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新たなる目標

「質問がある」俺はステッラへ向けて言った。「精霊を失った精霊使いには体に変化が現れるのか?」


「精霊と精霊使いにしか見えない刺青のような紋が体のどこかに刻まれる。ちなみにカムイの右手にあるのは常人にも見えるので違う」


俺は手早く裸になった。


「何をしている⁈」ステッラは叫んだ。


「すまない。その紋がどこかに無いか確認してくれないか?」俺は焦って言った。


「大丈夫です。何もありませんよ」とジジが言った。「ユユリ様はまだご健在です」


胸をなでおろすと同時に後頭部に痛みを感じた。俺の頭を引っ叩いたステッラが顔を真っ赤にして言った。


「妙なものを見せるな!」


服を着ている最中にリュウシュウハとジジがユークリウスに向けて尋問を行なっている。そう言えばかつて同じ部隊であるという話を聞いたことがある。


「あの、この度は誠にご迷惑を」とおずおずとした様子でアルエは言った。その背後で小槌も頭を下げている。


「いや、そもそもの原因、というか因縁か。それは俺たちにある。さっきも言ったがな。だから二人が謝る事じゃない」


その言葉に二人は少しだけ喜色を示した。だがーー。


「私達は互いの精霊を入れ替えたままです。それを元に戻す技術はアッタルにあるはずです。ですから一度二人で村に帰ろうと思うのですが」アルエはそこで言い淀んだ。


「私が全て破壊してしまったのでもう何も残されていないかもしれないの」小槌は言った。「でももしかしたら何かあるかもしれないの」


「ふむ」道理である。何も問題ない。


「でも私達はまだお互いを赦せていません」アルエは意を決したように言った。


「そうなのか」と言いつつも確かにそう簡単に切り替えられる問題でもないと思った。


「ですから、その出来れば皆さんとご同行させて頂けないかと」アルエは嘆願する。「二人きりではその‥‥、でも二人揃ってアッタルに行かないと意味がないし」


「小槌はそれでいいのか」俺としてはユユリの事以外に心の割く余裕は今の所ない。だが見ていられないのも事実であった。「まだアルエが憎いか」


小槌は何かを言おうとしてから不意に面を外した。「もうこれも要りません」


「またスカイウォークが巨大化したらどうするんだ」


「もうお話ししても問題ないの。スカイウォークはアルエの弟のナガなの。そしてジャックインザボックスは私の兄、真広。この秘密は未だ知らない人には話してはならないと村の掟で決められていた。けれどおそらく外の世界でも暗黙の了解としてその規律はあるの」


まあ、そうだろうなと思った。


「多分スカイウォークはーー、ナガは私を守りたかっただけだから」


唐変木の俺でも分かる。ナガは小槌に好意を寄せていた。そうでないと辻褄が合わない。


「私はヤキモチを焼いていただけ。そして自分の境遇を勝手に八つ当たりしていただけなの。それはだいぶ前から分かっていた」そこで小槌は少し言い淀んでから意を決したように口を開いた。「でもやっぱりまだ許せない。皆さんがアガルタへ行くというのならどうか途中まででも同行して、二人きりにさせないで欲しいの」


「身勝手な願いだな」俺は少しだけ冷淡に言い放った。俺も八つ当たりの対象が欲しかったのかもしれない。


「私が‥‥、私達がアッタルで知り得た知識なら全て話します。もしアッタルで何かを知った時にもそれを皆さんにお伝えします」


だからどうか、とアルエが頭を下げると小槌も続いて頭を下げた。


「ややこしい関係だな」ステッラは二人を見据えて言った。「だが精霊使いは往々にしてそれなりに事情を抱えている。いいんじゃないか、同行しても」


「反対はしていない」俺は戦闘の後の高揚感から隠し事が出来なくてなっていた。「ただ仲直りなら今すれば良いと思っただけさ」


「それがすぐには出来ない関係もあるだろう。例えばユユリがジャックインザボックスに囚われていた時、どう思った? 裏切りにあったような気分を感じなかったか?」ステッラは腰に手を当てお説教の構えである。


「それは」と続けて何かを言おうとしたが、今までの思い出が頭の中を巡り、気がつくと俺の頬に冷たい何かが流れていた。


「すまん、そんなつもりではなかった!」ステッラは慌てたように言い放つ。そして頭を下げ続けているアルエと小槌に言った。「二人ともアガルタまでよろしく。こいつは女の子の願いを無下にするような奴じゃないから安心してくれ」


「カムイさんはそれで良いんですか」アルエは顔を上げつつ言った。


「反対なんて最初からしていない。正直に言おう。俺は女の子の気持ちが分からないんだ。だから二人の関係について力になれそうもない」


「そもそもカムイさんに助言は期待していないの」小槌は事も無げに言い放つ。「多分、私達の関係はアッタルに着けば何かが変わると思うの」


内心傷つきつつ「そうか」とだけ言った。確かにな、そうかもしれん、と自分を慰めつつふと背中に重みを感じて振り向くとハイオルトがもたれ掛かっていた。


「ごめんなさい、そろそろ限界です」ハイオルトは眠たげに目をこすって言った。


すまん、ユユリと思いつつ俺は慌ててハイオルトの体を抱え上げた。


「お手数かけます」とハイオルトは言ってから瞼を下ろした。


「ハイオルトのお陰でユユリは一命を取り留めた。お手数をかけたのはこっちの方だ。ありがとうな」


微笑むと同時に寝息が聞こえた。


新たな目標が出来た。

一つはユユリとの再会。そして俺はどうやらその為に強くならねばならないらしい。そもそもユユリのいない俺は役立たず以外の何者でもない。願ったりである。


そしてリュウシュウハとジジーー、二人の仲間と落ち合う事。こちらは未だ俺にとって蚊帳の外に思えるが二人の仲間なのできっと心強い関係が築けると信じる。


最後に小槌とアルエをアガルタにあるというアッタルという二人の故郷へ送り届けねばならない。何とは無しにそれなりに期待出来る物が二人にはある。二人の精霊がそれぞれ強力なのもあるが、アッタルという村にはカダヴェルのような精霊に関する規格外の何かがまだ残っているような気がする。きっとそれは俺たちのパーティに何かしらの恩恵を与えてくれると信じたい。


朝日が瞳に差し込んでくる。


「ユユリ」俺は一言呟いた。


待っていてくれ。



第1部終了。

これで第一部終了となります。


第二部以降、結末までの構想も大体ありますが今のところはまだ手付かずのままです。


割と大掛かりな仕掛けを用意したのでいつか書けたらいいなと思っています。


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!


長沢月花





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