暇つぶしランド
暇つぶしランド。
そんな名前のお店を見つけた。ちょっと怪しげな雰囲気もあったけど、暇だったので入ってみた。
「いらっしゃいませ。もしかして、お暇ですか?」
店に入るなりこんなことを言われたのは初めてだった。でも、こんなお店に入ったのはこっちだし。
「はい、ちょっと」
「では、遊んで行かれてはいかがでしょうか。1時間で1000円です」
「え、何して遊ぶんですか?」
「あなたの自由です。奥の部屋で、何でも準備できますので」
カウンターの脇には、ドアがある。
「うーん……特にやりたいことは無いんですけど」
「では、こちらでランダムに決定しますね」
「そうですか……じゃあ、やってみます」
暇だし、1000円だし。
「ありがとうございます。では、奥の部屋へ参りましょう」
会計を済ませて奥へ。しばらくは、暗い廊下が続いた。正面にだけ、出口の光が見えている。
やがて出口が近付き、ようやく視界が明るくなった。
「これは……ビリヤード……?」
真っ白な部屋に、ビリヤードだけが置かれていた。
「そのようですね。ご経験は?」
「あ、いや、ないです」
「では、やりながら説明しますね。勝負しましょう」
ルールはそんなに難しくなかった。真ん中に集まってる球に白い球をぶつけるのがスタートで、後は1番の球から順に落としていく。
「数字をそのまま点数にして、合計点で競いましょう。あなたからどうぞ」
先行を譲ってくれた。
「持ち方はこんな感じで、槍で突くようなイメージで押してください」
見よう見まねで棒を持って、やってみた。だけどガスッって感じになって、球は情けないぐらいに遅いスピードで横に逸れた。
「あはははは……初めのうちはそんなこともあります。次は、私の番ですね」
カン、カンカンカカカンカン。
店員が打った球は真ん中の集団にクリーンヒットし、番号の付いた球が散らばる。これ、できたら気持ちいいだろうなぁ。
「では交代です。1番の球を狙ってくださいね」
「よし」
今度は、球を前に飛ばすことができた。1番の球に当たるも、穴には落ちず。
「あ~惜しい。次は私ですね。負けませんよ~~」
そのまま、時間が来るまで同じルールで遊び続けた。ほとんど負けたけど。
「ありがとうございました。楽しかったです」
「いえ、こちらこそ、ご利用ありがとうございました」
店の出口で挨拶。最後に、店員は爽やかな笑顔を見せてこう言った。
「とてもよい暇つぶしになりました」
お読み頂いた皆さま、ありがとうございました。