11自分達の行いの結果の面倒事
魔法都市サーチ
どの国にも属さない。
この世界で唯一の都市。
サーチでは日々様々な魔法が研究されている。
日常生活で使える便利な魔法から戦いで使う魔法。
サーチは魔法に貪欲な者の集まりであり、魔法は広めるべき素晴らしいものだと宣言して新しい魔法が生み出されたり、改良されたりしたら魔法式を公開している。
一発で戦場を破壊する魔法も開発されているとも言われているが、本当かは嘘かはわからない。
アーサーが知っている情報はそんなものだ。
「流石にサーチとはいえ契約魔法を教えるのは嫌だな」
「アーサーが今後何かに契約魔法を使いたいと考えているのはわかっているんだ。私も初めは渋っていたんだよ」
俺は兄の話を聞いて傍にいたはずの誇白達を見た。
「はい。最初の方は断る方向で話を進めておられました。ただ、、、、、、」
誇白は少し気まずそうに話している。
黒音と黒華も同じく気まずい雰囲気がでている。
「何があった?」
「あーそれがだな、、、」
兄が気まずそうにしていると黒音が話してくれた
「来賓としてきていたサーチの学長と話していた時はランスロット様は問題なく話されていたと思います。ですが一緒に来ていた側近の方とアイリス様が話に参加したとたん顔色が、、、、」
学長といえば魔法都市にあるすべての研究機関を統括している人物だ。
だが、学長に対しても堂々と振る舞えるはずの兄が、、、
「側近?」
人前に出ている時の兄が側近と義姉上がでてきただけで顔色を変えたのか?
ありえない。
「その側近の人物が問題だったんだ。名をリサ・ハイドレイン」
「有名な人物なのか?」
「予想はしていだがやっぱりそうゆう反応か」
「仕方ないだろ外交は兄上に任せているし、必要な人物がいたら事前に教えてくれるじゃないか」
「リサ・ハイドレインのことはアーサーは知っているぞ」
「知っている?俺が?」
サーチの学長ならわかる。魔法の研究に熱心に取り組んでいて、個人的にも素晴らしい人物と認識はしているが、側近など興味もない。
「アイリスを連れてこなくてよかった」
義姉上の名前がでて少しだけ頭によぎった家名。
「義姉上?ハイドレインって、、、」
「アイリスの実家だ」
「そうか。リサって義姉上の妹か」
「それだけじゃないだろ。アーサーの許嫁だ」
「元だろ。しかも10年も前の話だ」
「リサの正体はわかったがそれがどうした?」
「どうしたじゃない。アイリスは非常に妹思いでアーサーが生きていたとわかった時、滅茶苦茶怒られたろ」
「あの時はやばかった。妹が本気で落ち込んでいてかわいそうだって言われてたな。当時は6歳で数回会った程度の許嫁に悲しまれるとは思っていなかった」
「そうだ。その時アイリスと約束しただろ?リサに何かあれば助けるって」
「そういえばそうだったな。サーチで問題でもあったのか?」
「いいや。単純にサーチに魔法技術の提供を頼まれただけだ」
「約束の何かとは違う気がするが、義姉上とリサの2人から頼まれて断れなくなったのか」
「断れないだろ」
こればっかりは兄を攻めることはできない。俺達の行いの結果だからな。
「まだハイドレインを名乗っているとゆうことは未婚なのか」
「ああ。リサはアーサーの死後、魔法の研究に没頭し他からの誘いも断っているらしい」
自分のやりたいことに没頭しているのなら結果的に良かったんじゃないだろうか?
そんなこと口にしたらまずいか、、、黙っておこう。
「サーチの学長の側近ともなると大出世なんじゃないか?」
「ああ。リサは魔法式の最適化を次々に行い今の地位にいるらしい」
「凄いじゃないか」
「だが少し気になる研究をしていてな」
兄はかなりまずい顔をしている。
「気になる?」
「死者を生き返らす事に関する魔法だそうだ」
「おいおいおいそれは、、、」
「いけませんね。良い結果なんてありえません」
誇白が珍しく感情を出して発言した。
言っていることは間違っていない。
死者への干渉なんてするものじゃない。
流石にダメだ。
「もちろん興味があるだけで真剣に進めていないとは言っていたんだがな。アイリスも興味までにしておくように注意していたし。学長は禁忌に触れるようなことはするなと少し怒っていた」
「3人ともまともで良かったよ」
「ただな。もし仮に死者を生き返らす魔法が完成したら、アーサーの生きていることがばれてしまう」
「流石に完成しないだろ」
「いいきれはしないだろ?」
「人が死に死体を燃やせば体はなくなる。死体が燃やされず放置すれば知能がなく腐った魔物になって徘徊する。どこにも死者がかえってくる場所なんてないんだ」
一瞬誇白がそれを聞いて少し悲しそうな表情になったように見えたが、すぐに元の表情に戻ったので気にしないことにした。
仮に死んだ者の魂があるなあらばそれを入れる体が必要だ。
もし死者を生き返らすなら死んだ直後でないと意味がない。
そんなこと既にわかっていることだ。
なぜリサはそれでも興味をもつ?
