第百五十二話
引き続き、花眼人形との戦いは続いている。
ヴァルの大盾と細剣を使った、攻防一体の攻撃に対し、花眼人形は常に攻撃を合わせることで対応していた。
花眼人形の特筆すべき点は、そのスピードである。この階層を徘徊するモンスターとしては、かなり小柄であるものの、その動きの俊敏さは圧倒的だ。
ヴァルの攻撃についていけている時点でかなりヤバいのだが、その上、こちらの動きを妨害してくる花粉まで飛ばしているのだから、途轍もない。
(強みが渋滞しているな)
圧倒的な破壊力はないものの、強さという面ではこれほどまでに完成されているモンスターには逢ったことがない。
強いて言えば、ハイ・ライカン・スケルトンはその類として挙げられるが、Bランク探索者が相手にするモンスターの中でも中位に位置付けられている。
(つまり、そういうことなんだろうな)
花眼人形は、Bランク中位相当のモンスター、Bランク探索者になりたての新米が相手にするような存在ではない。
見かけただけで逃亡必至、戦えば、敗戦が濃厚なモンスターである。
(ま、それは並みのBランク探索者の場合だけどな)
「【アイス・カタパルト】」
俺は巨大な氷塊をいくつも生成し、ヴァルを援護することを選択した。
攻撃のリズムをよく理解しているヴァルは、直ぐに避けることができるが、花眼人形はどうだろうか?
[・・・・・・]
当然、避けることなど、できはしない。
これが単発であれば、俊敏な動きが可能な花眼人形は、避けられただろう。
だが、雹が降り注ぐように、一メートル超の氷塊が降ってきた場合、話は別だ。
無数の氷塊は花眼人形に直撃し、確かなダメージを与えることに成功する。
固定砲台として、俺ほど優秀な人材はいない。強力な遠距離攻撃を、ほぼ無制限に撃つことができるのだから、敵からしたら厄介極まりないだろう。
花眼人形にとっても、それは同じことである。
(つまり、次の標的は……)
花眼人形の関節から、奇怪な音が一瞬響いたかと思うと、炸裂音がし、俺との距離が潰れた。
俺は瞬時に魔刀の柄を握り、一閃、横なぎの一撃を放つ。
花眼人形の攻撃は単調であり、特筆すべき技術はない。警戒対象を露骨に変更し、フェイントなどを混ぜることなく、最短で攻めてくるのだから、カウンターを当てることは容易だ。
(マジか)
しかし、完璧なカウンターは花眼人形に対して、致命傷とはならなかった。
カウンター自体に問題はなく、技として成立している。
だが、花眼人形の反応速度は想定を上回っており、両断をギリギリ回避し、無理やり、それなりのダメージに抑え込んだのだ。
(強いな)
人喰いペリカンであれば、今ので、しっかりと終わっていただろう。
横なぎの一撃が致命傷となり、戦いは終了し、俺とヴァルは勝利を飾っていた筈だ。
ヴァルが壁役に徹することで、俺が情報を取得し、条件を整えて、必殺の状況を作り出す。
この程度のことは、コストを無視すれば容易に可能なはずだった。
(相手も一段上をいっているということだな)
これまでの感覚は、やはり通用しなくなってくるのだろう。
俺自身もさらに感覚を磨く必要があるみたいである。そんなことを考えていたのだが、敵は待ってくれない。
花眼人形が再び、俺との間合いを詰めてきていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
今後とも、この作品をよろしくお願いいたします。




