第百五十五話
俺は【アイス・カタパルト】を要所要所で連発する。
ヴァルが一呼吸置きたいタイミングを感じ取り、花眼人形が猛攻に移らないよう、邪魔をしていた。
(当たりはするが、やっぱり硬いな)
【アイス・カタパルト】であっても、花眼人形相手には、邪魔にしかならない。
ハイ・ライカン・スケルトンという強敵相手に通じていた上位の魔術は、今、俺たちが対峙するモンスター相手には通じていなかった。
斬った感触では、プラスチックのような軽い感じであるが、その強度はかなりのものであり、直径1メートルほどの氷塊がぶつかっても大した傷がつかないぐらいには頑丈である。
(仕方ないか…)
俺は現状を変えるため、新しい戦い方を選択することにした。
多少リスクはあるが、このままでは最悪、花粉によって二人共命を落とす羽目になる。
(それは何としても避けなければならない)
「【アイス・ランス】【アイス・カタパルト】……【バインド】」
既にヴァルは離脱しており、俺は好きなだけ魔術を撃てる状況にあった。
俺の魔術が、再び嵐のように降り注ぐ。
ざっと五十発ほどの魔術が同時に発射されており、流石の花眼人形も全くダメージを負わないわけではないため、距離を詰めてこれない。
一見すると、魔術の弾幕によって、足止めをしているように見えるが、俺の狙いは違っていた。
(今だ)
俺は魔術の発動と同時に、既に踏み出していた。
本命の魔術は【バインド】であり、他の魔術は戦局を傾けようとしていると演出するためのブラフである。
花粉を周囲にまき散らしているが、大量に放たれた魔術があれば、数秒は花粉も吹き飛ぶと予想でき、そうなれば、完璧な状態で攻撃を仕掛けることができると読んでいた。
無数の魔術による攻撃を隠れ蓑にしつつ、その隙に花眼人形を拘束し、一気に畳みかける。
既に花眼人形の回避術がどの程度のものかは把握しているからこそ、できる戦法であった。
(本当はやりたくないが……)
四の五の言ってはいられない状況にある、戦えるレベル帯にはいるが、現状のヴァルでは致命傷を与えるには少々リスクがある。
(よし)
無数に放った魔術は花眼人形に大きなダメージを与えることは叶わなかったが、【バインド】は綺麗に決まった。
花眼人形が拘束されたことで一瞬の間が生まれる。
俺は好機を逃さないよう、魔術によって強化された身体能力を十全に発揮させ、強烈な一太刀をお見舞いし、花眼人形の硬い胴を両断した。
(嘘だろ)
俺は心の中で思わず呟く。
花形人形は胴を両断されたにもかかわらず、機能を停止しておらず、自身の下半身を突き飛ばし、その力を使って、上半身を俺に向かって投擲していた。
(ヤバい)
致命的な誤算だったのは、佐々木ダンジョン第三十階層のモンスターの生命力がたかだか、両断した程度では尽きないということである。
俺は両断してしまえば、勝利だと思い込んでいたが、相手はモンスターであり、人間にとっては即死級のダメージであっても、生存できる可能性があることは不思議ではない。
完全に想定外の状況、攻撃であり、いくら強化されているとはいえ、避けきれないタイミングである。
絶体絶命の状況であった。
(【英雄剣術】)
俺が魔術を発動すると、あり得ないぐらいの速さで腕が跳ね上がり、繰り出されたカウンターの剣が、気づけば、花眼人形の上半身を上から下までを真っ二つにしていた。
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