俺がリサが興味をもっている事に疑問をもった時。
「リサがなぜそんな魔法に興味をもったのか気になるだろ?」
「ああ。少しな」
「そこでだ。サーチに向かい契約魔法についての提供と隠れてリサを調べてほしい」
「いいのか?勝手にリサの事調べて」
「アイリスには事前に伝えている」
「なるほど、義姉上も気にしているのか」
「話をしていた時のリサの表情が気になっていたらしい。もし興味だけじゃなく、危険なことをしようとしているなら絶対にとめてほしいと言われている」
「わかった。だがあまり時間がなくないか?契約魔法の説明と隠れて調べるを同時には無理だ」
「我々を存分に使ういい機会かと思いますよ?」
誇白がそう言うと黒音と黒華が大きく頷いた。
「そうだぞアーサー。折角従者になったんだ。手伝わせてやらないとかわいそうだろ」
「すまんが俺は実際に3人がどこまでできるのか知らないんだが、、、、」
3人を従者にしてから実力を知る機会がなかった。
お披露目の為にひたすら人としての生活や戦闘のやり方を学んでいたんだから。
「安心しろ。私が見ていた分の感想だけでいえば、誇白は王国騎士団長以上の強さで黒音と黒華は同じくらいだったぞ。因みに気配を消すのもうまかった」
「ほう。思ってた以上だな」
「今回の作戦で必要な事がある。アーサーの使った指定した相手にだけ聞こえる魔法をここにいる者が使えるようになることだ」
「それなら問題ない。教えれば全員問題なく使えるはずだ」
「それは良かった」
「良し、それなら話を進めよう。今回は私と誇白がリサと一緒に行動して契約魔法について教える。まぁ教えるのは誇白に任せて私は一緒にいるだけになるがな」
「かしこまりました」
「アーサーと黒音と黒華はその間に情報収集だ。リサの研究所があるらしいから隠密行動で今の研究内容を調べてくれ」
「「はい」」
「問題は俺がどうやってサーチに入るかだな今回は兄上のかわりではなく、一緒に行くのだろ?」
普段別の都市に行く時は、俺の力が必要な場合にかぎり始めから俺がランスロット・ブラントとして出向く。戦争の時は俺が遥か上空で待機することもあるが、サーチは上空からの魔物や魔獣の襲撃に備えて感知結界を展開している。
俺が上空からこっそりと侵入するのは不可能だ。
「そのことなんだが、サーチには結界があるだろ?だから今回は従者として正体を隠して一緒に行くのはどうかと考えている。今までは従者がいなかったから傍にいると目立つ可能性を考えてこの案は使わなかったが今は違う」
「確かに。誇白の凄さが伝わり、それに加えて3人は人の目を引く容姿をしているからな。正体を隠している従者がいてもあまり目立たないか」
3人を従者にするメリットがこんなにもあったとは、俺では予想できなかった。
兄はどこまでも先を読むことができる切れ者だ。
俺の選択は間違っていなかったとつくづく思わしてくれる最高の兄だ。
「それだけじゃないぞ。今回をきっかけにアーサーは今後も正体を隠した状態ではあるが一緒に行動することができるんだ。状況に応じて私とすぐに入れ替わることもできていい」
「声をだすとボロがでる可能性があるから口がきけないってことにしておこう」
「いいなそれ。顔はフードと仮面で完全に隠すことにするか?」
「フードはやめておこう。流石に怪しい」
「それもそうだな」
「それでいつサーチに向かうんだ?」
「明日出発だ」
「はぁ?ずいぶん急だな」
「今日は招待した来賓が城に泊まっていてな。明日出発するんだがどうせなら一緒に行こうってことになった」
「ではサーチの学長とリサも一緒か」
「私達は私とアーサー、誇白達とアイリスの6人で行く」
メンバーを確認した後、兄達は部屋を出ていった。
「兄はもしリサが死者を生き返らす魔法の研究を本気で進めていたらどうするつもりなんだ、、、」
1人残った自室でアーサーはつぶやいた。




