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暦神達の日録  作者: アレン
4/7

月読命のお茶会_3

あぁ、またこの季節がやってくる


雨ばかりで、ジトジトとしてて、ため息しかつかれない季節



夏神邸の一角に部屋を持つ水無月は、自室だと言うのに他人の部屋の様に隅に膝を抱え込んで俯いている


暦神達はそれぞれ四季神達の邸にそれぞれの部屋をもらっているのだ、本拠地としては月読邸ではあるのだが、そうなると仕事に支障が出たりするので一応四季神邸にも部屋をもらっている、どこにいるかは暦神達の自由だ




水無月『……僕には、荷が重いよ………』



また6月という暦を回さなければいけないのかと思うとより一層気分は沈み、人間達に蔑まれるのかと思うと涙がじわっと溢れてくる


一度涙が出てしまえばそのままポタポタと雨のように流れ出し、泣いてる事が情けなくなり更に涙は溢れてくる


水無月『…うぅぅ……お父様ぁ…っ…』



人間の子供のように泣いて親を呼ぶ事に、たまに自分は人間なのではないかとさえ思ってしまう


こんな時の泣き止む為のアイテムのひとつとして、過去の6月のカレンダーをしまいこんだファイルを机から引っ張り出しグスグス泣きながらペラっとページをめくる


己の担当の暦を管理する為に月読命から毎年その月のカレンダーを配られる


水無月にはこっそりと、月読がカレンダーの裏側に己の自作の似顔絵と一言応援のメッセージが書かれているのだ


それを水無月は大切に保管しており、悲しくなった時はこうして過去のカレンダーの裏に書かれたメッセージを見て少しでもと元気をもらっている


わざわざ自分の為に書いてくれた事が嬉しくなり、そうやって眺めていると涙も引っ込んでくる


多分そろそろお茶会の御誘いが来る時期だ、それまでには去年より少しでも自信を持って暦を回す己でありたいと思い、涙をぐしっと拭いてペラペラとページをめくり続けた


少しでも、月読を喜ばせてあげたいから


それが大好きなお父様への、何よりの贈り物だろうから






月読『天照姉様への…贈り物………?ふ〜〜ん、へぇ〜〜……』



一方で春のお茶会も和やかに進み、餡蜜を食べ終えたところでと卯月の悩みを解決したいと弥生が話題を作ってくれ、そこで天照にお返しの贈り物をしたいと話せば予想通り月読はブスーっと不貞腐れたような表情をした


まぁ予想通りかと言えば予想通りなのではあるが



月読と天照の不仲は何も我が子への仲良し度だけでは形成されてはいない、暦神が生まれるそれより昔に葦原中国(あしはらのなかつくに)、俗に言う人間らが暮らす地上世界に保食神(うけもちのかみ)という食の神がおり、その神を見てこいと天照が月読にお遣いを頼んだのだ


そして保食神と会いもてなしを受ける月読ではあったが、もてなしとして用意された料理は全て口から吐き出されたものであったのだ


山を見れば山の幸、海を見れば海の幸などと言った具合であり、それに月読は「吐瀉物を食わせるな!!」と大激怒し保食神を斬り殺してしまったのだ



保食神の遺体からは牛馬や蚕、稲や豆などが生まれたのだがその前にその事を知った天照は大激怒をし姉弟で大喧嘩、そこから不仲に至るのだ


人間の間では「昼と夜が分かれた原因」とされているが、元より生みの親である伊邪那岐命(いざなぎのみこと)より天照は昼を、月読は夜を管理せよと言われていたので特にこれが原因ではない


因みにその後、同じ食の神である大宜都比売(おおげつひめ)が降り立ったのだが天照と月読の弟であり悪事を働き過ぎて高天原を追放された建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)…通称、須佐之男(すさのお)は腹を空かせ大宜都比売に食べ物を恵んで貰うのだが、いざ台所を見たら鼻や口、尻からと食材を取り出しておりその様子を見た須佐之男は月読同様斬り殺してしまった


この二人の食の神のおかげで人間達は食べ物が潤ったとされているが、天照としては弟が二人ともそんな事をやらかすとは…と頭を抱える事となってしまった


須佐之男の悪事は話せば長くなるので置いとくが、追放される程の事をした須佐之男は天照とは…というか、天照自身が会うこと自体を嫌悪しており月読とは冷静になった今でこそ「言い分は分からなくもないが…」とはなるがやはり気まずいまま時間が現在進行形で流れている


月読と須佐之男に関しては月読は須佐之男に呆れて『子供に悪影響だから近寄るな』と威嚇し、須佐之男にとっては兄である月読の言ったことは守った方が良いと天照の件で学んだのとあの大人しそう且つ人畜無害そうな顔をして普通に斬り殺してる月読に若干の恐怖を覚えあまり会っていない


しかも親バカで有名な月読命、そしてさらっと斬り殺している事を聞いて己のせいで暦神達に何かがあったら本気で殺されるかもしれないと須佐之男は密かに思っているし何より宣言をされている


須佐之男が高天原から追放されたあの日、月読が開口一番に言った言葉は『お前のような愚弟のせいで子供達に何かあったら、私は迷わずお前を斬り殺す。天照姉様より酷い目に合わせてやる』と真顔のガチトーンで言われている、心配でも何でもない我が子への心配だけかと須佐之男は思っている





卯月『その、本当は自分で考えて渡すべきなのですが…そろそろ、本当に何を贈って良いのか分からなくなって…それでお父様に頼らせていただきたいなーと思い……』



話を戻すが、月読があまり機嫌を損ねないようにと慎重に言葉を選びながら発していけば「己が頼られている」という言葉に少し機嫌を良くした



弥生『せっかくだから皆で買い物に行こうよパパ!私パパとお出かけしたい!!』



ね、いいでしょ!と弥生は月読の腕にギューッと抱きつきながら強請れば途端に月読はデレーっとなり「いいよ」と上機嫌で承諾した


可愛い愛娘のお願いと愛しい子供達とお出かけが出来るということで、月読が断るはずがなかった



月読『せっかく家族でのお出かけだからね、皆のやりたい事をしようね』



ふんふんと鼻歌を歌いながら一瞬にしてティーセットのものは片付きいつでも出かけられる準備万端の状態となった月読はキラキラと目を輝かせながら暦神達の方を向いてこう言った



月読『さぁ、行こうか我が子達よ!』


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