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暦神達の日録  作者: アレン
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禍神の気配_1

弥生『私ね〜、タピオカミルクティーが飲みたーい!』


月読『うんうん、好きな物を選んで良いんだからね』


弥生『えへへっ、パパ大好き!』




陽春の中心部にある市街地へと来た月読一行、弥生は己が食べたい物を既に強請っており月読はデレデレとしながら愛娘のお願いを承諾している



月読『卯月、皐月。お前達も欲しいものがあるなら言いなさい、お父様が買ってあげるからね』


卯月『は、はい…』



弥生の頭を撫で回しながら月読は我が子に向かってそう言うが、卯月と皐月は若干苦笑いになっておりその理由としてはもう既に欲しいと思える物は手にしているからだ


ご覧の通り我が子には激甘の月読、この言葉だけで直ぐにこれから何を言うかが想像つくのではないかと思う


そう、なんでもかんでも直ぐに与えてしまうのだ


もちろん神にとって人間の物を作るなど造作もないのだが、我慢を覚えさせるということをさせた事がないのが月読であり、それは育児としていかがなものかと天照からは苦言を呈しされている


おかげで若干我慢知らずの何でも己の願いは叶えてもらえるという弥生が誕生してしまっているが、まぁその傲慢さも神の特権かと言われればそうであるとも言える



それだけの豪遊も神と三貴子という立場故ではある




月読『それで、卯月はあの引きこもりに何をあげたいんだい?』



天照、とは絶対口にはせず過去の歴史を掘り返しその名で呼ぶ事からやはり姉弟仲が良くないのは明白だが、それでも愛息子が悩んでいるから解決してあげたいと思うのが親心というものだ



卯月『その、いつもはお菓子とかだから今回は物とかはどうかなと思っていて…』


月読『ふーむ……』



普通に姉としても一柱の神としても天照の事は嫌いな月読だが、息子の為だと月読は切り替え真剣に考えはする


姉の性格上特に仲が良い卯月からの贈り物なら、心を込めているなら、一生懸命考え抜いた結果の贈り物なら何でも喜びはするだろう


そこまで無下にする性格の持ち主ではないと月読も分かっている、それに今回は沢山の着物が届いたやら供えられた神饌のお裾分けやら豪華なものではなくちょっとしたお菓子だ


己なら何も返さないかよくて下界のスーパーで安売りされてたお菓子でも買い放り投げて帰るくらい適当にしてしまうと、想像しただけでシラーッとした表情になるがソレはソレ、コレはコレだ



月読『ねぇ卯月、あの引きこもり姉様から貰ったものはお菓子だったんだよね?』


卯月『はい、抹茶のロールケーキを貰いました』


皐月『僕も卯月に分けてもらって、凄く美味しかったです』



ねぇ〜っ、とお互い笑い合う息子達に月読は可愛いと親バカを発揮しそうになるが一旦その感情を押さえ込み月読はある提案をした



月読『物が良いんだよね、それなら四季折々の花を使った生け花をしてみてはどうかな』



四季折々の花を生け花器で“四季”を表現するんだ、とこれなら物にもなるし目でも楽しめるしとまぁあの引きこもりに対しては無難な選択だろうと月読は思った



卯月『四季を表すって事かぁ……、うんやった事ないし綺麗だし天照様も喜んでくれそう』


皐月『僕も手伝うよ卯月、一緒に生けたいな』


卯月『うん、そうしよう皐月。えへへ、ありがとうございますお父様!』



おかげで良い贈り物が出来そうです、と嬉しそうにする卯月を見て月読は我慢できすその場で抱き締めたそうだ






__一方その頃、統括の国


中央に位置する統括の国の、高天原の心臓部とも言える星霜殿(せいそうでん)には天照を指揮とした形で数多くの神々が働いている


高天原の事も、人間の世界のことも、全て最終的にはこの星霜殿に集められ天照が目を通すのだ



手力『おい天照様、急ぎの報告があるんだ!!』



書斎にて山積みの書類に目を通していた所に飛び込んで来たのは天之手力男神(あめのたぢからおのかみ)という男神だ


手力は天照が引きこもった岩戸隠れ事件にての活躍者の一柱であり岩戸を投げ飛ばしたという腕力の持ち主だ



天照『ちょっと手力、急いでてもノックはしてちょうだい。マナーというかモラルってものがあるでしょ』



ドタバタと慌ただしく入って来ては己の机の前に息を荒らげている手力に天照はため息をこぼしながら側に控えていた神使に「水をお願い」と頼みながら手力に椅子に座るように促した



天照『それで、何なのよ急ぎの用って』


手力『ああ、それが禍神(まがかみ)が季節の国に現れたんだ。今急いで八十禍津達が向かっているが、暴走しそうという報告も入っている。』



グイッと一気に持ってきてもらった水を飲み干しながら手力は深刻そうな面持ちをして話し出した



禍神とはまず、簡単に言えば邪神である。


人間の悪しき感情もまた一興、神頼みで誰かの不幸を願うのもまた一興とそういう悪とされるものもこの高天原で管理しているものもある


そんな想いや呪物や古きものに宿った付喪神が堕ち神格化してしまったものを禍神と言う


そしてその禍神が出てこない様に、また出てきてもすぐに始末出来るようにと八十禍津日神(やそまがつひのかみ)大禍津日神(おほまがつひのかみ)という天照達同様、伊邪那岐の禊によって生まれた神が禍神の気配を探知し、また同様に禊から生まれた神直日神(かむなおひのかみ)大直毘神(おほなおひのかみ)伊豆能売(いずのめ)が禍神を清めるという作業を行っている



天照『なっ、……経津主(ふつぬし)達はどうしたの!!いつも誰かしら戦える神はいるでしょう!』


手力『いやそれが、経津主は今日は非番だし…日本武(やまとたける)はほら、星霜殿の警護だし』


天照『じゃあ今すぐ建御雷(たけみかづち)を呼んできなさい!てか誰でも良いから戦える者を呼びなさい!なにのんびり水飲んでるのよ!ほら早く!!』


手力『わ、ちょっ!天照様押すなって!!』



若干キレながら天照は強引に手力を立たせると部屋から追い出しバタン!と乱暴に扉を閉めた



禍神はその場にいるだけだ厄介だ、まさにその名の通り災いを巻き起こす邪神


そんなものが今度は下界へと、人間界へと行ったら更に大混乱となりかねない



天照の仕事は高天原の管理、そしてこの人間の世界を、日本を神々が定めたレールの上を順調に歩んでもらうこと


それを壊されない為にも、禍神には早々に退場してもらう必要がある



天照『……まったく、最近は多いわね……禍神』



自分のデスクの上に広げられた禍神による被害などの数多くの報告書を見てはしかめっ面をした。

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