だと考えています」
「それはなぜですか?」
「盗賊は私達が一緒にいることを知らされていなかった」
「なるほど。義兄さん達が来ることになったのは出発の前日」
「そうゆうことだ。今日ここで待っていれば捕まえる事ができると確信していたんだ」
「ですがそうなるとおかしくありませんか?サーチの者なら学長をあれくらいの盗賊で捕まえられると考えないと思うのですけど」
兄が黒華を見て頷くと指輪をリサに見せた。
「この魔力を封じる指輪をもっていたからです」
「なんですって!黒華さん見せて」
リサが指輪に飛びついた。
(それはもう渡しても大丈夫だ。魔法式なら覚えた)
(相変わらずすごいな!)
兄は表情は一切変えずに驚いていた。
「どうぞ。そちらで確認してください。魔力を流し込めば周囲の者だけが魔力がなくなります」
リサがすぐに指輪に魔力を流した。
「お?これは本当にすごいな」
学長がかなり驚いている。
「私も魔力を感じることができないな」
兄も同じ反応だ。
他の者も魔力が感じられないことに驚いている。
「魔力は誰しも大なり小なり魔力を持っている。それが魔力量に関係なくここにいる者の魔力が等しくなくなるとは恐ろしいの」
「これはかなりの代物ですね。指輪を持っている本人は一切影響受けないなんて、流した魔力に反応しているからでしょうか?私でも簡単に学長を倒すことができてしまいます」
「魔法の使えない私などただのじじいだからの。簡単にやられてしまうな」
「戦争で大量に使われたら一気に戦況が傾く」
「義兄さん。これは私の研究所に持ち帰ってしっかり調べたいのですがよろしいですか?」
「ああ。リサに任せる。そっちで調べてくれた方がいいだろう」
「しかしこれも初めて聞く魔道具になるの。どこの者がこれを作り私を連れ去ろうとしたのか」
「このような魔道具を作ることができるのはサーチにも数人しかいません」
「うむ。だがのが私を連れ去ってどうするつもりなのか意図が読めん」
「そうですね。無力化して殺せって事じゃなく、連れさろうとするってことは何か意味があるのかもしれません。それと2日前の暗殺者は今回の盗賊達の仲間ではありませんでした。実際指輪も持っていませんでしたから別の者の仕業でしょうな。狙いはわかりませんが、、、」
暗殺者の狙いは学長で間違いないのだが、問題は暗殺者は殺すことを目的として来ていたことだ。
盗賊達とは目的も内容も違う。
予定を変更したにしては死んでいるか生きているかでは全く違うと思う。
これに関してはまだ違うと考えておいた方がいい。
「とりあえず、急ぎサーチまで帰りましょう」
「そうじゃな。ここで考えていても何も思いつかんわ」
「そうしましょう。その方が安全だ」
すぐに戻ることを決め各々の馬車に乗り込み出発した。
「主様はどのように考えておられますか?」
いろいろ省いた質問ではあるが、
黒音から今回の件について意見を求められた。
「単純に学長が最低でも2つの組織から狙われているってことだろ」
「組織ですか?」
「それくらいの気持ちでいた方がいいだろ。個人の仕業と考えて解決したと思っていたら他にいましたってなった時に疲れる」
「確かにそうですね」
「でもまぁ俺達が考えても仕方ない。狙われているのは魔法都市サーチの学長で狙っているのも高確率で身内だろうからな。俺達には関係ないことだ」
「え?私達は何もしないんですか?」
「そもそもサーチはどこの国にも属さない中立の都市だ。他国の者がでしゃばるなんてしなくていい」
「なるほど。そう言われればそうでした」
魔法都市と各国の関係は、
魔法都市で研究されている魔法を各国に提供するかわりに、
各国は資金面で支援することになっている。
それなりに資金の援助を受けているからこそ、サーチのあらゆる研究機関は毎年成果を出している。
非常に優秀な研究者たちの集まりなのだ。
「それに俺達の本来の目的はリサの研究内容の確認だ」
