第百四十四話
※同日に二話投稿しております。
(仕方ない。少し、上げるか)
思考を巡らした結果、俺は【神経強化】に使う魔力量を増やし、“ 速さ ”を向上させることを選んだ。
シンプルに力で相手を上回る。
自然の摂理に則った、非常に単純かつ、強力な手法だ。
(圧も弱まったな)
力を更に上げた影響か、オーガから感じられる圧も多少緩和している。
身体能力を引き上げ、感じられる圧が弱まった影響が相乗効果を生み、俺は先程よりも数段上の動きで、オーガとの間合いを詰める。
先程とは桁違いの速さに、オーガの反応は明らかに遅れていた。
「グガッ」
速度で大きく上回った俺はリーチ差をものともせず、強烈な一太刀を浴びせることに成功する。
そして、すぐさま距離を取り、相手に攻撃の隙を与えさせない。
(底は見えたな)
先程一太刀浴びせたことで、俺には概ねではあるものの、オーガの実力というものが見えていた。
ヴァルのような圧倒的な身体能力と操作を持っていない以上、多少は手間をかける必要があるが、普通に勝つことができる。
それが強者を知る、俺の結論であり、オーガとの戦闘は、既に意味を成さないだろう。
俺はヴァルにアイコンタクトを送りながら、剣先をズラし急所を空け、やや大げさな隙を作った。
「グガァ!」
隙を見せたと思ったオーガから、大剣の振り下ろしという、シンプルな攻撃が放たれる。
その瞬間、ヴァルが一瞬で間合いを詰め、大盾でオーガの大剣を弾いた。
膂力は強く、人と戦える知識はあるものの、それは人が洗練させ続けた技術には大きく劣る。
(こんなものだよな)
結果、こんなに分かりやすい隙も有効な戦術となった。
昔、このダンジョンで戦った、リビングアーマーであれば、こんな簡単に攻撃はしてこなかっただろう。
勿論、オーガとリビングアーマーが戦えば、あっという間にオーガが勝ってしまうことは自明だ。
だが、身体能力の差が縮まれば、後は戦術などが結果に大きく影響する。
(よし)
あとは安全に狩るだけと、俺は【バインド】を発動する。
複数の蔦状の生成物がオーガの身体に絡みつき、動きを阻害し、一時的にだが身体を固定する。
オーガの膂力は脅威だが、速さもだいぶ足りていない。
様々なバフによって強化された俺にとって、技術も速さもそこまでなオーガは、敵とはなり得なかった。
(終わりだ)
俺は魔力によって強化され、切れ味が増した魔刀を大きく振り上げ、降ろす。
その一撃は、巨体であったオーガの肉体を容易く切り裂いた。
目を見開き、憎々し気にこちらを見るオーガを、俺は冷めた目で見ながら、間合いを取る。
(油断はしない)
どんなモンスターであれ、油断は禁物だ。
モンスターに人間の常識が通じない以上、確実性を損なうような行為は命を危険に晒す。
目の光が消え、息の根を止めたことをしっかりと確認してから、俺はオーガの亡骸へと近づいた。
(さて、素材を取りますか)
狩りを終え、慣れた手つきで素材を採取する。
手に入れた魔玉はずっしりと重く、俺の成長を物理的にも感じさせた。
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