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3 後輩と帰り道

久々に書きました。

気分が乗ったらまた続きます。



 日が傾いていくのをぼーっと眺めながら、鞄を背負い直す。暫くして、いつも利用しているコンビニが視界に映り、財布を取り出しかけて、やめる。後ろからたったったっという小気味のいい足音を聞いて、足を止めた。

 やがてぽんと肩を叩かれ、聞き慣れた軽薄な声が耳に入った。


「せーんぱい!今帰りですか?」

「……なんだ、君か」

「ちょっとくらいびっくりしてくださいよ~!」

「驚かされ過ぎて慣れたよ、そんなの」


 いたずら好きな上に人懐っこいこの後輩は、やたらと人を驚かせようとしてくる。食事中に後ろから目隠しをされた時には、本当に心臓が止まるかと思ったほどだ。そんなことが何度も起これば、流石に慣れるというものだろう。


「最初の頃は先輩も面白い反応してたんだけどなぁ」

「……前々から思ってたんだけど、君には先輩に対する敬意が足りないんじゃないのかい?」

「えーそんなことないですよー。せんぱいのことはものすっごくそんけいしてますよー」

「わざとらしく棒読みになるな」

「けらけら」

「その擬音を口で言うやつは初めて見たよ」


 呆れたように私が視線を向ければ、こちらを覗き込むように少し前に出ながらにこりと笑う。その笑みを見て思わずため息を漏らす。


「そんなに私をからかって、楽しいかい?」

「はい。とても」

「ふざけんなよ君」

「やですよもっとふざけます。だって先輩の反応すごく面白いんですもん」

「ふざけんなよ君!?」


 にこりとした笑みを通り越して、にやにやとした笑いを浮かべた後輩はやたらと楽しそうにくるくる回っている。「そんなに回ってると危ないよ」と注意してやるが、「大丈夫ですよ~」と聞くつもりがない。そんな様子だから、迫ってくる街灯に気づかずにごちんと激突した。


「あいた!?」

「ほら言わんこっちゃない」

「痛い。痛いですよ先輩!せめて注意してくださいよ!」

「危ないって言ったよね?」

「うぅ……」


 頭を抑えて若干涙目になりながらこちらに抗議をしてくる後輩をいなし、ぶつけた部分をぺちりと叩く。「あいて!?」ともう一度声を上げた後輩に少しだけ笑みをこぼしつつ、「しょうがないな」と言いながら頭を軽く撫でる。


「これに懲りたらあんまりはしゃがないようにするんだよ」

「それは無理です」


 ぺちり。


「痛いですよー!」

「返事が悪い後輩にはコンビニで何も奢って上げないよ」

「え」


 そう言うと、後輩は目を見開き、さも驚いたようにこちらに指を向けた。


「せ、先輩。今なんと……?」

「奢って上げないよと言ったんだ。後、人に指を向けない」

「先輩が、デレた……!?」

「あーもう何も奢って上げない」

「そんなー!?」


 後輩の悲鳴を背にして一人でコンビニに入る。急いで追い掛けてくる姿を横目で見ながら、缶コーヒーとフルーツオレの紙パックを取って、会計に進んだ。

 

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