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第四十二話

 


 あの後、思いのほかあっさりと転移ポータルを見つけた俺たちは直ぐにダンジョンの外へと戻り、探索者協会へと向かっていた。


 何故探索者協会に向かっているのかというと、買取所に今回の探索で得た素材を買い取ってもらうためである。


 俺は買取を行っている地下一階へと行くと、素材買取を行っている受付に向かった。


「すみません、買取をお願いします」


 俺はリュックをカウンターに置くと、受付にいた職員に渡す。


「はい、承りました」


 そこにいた職員はおっとりとした顔立ちの美人職員であった。


 歳は二十代半ばから三十代前半あたりだろうか、豊かな胸のふくらみが職員専用の制服を押し上げている。


 確か、前に雀の涙ほどの素材を売った時も、担当してもらった気がする。


(彼女、モテそうだな)


 探索者の男女比は圧倒的に男性が多いので、この買取所に来るのも男が多いため、こんな美人の受付嬢がいれば、普段から探索者の男たちに言い寄られていてもおかしくはない。


 受付の職員がリュックを持って奥へと消えると、俺は辺りを見回しながらボーっとしていた。


 弓使いのミノタウロスとの戦闘もあって、疲労感もそれなりに残っている。


 正直身体がだるくて仕方がなかった。


(ヴァルは大丈夫だろうか)


 ヴァルにはかなり働いてもらった。


 ミノタウロスとの戦闘ではヴァルがいなければ危なかったし、他の戦闘でも獅子奮迅の活躍をしていた。


 モンスターといえども、心配にはなる。


 ちらりと横にいるヴァルを見てみたが、彼女は無表情で正面を見ているだけで、疲労感といったものは感じられなかった。


(感情はしっかりあるんだろうが)


 表情からは大分わかりづらいな。


 顔立ちは美しいが人間のそれとは若干違う。


 マネキンに近いだろうか?


 だが、マネキンという言葉ではしっくりこないんだよな。


(そうか、目のせいか)


 ヴァルの瞳は美しい。


 そこには無機物では決して出せない生気が満ちており、吸い込まれそうなほどに澄んだ瞳が、人間によって作られたモノ(ヴァルの場合はダンジョンだが)という考えを吹き飛ばしてくる。


「査定の結果ですが、合計で三十一万円になりましたよ」


 俺がそんなことを考えていると、受付の職員が奥から出てきた。


 素材のなくなったリュックを渡してきたので、俺はそれを受け取り、ちょっとした疑問を投げかける。


「思っていたよりも買取価格が高かったのですが、どうしてここまで高額になったんですか」


 今回は割と張り切って素材集めをしたが、三十万円を超えるほどの素材を集めた記憶はない。


 ミノタウロスの角はリュックに入りきらなそうだったので、置いてきているし、理由が分からない。


 もしかして、大量にとったゴーレムの魔核が高値で売れたのか?


「今回はゴーレムの魔核が大量だったのと、ミノタウロスの魔核、それも弓持ちですよね」


 どうやら俺の予想は外れたようだ。


 それにしても。


(やっぱりわかるのか)


 流石探索者協会の職員、その辺りもしっかり分かっているようだ。


「本来は三万程度なのですが・・・・ここだけの話、実はこのサイズの魔核を使った魔導具の作成を行っている企業がありまして、その影響で十万円での買取となっております」


 はあ、凄いな。


 魔核のサイズは魔導具のレベルに直結するのだが、長らく魔核のサイズの最低基準が下がることはなく、安価な魔導具が売られることはなかった。


 それが更新され、より低級の魔核で魔導具を作れるようになるなら、魔導具という高級品がそれなりの額で庶民にも買えるようになるのかもしれないな。


「そんなことが起きてたんですね。分かりました。ありがとうございます」


「いえ、私どもといたしましても弓持ちのミノタウロスを狩れる伊藤さんとヴァルさんには期待していますよ」


 そう言ってお辞儀をする職員さん、ヴァルのことも把握済みか。


(そういえば・・・)


 彼女の名前は何だっただろうか?


 前に買取をしてもらった時も、彼女にしてもらった記憶があるような。


(ああ、そうそう名前は)


 淵田(ふちだ)(こずえ)、そんな名前だったな。


 職員の名前くらい覚えておかないとな。


 俺はそんなことを考えながら、買取所を後にするのであった。




読んでいただき、ありがとうございます。

これからも投稿を続けていきますので、この作品をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あれ?ランカーだった様な…?
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