表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/36

24.罠(1)

 暗い廊下に古びた扉が並んでいる。

 力をこめてそのうちのひとつを押し開けると、そこには部屋ではなく地下室へと向かう階段が現れた。薄暗く霞んだそれは十段ほど続くと右に折れ、そのあとは暗くて見えなかった。

 凪流(ナギル)があたしの後ろから覗き込む。

「ここを降りると地下研究室が……?」

 振り返り、夕露に尋ねた。

「きっとそーだよ! 降りてみよ、降りてみよ~」

夕露が小躍りしている。

 樹葵(ジュキ)の部屋に凪流を迎えに行ったとき、そこには紫蘭との戦いごっこに疲れた彼だけが寝そべっていた。樹葵はおはぎを乗せた盆を洗いに行ったらしい。結局地下研究室への行き方は、三人で闇雲に歩いて探すこととなった。やたら勘のいい夕露を頼りに、やっと見つけた階段がこれだった。

「それじゃあいざ、龍の剣を取りに向かいましょーか!」

 あたしは二人を振り返る。

 階段の下からあがってくる空気が、把手(とって)を握る右手にひんやりと冷たい。

「おおっ!」

 景気良く拳を突き上げたのは夕露だけだった。

「この扉自然に閉まって、僕たちを閉じこめたりしないでしょうねぇ?」

凪流(ナギル)せんぱいの恐がり」

 夕露(ユーロ)が先についてくる。

「開けときますよ」

「あたしたち盗みに行くんだよ? 扉開けっ放しじゃバレちゃうよぉ?」

「ほっといて下さい! 僕は暗いのニガテなんですから!」

 情けない声を出して扉を大きく開け放つ。それでやっと安心したのか、夕露に続いて、思い切って階段に足を掛けた。

 階段を一番下まで降りきると、視界いっぱいに鉄の扉がふさがっていた。

 闇に浮かぶ「立入禁止」の赤い文字。

「またでたよ」

 夕露(ユーロ)がぼそっと呟く。

「ったくこのお屋敷、立入禁止区域だらけじゃない?」

 あたしも小声で応じる。

「鍵がかかってるんじゃないんですか?」

 凪流(ナギル)に言われて、あたしは把手(とって)をそっと押し下げる。

「鍵は――」

 ぐっと向こうに押すと――

「かかってないみたいね……」

 「立入禁止」のくせに鍵がかかってない――そんな不自然な事実にあたしたちは、慣れきってしまっていた。だが今回に限って危険な罠だったのだ。

 地下室に足を踏み入れると、薄紫色の光がぼんやりと広い室内を照らしていた。低い天井と埃っぽい空気がいかにも物置だ。

「僕は…… ここで待ってますね…… ほら、扉が勝手に閉まったりしても嫌だし」

「閉まんない閉まんない」

「いや、でもとにかく、ここで待ってますよ。万が一誰か来たら伝えますから」

 あたしと夕露(ユーロ)凪流(ナギル)を扉の脇に残して、静かな地下室に足を踏み入れた。

 既に使わなくなった実験器具か、未完成のまま忘れ去られた発明品か、はたまた医療廃棄物か―― 濃い紫の影は様々なものを形取っている。それらは一様に、時に忘れ去られた冷たい悲しさを放っていた。

夕露(ユーロ)はあっちを探して。あたしはこっちを探す」

 夕露(ユーロ)が頷いたのを確かめ、あたしは右に並ぶがらくたの山へと近付いてゆく。淡い紫の照明を浴びたまま無言でたたずむ無機物たちを、ひとつひとつ確かめるように目で追う。奥に何か細長いものが見えて、上に乗った容器を持ち上げると、積もったほこりがふわっと舞った。剣に見えたそれは無駄に長い物差しで、あたしは落胆の溜め息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