第百五十三話
両者の距離が縮まり、白兵戦が再び開始される。
俺は白兵戦が得意というわけではないが、距離を詰められてしまえば、戦わざるを得ない。
鉄すら切断できると思われる魔刀を使って、俺は花眼人形に距離を詰め切らせないようにしつつ、間合い、戦いの距離感を認識しようとしている最中であった。
先程はカウンターを完全に決めたと思っていたが、それが通用しなかったわけであり、距離感を明確にすることは生き残る上で重要である。
より完璧なカウンターを放つことができれば、理想ではあるが、生存するためにも距離の見極めは重要だ。
俺は内心冷や汗をかきながら、神経を集中させ、白兵戦に臨んでいるのだが、どうにも透かされている感じがしてならない。
刀と素手であれば、刀の方が圧倒的に有利であるが、花眼人形相手に今一つ踏み込み切れていなかった。
(さっきのことがあるからか)
花眼人形を斬ることをしっかりと意識し、強く鋭く踏み込む。
驚くほどに軽い魔刀は、俺の想定した通の軌道を描くが、僅かに届かず、回避されてしまった。
当たれば、確実にダメージを与えられるが、当たらない。
先程のカウンター、かなり上手く決まったと思っていたが、そこそこの有効打で終わってしまったのが痛かった。
“上手くいかなかったら、どうしよう”
自信があった技が、あのような結果に終わってしまうっては、俺も人である以上、戦いに綻びを生んでしまう。
これは命の取り合いであり、常に冷静さを持ちつつ戦うことは容易ではない。
自身の判断力に説得性が無くなり、経験から有効な戦法が浮かび上がってくるものの、感情の面が邪魔をして、躊躇なく次の動きを選択することが難しくなっていた。
そして、迷いによって生まれる、若干のラグが、この戦いをより逼迫したものとさせてしまい、決めきれていない状況を生んでいる。
(それだけじゃないか)
花眼人形の攻撃を回避しながら、そう思案する。
実際に対面して厳しさを感じている面もあった。
動きが途轍もなく速い上、人型でありながら、戦いのリズムも人のモノではない。
武術や武道、格闘技とは全く異なる体系の戦法なので、そのリズムを戦いの中で学習する羽目になる。
傾向としては、東京第二ダンジョンの自動人形と同じようなものであるが、それの数段上のスピードであるため、動きの自由度は高く、それは対処をより困難にしていた。
(身体能力を強化して、これか)
本来、探索者がモンスターを相手にする時には、自身の強みを押し付けることで敵を仕留めるのが理想ではあるが、それも難しい相手だ。
俺の強みは、遠距離からの高出力の攻撃を何度も撃てることである。
ハイ・ライカン・スケルトンのような巨大なモンスターであれば、当てるのはそこまで難しくはないのだが、花眼人形は人間大のサイズだ。
先のカウンターの結果から、【極光】や【神ノ雷杭】のような大技はそう簡単には当てさせてくれないだろう。
花眼人形は、学習しなければ、確実な対応は難しいが、学習するほどの余裕もない相手であった。
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