「でしたら今回はなぜ。盗賊を私達で処理したのですか?」
「道中は襲われる理由を知りたかったから直接調べただけだ。サーチにつけば完全に任せていいだろう」
「わかりました」
馬車でそんな話をしているとサーチについていた。
馬車の中から外を眺めている。
「噂には聞いていたが、様々な種族の者がいるな」
獣人と一括りにされてはいるが、人間とは異なる容姿をしている者達をまとめて獣人と呼んでいる。
この都市だけでも様々な獣人と呼ばれる者たちが研究をしている。
「種族もそうですがあちこちで魔力があふれています」
「見てください!あれ凄いです」
黒音が興奮して指をさしている方を見てみると、
水でできた大きな球体を中心に水の輪が何本も周りを囲んでいる何かがあった。
「子供たちが泳いでいますね。球体の中と周りの輪を使って遊んでいるんでしょうか?」
「そうだな。遊具の1つなんだろ」
「どうやってあの形を維持しているんでしょうか?」
「下の装置で何かをしているんだろうが、ここからでははっきりとわからないな」
「時間があれば行ってみたいですね!」
「調べものが済めば見て回っていいぞ」
「「がんばります」」
2人が嬉しそうに返事をした。
その後も魔法を使った何かがそこら中にあったが、
何かを見つけるために黒音が興奮していた。
黒華も黒音ほどではないが興味ある物にはかなりしっかりと凝視していた。
しばらくすると馬車が止まった。
「着いたようだな」
馬車から降りて最初に目にした光景に少しだけ驚いた。
目の前には大きな城が建っていた。
サーチはドランバルト学長が統括してはいるが、王族のように城に住んでいるとは思わなかった。
だが出入りしているのは若い者が多いな。
「ドランバルト学長は城に住んでいるのですか?」
義姉上が俺の気になっていることを聞いてくれた。
「住んではいますぞ」
「私も住んでいるわよ。出入りしているほとんどの人がここに住んでいるの」
「そうなの!?」
「確かにここは見た目は城ですが、自分の研究施設を持たない若い研究者達も使っている場所ですよ。城の中に寮もあるので住んでいるのは沢山ですな」
「実績を残せていない若い研究者が沢山出入りしているのよ姉さん。私の研究もこの城でやっているの」
「リサ君が自身の研究だけでなく他の者の研究も手伝ったり指導したりしてくれて助かっている」
「学長も時間があればよく研究の手伝いをして回っているじゃないですか」
「ドランバルト学長自ら手伝いを?」
「私はこの都市を統括する事が役割になっていますからな、何もない時は手をかしたり知識を共有したらしているんですよ。それよりも、今日はゆっくり休んでいただいて明日契約魔法について教えていただけませんかな?」
「お部屋は客室として空けている部屋がいくつもあるから、準備させておきますね」
リサはそう言うと城へと入って行った。
(兄上と義姉上は一緒に行動されますか?黒音と黒華を連れて行ってください)
(アーサーと誇白はどうするんだ?)
(俺と誇白は別行動で調べものだ)
(かしこまりました)
(アーサー、誇白、今日はほどほどで大丈夫だからな)
(ああ。大丈夫だ)
「では、待っている間我々は都市を見てまわろう」
「案内の者をおつけしましょう」
「お気遣いありがとうございます。折角ですが、のんびり観光しようと思います」
「では何かあった時のためにこちらを渡しておきましょう」
ドランバルト学長はそう言うとブレスレットを渡してきた。
「これは?」
「私の客人である証明になる物です。腕に近づけると大きさが自動で調整されます」
「おお。これはありがたい」
「では私も自室に戻ります。ご用があれば周りのものにそれを見せてもらえれば案内してもらえますので」
「ありがとうございます」
ドランバルト学長が城に入って行くのを確認して俺たちは動き出した。




